第6話

店員さんに注文を確認してもらい、ドリンクバーを取りに行く。紅茶、コーヒーはスルーしてりんごジュースを注いだ。


「どんな場合でもこの紙が現段階で一番重要なものだ」


木暮先輩は紙をあげた。


「これを見て真っ先に思い浮かぶのはオカ研ですよね」


オカルト研究部。部活棟の一階奥。つまり文芸部の真下で活動している部活。何をしているのか詳しくは知らないが、この前覗いてみると魔法陣やら魔導書やらが部屋中に散乱していた。


「悪魔崇拝ならヤギはむしろ崇める対象な気がするんだけどねー」


世羅は店員さんが運んできたコーンピザをウキウキで受け取りながら言った。知識の幅広さには毎度のことながら脱帽する。


「生贄って、殺すの?」


星名が小さな声で言った。


「供えた後か前に殺すのが一般的だねー。飼う場合もあるけど」


世羅はピザを切り分けた。マルゲリータやハンバーグも続々と到着し、それぞれに食べ始めた。


「とりあえずオカ研に何か知ってることはないか聞くか。いや、でもヤギがいることはバレちゃヤバいから、潜入…?」

「目だし帽人数分用意しますねー」


文樹先輩の物騒な提案に世羅は本気か冗談か分からないことを言った。


「あと何か話しておきたいことがある人は?」


私は捜索時の出来事を思い出し、木暮先輩の方をチラッと見た。目が合うと木暮先輩は食器を置き、咳ばらいをした。


「メイを探してた時、校舎裏、あの桜の木が植わってるところあるだろ?そこに約一メートル四方土が掘り返された跡があった」


木暮先輩は事実だけを述べた。しかしそれは事実以上の重みを帯びていた。


「いつもはあんなところ見ないから、いつからああなっていたのかは分からない。

そういつもはあんなところは見ない、あんなところをあれだけ掘るのは不自然だ」


全員がコップを置いた。


「関係があるかはまだ分からない。

だけどその線も残しておくべきだな」


空調の少し効きすぎた店内。

文樹先輩はそうやって、シセリアでの推理を〆た。


シセリアを出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。スマホのデジタル時計は22:00を表示している。


「ちゃんと助ける…」


木暮先輩の呟きが頭に引っかかりながら、私たちは解散した。




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