第8話 二槍さんちで遊びたい
「土曜日朝からうち来ない?」と帰り道に言われたことを、初心は今思い出していた。現在、初心は二槍家に向かって歩いているところである。
「緊張してきたー」
眩しく光る太陽を全身に感じながら、緩やかな下り坂を下っている。今日は土曜日。初心は私服姿で背中に小さめのカバンを背負っている。この中には、家から持ってきた黒ひげ危機一髪が入っているのだ。
これから夕方まで二槍さんと二人きりか、とウキウキしている間にあっという間に二槍家に着いた。ニャインを送るとすぐに玄関が開いた。
「いらっしゃ~い」
出迎えてくれた二槍は、いつにも増して嬉しそうな表情をしていた。一瞬可愛すぎて気絶しそうになったのは、ばれていないだろう、秘密にしておこう。
今日の二槍の服装は、オーバーサイズの薄桃色Tシャツに、短すぎる白いショートパンツというハッピーセットだった。履いているのか心配になって何度も確認してしまうのは、仕方のないことだった。
リビングに通される。普通の家だよ、と前に言っていた通り、シャンデリアがあったり白磁でできたティーカップやらでキッチンが埋め尽くされているわけでもなく、テレビ、膝丈のテーブル、三人掛けのソファ、食卓用テーブルがある、普通の家だった。
初心家と違う所があるとすれば、それはソファの前に置いてあるテーブルの上に多種多様なお菓子や飲み物が用意されていたことくらいだった。なにも毎日置いてあるわけではなく、今日のために彼女が用意したのだろう。
「こんなに用意したの? すごい」
初心もお菓子やらジュースやらを用意してきていたので、カバンから出して並べる。二槍がコップにジュースを注いでお菓子の袋を開け、ソファに座る。初心も隣に「失礼します」と言って座り、準備は早速整った。
コップを手に取り、二槍の持つコップと軽くぶつける。
「二槍さん、誕生日おめでとう!」
こっそり持ってきていたクラッカーを二槍の頭上に向けて放つ。きらきらした装飾が宙に舞う。
「わーい、ありがと~!」
天使のような微笑みが、誕生日じゃなくても毎日祝いたいと思わせてくる。初心は感謝した。生まれてきてくれてありがとう、と。
ちなみに細かいことを言うと今日は厳密には二槍の誕生日ではない。四日後が誕生日なのだそうだが、それより前に二人だけでお祝いしたかったらしい。ご家族は外出しているそうで、明日の昼頃帰ってくると言っていた。
二人だけで……と言われた初心がどれだけ舞い上がったのかは言うまでもない。まだ友達という関係から昇格していないが、二槍が今日家に招いてくれたことから察するに、もうそろそろ友達以上恋人未満へとランクアップさせてくれてもいいのではないかと思い始めていた。
喜びの笑顔だけで世界を救えそうな隣の二槍に、初心は手渡した。
「はいこれ、誕生日プレゼント」
「え、いいの? ありがとう!」
なにをあげればいいのか結構迷った挙句、巷で流行っていると噂の『ニヤッくま』なるキャラクターのキーホルダーを手渡した。茶色い毛で覆われ、おっちゃんこしている姿勢の熊だ。表情が二槍に似ていたのでビビッときた。頭からチェーンが伸びているので、カバンとかにつけられるようになっている。つけてほしいなあ。
その後、テレビで二槍お気に入りのニューチューバーの動画を見ながら、二人で楽しくお菓子を食べていた。一つ目の動画が終わると、二槍がテーブル上にあるポッキーの箱を手に取った。それは、初心が用意してきたものだった。
「初心くん、ポッキー持ってきたってことはさ~、やっぱ期待してるってことだよね~、ね~?」
「い、いや、そんなことないけど」
目を逸らして知らないふりをするが、ニヤニヤする二槍には筒抜けだったようだ。そう、やっぱり男女で楽しく菓子パといえば、ポッキーゲーム!
