第18話

次の日、私は化学室に向かった。課題を出すためでも、質問をするためでもない。証拠を探すためだ。


「なんで…」

「それはこっちのセリフだ」

「似た者同士だね~」

「…」


放課後、誰もいないはずの化学室には、星名以外の文芸部員が揃っていた。


「俺は木暮についてきただけだからいまいち状況がつかめていないんだが、誰か説明を頼む」


居候までいる。


「八年前、そして現在もこの学校にいる可能性がある人間は、年齢的に、化学教師で私たちの顧問である布留川ふるかわ先生しかいないんです」

「それって…」

「まだ分かりません」


この結論に、文樹先輩、木暮先輩、世羅、そして私はそれぞれにたどり着き、何を示し合わせたわけもなくこうして集まってしまったのだ。

化学室の鍵は好都合なことに閉まっておらず、私たちは黙々と何かを探がした。きっと全員の頭の片隅に、昨日の星名の言葉が染みついている。

謎解きを楽しんではいけない。


「化学室なのに、骨格模型がある」


世羅の言葉で初めて骨格模型に視線がいく。扉を開けてすぐのところにあり、逆に気がつきづらい。


「まぁ骨格模型ぐらいなら、化学室にあっても…」


キャスターつきの腰ぐらいの高さの棚を動かし、私は絶句した。


「布留川先生は何者なんだ…」


文樹先輩の言葉に、脚のない骨格模型からの返事はなかった。








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