第16話

学校の最寄り駅は私鉄だ。朝の時間帯は比較的高い頻度で電車の行き来があるものの、夕方の、今日のような微妙な時間は三十分近く間が空くことも多い。

そこで光台の学生はよく改札入ってすぐのベンチに腰掛けている。

私は、星名の隣に座った。


「星名の感覚は、一般的な、良い人の感覚だと思う。私たちは確かにおかしい」


私も星名も、時計を見つめたままだ。


「だけど、おかしい人も、おかしいなりに色々考えてて。これもその結果決めたことなんだ」


私と星名は方向が違う電車に乗る。


「みんなに協力を求めてしまったのは私が間違ってた。これからは私一人でやる。

自分勝手だけど、それを認めてほしい。私はこの謎に憑りつかれてしまったから」


星名の電車はあと二分。私の電車はあと五分で来る。


「…うん。私はそれに協力しないし、手放しで応援もできない。でも、認める。

あと、さっきは言い過ぎた。…。たぶんちゃんと救われてたと思う」


救うとはなんなんだろう。


「…ネイル可愛いよね」

「え?…ありがと」


私たちは立ち上がり、それぞれ反対のホームに降りて行った。

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