あわよくばを狙っている下心丸出しの初心なのだが、自身が耐えられるのかを考慮するのを忘れていたことに、ポッキーを咥えてから気づいた。や、やばいかも。
「じゃ、先に顔離したほうが負けね。勝ったら好きなこと命令できるってことで」
「えええ?」
少しおちょぼ口気味になった二槍の偏差値百超え(初心の感覚で)の顔面が、リスのようにポッキーを食べ進めて近づいてくる。初心は目線をおでこ辺りに固定してかろうじて耐えているが、パンク寸前だった。そもそも咥えた瞬間から顔が近いのだ。食べ進めるたびに振動が直に伝わってきて、こそばゆいやら恥ずかしいやらでむずむずと顔が動いてしまう。鼻の穴は膨らんでいるだろうし、眉間やらおでこにしわが寄っていて赤くなっているだろうから、初心は今梅干しといっても過言ではないだろう。それでも躊躇なくポリポリと食べ進めてくる二槍から、シャンプーなのか香水なのか分からないが、ポッキーよりも断然甘い香りが鼻に入ってくる。
初心は一口たりとも食べ進めていない。口から離さないことで精いっぱいだったからだ。普段ならこんな梅干しになる行為に数秒と持たないのだが、ゲーム開始時に二槍が言った「勝ったら好きなこと命令できる」という報酬があるために踏ん張っていた。
だがそれも、二槍のくりくりの大きな瞳が本当に目と鼻の先ほどの距離になったとき、崩壊した。初心はポッキーの柄の部分だけかじり取って後ろに倒れた。ソファのひじ掛けに後頭部がぶつかる。
「はい、私の勝ち~!」
二槍が可愛い声を出して喜んでいることを嬉しく思いながら、初心は自身の顔から出る湯気をぼんやり眺めるのだった。
しばらく湯あたりしたように動けなかった初心が回復すると、ポッキーをポリポリかじっていた二槍がソファの上で向き直って聞いてきた。
「初心くん、ちなみに勝ったらなんて命令しようと思ってた?」
「いや、それどころじゃかったよ。何も考えてなかった」
「じゃあ今考えて」
即答、そしてウインクという必殺技をもらってしまった。心を打ち抜かれたと感じた次の瞬間にはまた仰向けになるところだったが、なんとか耐えた。そうだな、まだしてもらってないことがいいな……。
考えた末に思いついたのがハグだったので、そう伝えてみた。すると二槍はかじっていたポッキーをテーブルに置いて、初心のほうを見てニヤニヤしてきた。
「勝ったらなんでも命令できるっていったよね」
「うん」ゴクリ。
「じゃあ、私の命令は~」
二槍がソファの上で跳ねた、と思ったら、腕が伸びてきて初心の首裏に回された。温かい体温が初心を包み、胸に密着してくる。小さい顔が初心の顔のすぐ横にあって、熱を感じる。それにいかにもムニッという擬音語が聞こえそうなくらい柔らかなものも胸の辺りに感じる。Tシャツ越しだから前におんぶしたときよりもダイレクトに感じてしまう。
初心がいきなりのことに「えっ、えっ……」とキョドっていると、追い打ちをかけるようにぎゅっと抱きしめてきて、耳元で吐息と共にこう言われた。
「友達だったら、このくらいは当然するよ~。……あ、あと今日ブラ付けてないんだ~」
ポッ、シュ~。
まさかのカミングアウトが初心を襲う。瞬間湯沸かし器が沸騰するまでに時間がかからないように、初心の熱膨張も一瞬で限界を迎え、耳の穴から湯気が飛び出す。それを見てから二槍は、
「ま、嘘だけどね」
少し頬を染めてニヤニヤ顔で笑った。
