第20話
頭の腫れが引いていく時間は、頭の雲を晴らすには十分すぎる時間だった。
一週間後、学校に行き、初めに部室に顔を出した。
既に全員が集合している部室。星名の隣には春崎先輩がおり、話しかけていた。
「ご心配をおかけしました」
「本当だよ」
文樹先輩のツッコミはすごく優しかった。
「文樹先輩ってカッコいいですよね」
「…頭打っておかしくなったか?」
「前から思ってたんですよ」
「よりおかしいぞ」
くだらないかけあいに、笑い合う。
きっと夏目さんと細井先生、そして布留川先生もこの場所でそうしていたに違いない。
八年前のあの時までは。
「それで、どうする?」
木暮先輩は私に尋ねた。
「布留川先生に会ってきます。お礼と謝罪をしに」
先輩は僅かに眉をひそめ、すぐに戻して、頷いた。
休んでいる間に先生と結んだ約束の場所に向かう。
校舎の裏にひっそりと生える桜の木。度重なる増築や改修の中、この木は忘れられて、居場所をなくしてしまったのだろう。
「布留川先生」
掘り返された跡のある土の上、桜の葉の緑を通した光の下に、布留川先生は立っていた。
「雲瀬くん。いや、あの時の君」
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