余談:平成二六年度の私
名門男子校の野球部に所属するあなたは、今日も暗くなるまで練習を続けた。ようやく家へ帰れる、その道すがら神社の前を通ったとき、あなたはふいに自転車を止めて、脇の小川へと歩き始めた。そして露草の若葉が茂る水辺に座り込み、何かを手の中に包み込むようにして捕らえる。
あなたが見つけたのは一匹の蛍だった。混じりけのない光を揺らめかせ、あなたの手の中で息づいている。
私は蛍が好きだ。いつどこで好きになったのかは分からないが、昔からそうなのだ。虫が、特に蛾が好きでなかったころもあったが、よほどのことがない限り蛍だけは嫌いにならないだろう。
露草の上に蛍をそっと乗せて、あなたは立ち上がり、また自転車に乗った。小川の流れる清浄な音が、何重にも響く蛙の声と並走し、微かに聞こえた。
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