それから初心の梅干し顔が桃くらいの色になるまで、二槍はうちわで扇いでいた。復活した初心は、今度は僕の番だと言って、カバンの中から黒ひげ危機一髪を取り出した。
初心自身も懐かしく思える片目を隠した御仁と対面し、樽にその男を設置し、カラフルな剣を樽の周りに適当に並べた。
「さあ、始めようか」
初心は自信に満ちた笑みを浮かべ、ソファから降りて二槍と向かい合うように床に座る。そして二槍に勝負を持ちかける。
「負けたら、相手の目を見て好きって言うことね」
「……」
眉間にしわを寄せ、唇を少し尖らせて、初心の余裕そうな態度を不審に思ったらしい二槍は、初心の目と黒ひげ危機一髪を交互に見てから、
「ふ~ん、いいよ?」
受けて立ってやる、と言う文字が浮き出て見えるほど余裕綽々な王者の表情で床に座った。
じゃんけんをし、先行は初心、後攻は二槍になった。最初は適当に素早く剣を差し込んでいく。二槍もビクビクしたりせず、すぐに剣を差し込んでくる。まるで罰ゲームが恐くないように見える。しまったな、恋人繋ぎを一分間する、とかにすればよかったかな、という考えが過る。そうすれば恥ずかしがる姿を見られたかもしれない。
初心にも多少のプライドはあった。故に、いつもはこちらが赤面してばかりだから、たまには向こうが恥ずかしがる女子の姿を見たいと思っていた。
「どうしたの初心くん、随分迷ってるみたいだけど」ニヤニヤ。
「……いや? ちょっと考え事をね」
もう半分くらいの穴が埋まるまで剣を差し込んでいる状態なのだが、まだ二槍は外れをひかない。ひょっとしたら今一番緊張しているのは眼帯の海賊さん自身かもしれない。心なしか冷や汗をかいているようにも見える。
剣を差し込み、二槍にターンを渡す。躊躇なく、考えるそぶりすら見せずに二槍は剣を差し込む。
おかしい、二槍さん、なぜこんなにも罰を恐れずに突き進めるんだ? 自分から好きと一度も言ったことがない二槍さんにとっては、相当きつい罰のはずなのに。
二槍を見ると、頭脳派の悪役が浮かべるような、片方の口端だけを上げる笑い方をしていた。全てお見通しよ、お前は私の手のひらで転がされている、とでも言いたげな。
そそ、そんな! そんなわけはない。ハッタリだ。初心は首を左右に振り、剣を差し込む。まだ外れはひかない。だいぶ剣の数も少なくなってきた。
二槍は相変わらず瞬時に剣を差し込み、不気味な笑みを浮かべたままターンを渡してくる。まさか初心の編み出したこのイカサマに気づいているのではないか。そんな疑念が急速に膨らんでくる。
「初心くん、冷や汗凄いけど、なにかあったの?」
こちらの手の内をすべて見透かしてくる瞳で、二槍がプレッシャーをかけてくる。まさか、そんな——。
誕生日パーティーをやると連絡をもらったその日から初心は考え始めた。そう、二槍に好きになってもらう方法、などではなく、今回は、二槍に仕返しする方法だった。いつもからかわれて湯気を出したり赤くなったりしているのは自分だけで、二槍の恥ずかしがる姿は一度も見たことがないからだ。
勝負に勝ち、罰ゲームとして恥ずかしいことをさせる。それも、初心が望む形で、だ。余っていた新品のノートを開き、様々な案を書き出していくが、なかなか勝てそうなものが見つからなかった。
