第9話:八重山の太陽(ヤイマヌティダ)
ぼくの世界の歴史に残っている「オヤケアカハチの乱」のオヤケアカハチは、イリキヤアマリ神を信じて
図書館の本には「正義感が強く、島の自由のために先頭に立って権力にたち向い、八重山の人々から太陽と
戦には負けたけれど、ぼくが生まれた島では「大切なもののために戦う強い心」を「アカハチ精神」として伝えてられている。
ぼくはオヤケアカハチの話を読んで、かっこいい人だなぁって思っていた。
もしもアカハチが戦に勝っていたら、歴史はどんなだったかなぁ? って思ったりもした。
でもまさか、歴史がちがう世界では、アカハチが勝って王様になっているなんて考えもしなかったよ。
おまけに、その世界のぼくがアカハチの子孫だなんて。
「アカハチさまの血をひく王家の男子は、強い
リッカにぃにぃがフフンッと、いばって言う。
いばってるけど、リッカにぃにぃはぼくよりも体が小さいし、女の子みたいな顔だから、あんまり強そうには見えない。
ぼくが生まれた島では、アカハチはたくましい大男だったって言い伝えられているんだけど。
アカハチと同じ髪の色を
だから、つい聞いてみたんだよ。
「ぼくの世界のアカハチは、たくましい大男だったけど、この世界ではちがうの?」
「なんだ、知らないのか? 見せてやるからついてこい」
聞いてみたら、リッカにぃにぃに手をつかまれて、部屋から連れ出されてしまった。
母上と女官たちに「はい、いってらっしゃい」って笑いながら見送られたよ。
母上と宝物庫へ行ったときは小走りになってついて行ったけど、リッカにぃにぃはぼくよりも足がおそいから、楽について行ける。
行った先は、大きな絵がかざられているカベの前だった。
キリッとした顔で空を見上げて立つオヤケアカハチの姿は、まさに
「わぁ! かっこいい!」
「だろう?」
あこがれの英雄の姿を見て感動しているぼくに、リッカにぃにぃがまた自慢するように言う。
アカハチはかっこいいけど、リッカにぃにぃは「かっこいい」という感じじゃないなぁ。
だから、つい言っちゃったんだよね。
「でも、リッカにぃにぃは『かっこいい』っていうより『かわいい』って感じだね」
「んなっ?!」
そうしたら、リッカにぃにぃはゆでたタコみたいに真っ赤になった。
おまけにプンプンおこり出してしまったよ。
「だ、だれが『かわいい』か! お前、ナナミのくせに生意気だぞ!」
リッカにぃにぃはアニメのいじめっ子みたいなことを言った後、ぼくを置いてどっかへ走り去ってしまった。
置いて行かれたぼくがポカンとしていたら、近くのドアが開いて、赤い髪と青い目の子供たちが笑いながら出てきた。
「リッカが
「やあ、異世界のナナミ、はじめまして」
子供というより、ほとんど大人みたいな2人が、ニコニコしながら言う。
この人たちも、この世界のぼくの兄弟なのかな?
「ぼくはカズマ、一番上の兄だよ」
「オレはリュウジ、二番目だ」
ほとんど大人みたいな2人も、やっぱりにぃにぃだった。
ぼくは一人っ子だったから、兄弟ができてうれしい。
「三番目のシュウゾウだ、よろしくな」
「ぼくはシロウ、四番目ね」
「五番目のシンゴだよ。あと、六番目がさっき逃げちゃったリッカね」
三番目と四番目の兄弟は、高校生くらいかなぁ。
五番目は中学生くらいかな?
みんな、ぼくの世界でもよくある名前だ。
あと、みんなガッチリしてて、アカハチの体つきに近い感じだ。
「ぼくの名前は
「見た目だけじゃなく名前もそっくりなんだね」
「ここの生活で何か分からないことがあれば、いつでも聞いてね」
「リッカはあんなだけど、気にしないで」
とりあえず、体の大きいにぃにぃたちは優しそうで良かった。
リッカにぃにぃはすぐプンプンおこるけど、気にしなくていいらしい。
大きいにぃにぃたちがいた部屋は、いっしょにお茶を飲んだりゲームをしたりする場所だった。
ゲームといっても、ぼくの世界にあるテレビゲームは無いみたい。
チェスとか、
カードゲームはトランプや花札みたいなもので、かるたっぽいものもある。
でも、ぼくが好きだったトレーディングカードは無かった。
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