───はい

 エピローグ。時計にまた役割が与えられた。



       ────────────────────────



 ボトッ───


 鈍い音で目が覚める。気づけば床の上に横たわっていた。


 ボトッ、ボトッ、ボトッ───


 本棚が崩れ、何百冊もの本が落ちていく。いや、飛んでいるのか?自由を得た鳥の如く、本は一斉に窓をめがけて飛んでいく。


 どこまでも、どこまでも。

 その果てに自由はないとしても。


 いつか忘れてしまう夏の奇跡。

 忘れ去られた本たちの行方は誰も興味がない。



 燃える夏の朝。流れる本の滝。


 陰鬱な部屋に差し込む太陽の視線は、ほんのりとバニラの香りがする。




 私はそれを綺麗だと思った。




 パタンッ───

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る