とそこで、自分のこれまでの誕生日パーティーを思い返してみた。……そういえば小学三年生のころ、プレゼントとして黒ひげ危機一髪をもらったな。さらに記憶をたどると、人形が飛び出すシステムについて、解明したことも思い出してきた。樽の中にある飛び出す棒を回すことで、外れとなる穴の位置を変えられることに気づいたのだ。
それから初心はクローゼットの奥に眠っていた黒ひげ危機一髪を引きずり出し、何度も実験を重ね、当時の勘を思い出していったのだった。
誕生日パーティー当日の朝、外れである穴以外にすべての剣を差し込んで、どの穴が外れかを事前に把握した初心は、勝利の確信をしてほくそ笑んだのだった。
「罰ゲームはそうだな……。二槍さんが一度も言ったことがないという、『好き』の二文字を僕の目を見て言わせることにしよう」グヘヘヘヘ。
この『黒ひげ限定イカサマ師』初心の謀略を見抜いたというのか。いや、落ち着け、そんなはずはない。二槍の笑みの種類が今はニヤニヤではない。厳密にはニタニタがふさわしいニヤケかたをしている。初心は二槍の顔を注視しながら外れ以外の穴に剣を差し込もうとする。数々の剣が刺さった樽の縁に指をかけ、どこに刺そうか迷っているふりをしている時だった。ぬるっとした感触が指の腹を襲う。
さっきまでは気づかなかったが、樽の表面がところどころ濡れている。そして生温かい。窓の外から入ってくる日光が当たっている方向から見ると、光沢を帯びているように見える。水かなにかだろうか……。
「どうしたの初心くん、そんなにじろじろ見ても外れが分かるとは思えないけど?」
余裕そうに笑う二槍の方を向く。だが、妙な違和感。そんな女王のような表情の割には、背筋がよいのだ。ソファを背もたれにしてふんぞり返っているわけでも、テーブルに肘をついてあごを乗っけているわけでもない。ピンとした背筋で正座しているのだ。
言動と姿勢があってないなと思いつつ、初心は剣を刺して二槍に番を渡す。その瞬間、初心は気づいた。二槍が剣を触る前に不自然に腕を動かしたことに。そう、彼女はショートパンツで手汗を拭いていたのだ。
そしてなぜ手汗をかいているのか。拭いてもなお樽に残るような尋常ではない手汗をかいているのか。その答えは一つしかない。それは、
「二槍さん、今ものすごく緊張してるでしょ」
「し、てないよ? っえ? どど、どうしたの?」
器用なことに顔は一ミリも動揺していないが、声と喋り方でもうバレバレだった。
——勝った。
初心は確信した。二槍が樽を掴み、剣を素早く刺す。手の平を再び戻すと、またテーブルの下で擦るような動きをする。樽の表面を見ると、てらてらと光っている。よく見ると剣の柄も濡れ光っていた。
二槍にとって、異性に『好き』ということは非常にハードルが高いのだ。プライドが高いのかなんなのか分からないが、仮に『好き』と言う罰ゲームがかかっているだけでもこんなにも緊張している。必死に取り繕って我慢していると思うと、非常に面白い。腹の内でグヘヘとゲス笑い。
なにも考えずすぐに剣を差し込むことができたのは、罰ゲームなんか屁の河童というわけではなく、緊張と、外れを引く恐怖をそれ以上高めないためだったのだ。さらに、びくびくしていては初心に緊張しているのが伝わってしまうので、不敵に笑うことにより、初心を動揺させようとしていたのだ。
以上の考察を終えた初心はしたり顔でクックと笑い、剣を刺して二槍に渡す。剣は残り三本。初心の勝利顔にさすがに動揺を隠せなくなった二槍はとうとう運も尽き、
ボン!
