第15話
春崎先輩は二人だけになると、私の隣に移動した。
「あ、ごめんなさい。私がいたら春崎先輩帰れないですよね。すぐ出ます」
鍵は二、三年生しか借りられないし、返せない。部員ではないが、この状況だと春崎先輩しか返せないから先に帰ることができないのだ。
「いいよいいよ。ていうか文樹のやつ部長だろ?鍵の責任くらい持てっての」
「そうですね」
「…俺も、昔話していい?」
私は骨を見つめていた。
「俺この春転校してきたんだ。だから光台歴は雲瀬たちと同じ。
自分で言うのもなんだけど、俺って結構気が利くじゃん?だから交友関係も特に問題なく、すぐに馴染めたんだけどさ。ま、つまんなかったんだよね」
私は春崎先輩の方を見た。彼はニカッと笑った。
「そんな感じで一週間がすぎた頃にクラスメイトからこんな話を聞いたんだよ。
『文樹と木暮には近づくな』ってね。その二人は一年生の時、クラスのいじめを鮮やかに告発した。だけどそのクラスはそれまでいじめのおかげで、表立った問題が起きてなかったんだ。いじめられていた子は楽しい学校生活の生贄だったんだ。生贄を失ったクラスは荒れ放題。もっとも、先生が見て見ぬふりを通せる程度だけどね」
「そんなことが」
「俺は気になって、二人に近づいた。すっごい面白い奴らで、すぐに仲良くなった。もうつまんないって言うことはないだろうね。
それで、ある日ちょっと噂の真偽を聞いてみたんだ」
春崎先輩はきっと雑談をするような感じで聞いたんだろう。
「噂は本当だった。文樹が動き、木暮が考えるって感じだったみたいだ。
そして二人は学年中から腫れ物扱いされていた、今も残ってるけどね。それでも二人は自分たちのやったことに誇りを持っていたんだ。自分たちは人を救ったと。正義だったと。
だけど一年生二学期の修了式の日、いじめられていた子が言ったんだそうだ。
『誰も救われてないよ』と」
ああ。
「二人は今でも謎解きが、怖くて楽しくて仕方がないんだ」
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