第5話 咲との放課後デート

「目が覚めたら元に戻って…はないか」

昨日は帰宅してからベッドに速攻ダイブして夢の世界へ旅立った。

実は全部夢オチでした!アッハッハッハ!みたいな事を期待したのだが…状況は全く変わっていない。

学校に行く準備をしているとリビングのテーブルの上にまたメモとお金が置かれていた。

…そういえば森本和樹の親に俺はまだ会っていない。今度ちゃんと話してみないとな。コミュニケーションとっておかないといざという時に困るし。


にしても学校行きたくないなぁ…。またあの視線の嵐に晒されないといけないと思うと、

テンションが全くあがらないぜ。

まぁ行くしかないんだけどね。


そんな事を思いながら学校に向かって歩いていた時だった。 

「あ!和樹~♪」

咲がこちらに向かって手を振りながらやってきた。

「おはよう、咲。誰かと待ち合わせでもしてるのか?」

「してないよ~!和樹が来るかな~と思ってここで待ってたんだ♪」

「マジか!悪い。もっと早く来れば良かったな」

「私が勝手に待ってただけなんだから気にしないでよ~!ほら、学校行こ!」


そう言うと、咲は俺の腕に自分の腕を絡めてきた。

「この状態で学校に行くのか?」

「うん♪出発進行ー♪」

…学校に到着するまでずっと腕を絡めた状態だったのでもう周りの視線がヤバかったね。

咲は全く気にしていない様子だったが。


「お昼一緒に食べようねー♪」

「おう」

咲は自分のクラスへと入っていった。


「朝から随分と楽しそうね」

俺が席に着くとピンク髪の委員長が話しかけてきた。

「は、はは…。お、おはよう委員長」

「おはよう。楽しそうなのは構わないのだけど課題はちゃんとやったかしら?」

「今日はバッチリだ。朝早く起きたからその時にやったんだ」

「へぇ~。ちゃんとやってるのね」


「おう。心配してくれてありがとうな」

「し、心配なんてしてないからっ!!」

委員長は突然顔を赤くしたかと思うと自分の席へ戻っていった。


それから特に誰とも会話する事がないまま、

昼休みを迎えた。


「和樹~♪」

咲が呼びに来てくれた。やはり周りの視線(主に男子)がすごい。


昨日もお昼を食べた中庭にやってきた。

「さ!食べよー♪和樹の分も作ってきたから!」

今日もパンを買ったのだが、また作ってきてくれたみたいだ。


「悪いな。また作ってきてもらって」

「全然だよー!一人分作るのも二人分作るのも変わらないし!っていうかパン持って来なくていいよ!これからは私がお弁当作ってあげる♪」

「い、いやそれは悪いって!」

「私がいいって言ってるんだからいいの!」


「う~ん…。じゃあせめて材料費ぐらいは俺に任せてくれ」

「私も食べるんだし材料費とかいらないけど…」

「いや!それは俺に任せてくれ。じゃないと咲の作ってくれた弁当を美味しく頂けないからな!」

「じゃあさ!材料費は折半って事にしよ♪」

「いや、それじゃあ咲の負担が…」

「だ、だから時々、デートに連れてって!!」

咲は顔を真っ赤にして俯きながらそう言った。


「デート?」

「そ、そう!放課後、和樹は用事とかある?

ないならさっそく今日行きたい!!」

「いや、ないけど…」

「じゃあ今日行こ!!」

「お、おう」


こうして今日の放課後、咲とデートする事になった。


そして、放課後。

「和樹~!行こー!」

咲が俺のクラスにやってきた。

「おう」

「むふふ~♪」

咲は当たり前のように俺の腕に自分の腕を絡めてきている。

…なんか朝より密着されてるような気がする。

「そういえばこれどこに向かってるんだ?」俺達は今電車に乗っている。

「次の駅で降りてすぐにある大きなショッピングモールだよ~!」

「へ~」

「その中に最近オープンしたクレープ屋さんがあるんだけどね!スッゴく美味しいみたいで食べてみたいんだ~!和樹は甘い物とか好き?」

「おう、好きだぞ」

「良かった~♪じゃあ一緒に食べよー♪」

「ああ」


そして俺達はショッピングモールに到着した。

「確かに大きいショッピングモールだなぁ」

色々なジャンルの店舗が所狭しと並んでいる。

「和樹ー!クレープ屋さんあっちだって~」

咲がクレープ屋の場所を見つけてくれたようだ。

「おう。あ、ちょっと手洗い行ってくるわ」

「うん!ここで待ってるね~」


それから若干迷子になりかけながらも元の場所に戻ってきた時だった。


「お姉さ~ん。一緒に遊ぼうよ~」

男二人組に絡まれている咲の姿を目撃したのだった。

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