外れの穴に剣を差し込んで飛び出た人形に、「ひゃっ」と可愛らしく驚いたのであった。
心臓の辺りを押さえて荒い息をしている二槍を見ながら初心は悪役顔で笑う。
「さあ二槍さん。罰ゲームの時間だよ。僕の目を見て、気持ちを込めて言うんだ。『好き』ってね。まあ、仮にだけどね? 本当の告白ってわけじゃないよもちろん」
客観的に見ると惚れさせる相手にやることではない気もするが、今の初心はそれどころではない。早く二槍の恥じらう顔を見たいのだ。仮に『好き』と言ってもらうだけだから、無理矢理好きって言わせているわけではないから、と必死に内心で言い訳して。
Tシャツの奥に潜む豊かな双丘の上下運動がだんだんゆっくりになっていく。二槍は息を整え、心臓の辺りを掴んだまま態勢を整え、テーブルの向かいに座る初心に向き直り正座する。いつものはつらつとして少し上からのお姉さん的態度もこの時ばかりは鳴りを潜め、俯いている前髪の隙間から朱に染まる肌が見える。
「一度しか言わないからね……」
Tシャツの胸元にしわが寄るほど強く拳を握っていき、赤くなって俯いていた小さな顔が、だんだんと初心の顔に向いていく。
キュッ、とすぼめられた小さな唇と連動して喉がゴクリと鳴り、恥ずかしそうに眉根を寄せた上目遣いで初心の瞳と心を射抜く。
「……す、好き…………やねん」
やねん、のところで目を逸らし赤くなった二槍は、口から「ふえぇ」と息を漏らしながら、横に倒れていった。一方の初心はといえば、恥ずかしがる二槍の姿を見ようとふんぞり返った気分でいたものの、『好き』ビームを食らってから石になったように固まっていた。口を阿呆みたいに開き、石化している。初心史上最も顔を赤くして。
謎に関西弁が出たことは、二槍の照れ隠しだったのかもしれない。だが、それを含めて可愛かった。いや、可愛いを超えていた。
心臓の鼓動が鳴り止まない初心は今、あの後気づけば平然としていた二槍に促され、ソファに座らされていた。正直まだ、仮にとはいえ言ってもらった好きが頭から離れない。
二槍が用意していたという映画のディスクをブルーレイにセットして、カーテンを閉めて部屋を暗くしてから初心の隣に戻ってきた。
「じゃ、見よっか」
ニコッと純真無垢な少女のような笑みを浮かべた二槍は、さりげなく初心の手を握ってきた。おひょー! と内心叫ぶ初心に気づかず、二槍はリモコンで再生ボタンを押した。そしてテレビ画面だけが光を発する部屋の中、ニヤニヤボイスで言った。
「見てる途中で逃げないこと。逃げたら私、超怒るから」
おまけに肩に頭を乗せてきた。柔らかくか弱い少女の手の温もりと肩から漂ってくる魅惑の香りに頭をやられた初心は、二時間の映画を体感二分ほどで見終わった。
映画を見終わって二槍の手が離れていくと、初心は正気を取り戻した。
「面白かったね!」
「う、うん……!」
緊張しすぎて内容なんかまるで覚えていないため、半笑いでごまかしておく。
「ねえ初心くん」二槍が少し恥ずかしそうな表情で目を見つめてくる。「よかったらさ、友達以上恋人未満に昇格させてあげようか? ……なんか、楽しかったし」
「え⁉ いいの⁉」
誕生日パーティーが予想以上に楽しかったのかもしれない。二槍は嬉しそうにコクンと頷く。
「やったー!」
ガッツポーズを掲げ、喜びに浸っていると、二槍がカーテンを開けた。眩しい外の光が入ってくる。目を細めながら、初心は自身の手のひらを見つめる。なんか今日、めっちゃ進んだ気がする……。
「あ、そうだ初心くん、もうこんな時間だけど、お昼どうする?」
二槍が時計を見上げていたので、初心も確認する。この家に来てから全然気にしていなかったが、もう午後の二時半になっていた。お菓子を食べていたせいかおなかもあまり減ってはいなかったので、そう伝えた。二槍も「私もおなか減ってないな」とおなかに手を当てて言った。
「じゃあさ、ちょっと早いけど、誕生日といったら、のやつ買いに行こっか!」
「誕生日のやつ……?」
二槍は後ろに手を組んで上体を斜めに倒して、満面の笑みで言った。
「ケーキ!」
ケーキ屋は二槍家を出て交番の前の信号を渡り、少し歩いたところにある。前に二槍をおんぶして交番に財布を届けに行ったときに通った場所だ。そんなに距離はないが、二人で並んで歩く途中で、なんとなく高校卒業後の話題になった。
「僕は、とりあえず大学かなー」
「へえ、とりあえず、かあ。初心くんのおうちってもしかしてお金持ち?」
「全然そんなことないよ。でも、大学までは金出してやるってお父さんは言ってくれてるから、やりたいこと見つけるためにも行こうと思ってる」
「そっかあ」
今は高校三年生の初夏。初心は系列の大学に内部進学という形で行くつもりだから、そこそこの勉強で済むはずだが、他大学に進学したり就職する生徒たちは、もう勉強や面接などに向けてギアを一段階上げているころだろう。二槍はどうするのか気になって聞いてみた。
「う~ん、私は大学にはいかないかな~」
「じゃあ、就職?」
「いや~、まだ決めてないかな~」
「え、じゃあ卒業したらどうするの?」
「……とりあえず家は出る、かな。一人暮らししてみたいから」
美人で元気もあり、成績もいい二槍なら進学だって就職だって人より簡単にクリアできるだろうし、もう進みたい道が決まっているものだとばかり思っていた。
「家を出るって、どこか遠くに行っちゃうの?」
「うん、まあ沖縄とかいいかなって最近は思ってる」
「お、沖縄⁉ ……僕今、隣にある大学に行こうと思ってるのに……」
「ああ! ごめん初心くん! なにも決めたわけじゃないからね! そうだよね、離れ離れにはなりたくないよね。私も、別に初心くんと離れたいってわけじゃないし」
本気で絶望しかけた初心の頭をごめんごめんと撫でてくる。まあ、まだ付き合ってすらいない関係なのでそんなに強くも言えないのだが、数か月後にはお別れする、と言われたようでショックを受けたのだ。
先のことを考えてちょっと気分が落ち込んだところで、ケーキ屋に着いた。ケーキを選ぼうとショーケースの前でよだれをじゅるじゅる言わせている二槍を見ているとブルーな気持ちはすぐにどこかに吹っ飛んだ。初心はバナナの入ったチョコケーキ、二槍は定番イチゴのショートケーキを一緒に買って店を出た。
「あそこ実は行ったことなかったけど、内装とか照明とか、雰囲気よかったよね」二槍が嬉しそうに言う。
「行ったことなかったの? こんなに近いのに」
「あ、……うん。逆に近すぎて? みたいな」
「へえ」
おどけて後頭部を掻く素振りをする二槍も一段と可愛いな。
僕が持つよと言っても頑なに譲らない二槍が手に持つケーキの箱を見て、たしかに、と感心した。いつも初心がお祝いの日に食べているケーキ屋の箱は装飾などろくにしていないシンプルなデザインだが、このケーキの箱には、ケーキやごちそうが乗ったテーブルを囲む幸せそうな家族の絵が可愛らしく描かれていた。さらには、店員さんにさりげなく聞かれて二槍が答えていた「そうです、誕生日パーティーなんです」というセリフから考慮してくれたのか、『Happy Birthday!』の文字まで丁寧に入っていた。綺麗でおしゃれ、これで味まで良かったらリピート確定だな、と初心はひそかに思った。
二槍家が見えてきたところで、それまでケーキの箱の絵を見てニマついていた二槍の様子が、一変した。なにかあったのかと目を凝らしてみると、初心が来たときにはなかった軽自動車が、二槍家の駐車場に止まっていた。親の車だろうか。今日は帰ってこない、と二槍は言っていたが、親御さんになにかあったのだろうか。家の前まで歩き、はっきりと親の車だと確認した二槍は、絶望した表情で口を開く。
「うそ……」
二槍は青ざめた顔でそう呟き、頑なに手放そうとしなかったケーキの箱を、力なくボトリと落とした。反射的に拾おうとする前に、二槍の横顔に目がいく。自宅が火事で全焼、そんな光景を目の当たりにしたような顔をしていた。親が予想より早く帰ってきたくらいでなにをそんなに驚いているのだろうか。
すると二槍は玄関に向かって走りだした。ドアノブを下げ鍵が開いていることを確認し、玄関の靴を確認した様子の二槍は、この世の終わりでも見てきたような顔で、
「帰って初心くん。ごめん……」
いきなりの発言に頭が追いつかず、初心は混乱する。
「待って! いきなりどうしたの⁉ 親御さんが帰ってきてるなら挨拶するよ!」
二槍は家の中に入って玄関を閉めようとしている。初心はなにがなんだか分からないがまず話を聞くべきだと思って走り出す。
「ねえ! 二槍さん! ちょっと待——」
「ごめんね、本当にごめんね……」
ドアの向こうにいる二槍に手を伸ばしたが、バタン、と目の前でドアは閉められてしまった。混乱するなか、とっさにドアノブを下げて開けようとしたのだが、もう鍵がかけられていて開けられなかった。いきなりなんなんだよちくしょう!
意味不明の出来事に苛立ち、その怒りをドアの向こうの二槍にぶつけようと握りこぶしを作り、ドアを叩こうと考えた。だが振り上げた拳をドアに叩きつけることはできなかった。他人の家のドアを叩くのはよくない、と冷静になって考えたわけではない。声が聞こえたからだ。
女の人の怒鳴り声だった。ドア越しに聞こえてくる。だがなにを言っているかまでは聞こえない。二槍ではないことは確かだ。……ということは、帰ってきた親の声なのか。
初心は一旦ドアから身を離し、近くの窓を見た。どこか開いていれば中の様子が分かるかもしれない。尋常ではない怒鳴り声だったので、心配になったのだ。
二槍のあのショッキングな表情が脳裏に浮かぶ。
家の正面の窓は開いていなかったため、横のほうに回ってみる。すると、玄関の横にあった窓が若干開いているのを見つけた。そこから鳴り止まない怒声が漏れ出てきている。こっそりと中の様子を覗いてみる。
「あんたねえ、私たちがいない間にのんきにお菓子なんか食べてたの⁉」
玄関から居間へ続くドアが半開きになっていて、そこからさっきまで初心と二槍がお菓子を広げていたテーブルが見える。怒鳴ったのはおそらく叔母で、どんどんずかずかと音を立てて部屋の中を歩いているようだった。テーブルの上のお菓子の袋が床のカーペットの上に散乱していた。それを必死にかき集める細い手がせわしなく動いていた。
「うっ——!」
床に散らばったお菓子を拾っていた細い腕に向かって足が飛んでいった。人が転がったような鈍い音がした。初心は恐ろしくて縮み上がってしまっていた。二槍が、叔母に蹴られている……。
「ダラダラ片付けてんじゃないよっ! 早くしろっ!」
「はい、すみませんっ!」
悲鳴に近い声で返事をしたのは、初めて聞く二槍の大声だった。叔母と思われる女は地団太を踏み、両拳を硬く握り、キリキリと歯ぎしりをしていた。二槍が蹴っ飛ばされた時のはずみで、半開きだったドアが全開になって、部屋の様子がよく見えるようになった。
叔母は痛がりながらも床を片付けようと手を伸ばす二槍の髪をひっつかみ、無理やり自身の顔の前に持ってきてから言った。
「この服、見える? あんたに言ったわよね、親戚の葬式に行くって。人が悲しんでる最中にあんたはなに、お菓子パーティー?」
叔母は怯える二槍の髪を掴んだまま、大きく息を吸った。
「——ふざけるのも大概にしろよ! お前は立場が分かってねえのか⁉」
首を横に振る二槍。
「わかってるならなんでこんな勝手なことができるんだ? ああ⁉」
怒りを二槍にぶつけた叔母は掴んでいた髪を投げ捨て、「ああイライラする」と歯をギリギリさせながら床に落ちていたチョコクッキーを思いっきり踏んづけた。そのまま初心の視界から外れていった。
初心の心臓はいつもとは違う意味でバクバクしていた。なんなんだ、これは……。
それ以上の感想が浮かぶ間もなく、今度は扉の向こうから見知った顔が現れた。叔母の踏みつけたクッキーの箱を蹴っ飛ばして、二槍の義妹、透花が居間から出ようとしている。
「死ねよクズが」
二槍のほうをちらと見て、吐き捨てるように言った。それから二階に続く階段を上っていった。叔母がリビングから顔を出し、階段途中の透花に向かって言う。
「ゼリーとか食べれるかい? ってか、着替えられるかい?」
「……うん、大丈夫。ゼリーは、食べられそう。後で食べるね。とりあえず寝る」
「わかったよ」
二槍に向けていたのとは違う、優しい母が娘を思いやる声音だった。今の会話と透花の熱っぽいぼんやりした顔を見るに、どうやら透花は熱を出したようだ。喪服を着ている母と透花。おそらく葬式を行う場所に行く途中で、熱を出して急遽帰ってきたのだろう。初心はそう思った。
「おい!」
鬼の形相に戻った叔母は散らばったお菓子のカスを部屋の隅に集めている二槍に向かって言った。
「それが終わったら掃除と洗濯、それからあたしの分の昼飯を作んな。お前の分はもちろんなしだけどね」
「はい」
「なにしょげた顔してんだよ、そういうのが一番ムカつくんだよ!」
胸倉をつかまれた二槍は、後ろの壁に後頭部をぶつけられた。
「被害者面すんなっていつも言ってんだろっ!」
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ」
初心の視界から叔母が消え、二槍がぽつんと立っているのだけが見える。
「ない! 冷えピタもゼリーもない!」
奥に行っていた叔母の大声が聞こえる。再び二槍に八つ当たりしてから、
「買い物行ってくるから、帰ってくるまでに終わらせとけよ」
冷たい目で二槍に指示し、玄関を乱暴に閉め、出て行った。
初心は荒い呼吸を繰り返す。衝撃的すぎて、見ていることしかできなかった。
どうすればいいのかわからない状況で壁に寄りかかっていると、車のエンジン音が聞こえてきた。それから怒りに任せて踏んだのか猛々しいアクセル音が聞こえ、遠ざかっていった。
初心は角から駐車場を覗き込んだ。一度、息を大きく吸って、吐いた。
冷静にはなれないが、これからどうするか考えられるくらいには落ち着いた。
先ほどの光景を思い出す。初心は首を振る。
「なかったことには……できない」自分にだけ聞こえる声量で言った。
見てしまったものを見ていないフリできるほど自分は器用ではない。けれど、今見てしまったことを伝えてしまえば、二槍の今まで隠してきた闇を暴いてしまうことになり、彼女は傷つき、悲しむだろう。
だが、今日のことを見なかったフリをして、仲良く遊ぶ未来も、それもまた残酷だ。虐待の事実を見ないふりし続けられる自信もない。下校中や遊んでいるとき、なにかを隠している初心の態度を不審に思い、二槍が怪しむだろう。そこでどっちみち白状することになってしまう。だから今……。いや、でも……。考え、迷い、伝えるべきか、伝えないべきか、進んだり戻ったりを繰り返す。
やがて、わずかに『伝える』ほうに傾いた初心の気持ちが、足を玄関の前まで移動させる。鍵は開いているようだ。
初心はドアノブを握ったまま、まだ悩む。このドアを開けて、今伝えるべきか……。それとも……。
このドアを開けたら、初心はもう戻れなくなる。なにも知らずに楽しかっただけの日々に、二槍の笑顔の裏にある深い闇に気づかない日常に。
「だめだ。……そんなのは、だめだ」
初心だけではなく、ずっと親しかった一戸と三浦にもおそらく隠していた秘密。それを今傷ついた二槍に突きつけるのは、残酷だ。でも、これを見ないふりして無かったことにして、一緒に帰ったり遊んだりすることのほうが、残酷な気がする。
自分が将来、二槍とどんな関係になりたいのかをもう一度胸に問う。
答えはすぐに出た。その関係になったとき、虐待で二槍が傷ついているのを許せるはずもない。
「僕は絶対、二槍さんと両思いになって、付き合うんだ」
覚悟を決めた初心は、扉を開け、一歩内側へ踏み出した。玄関に立つと、かすかに音が聞こえてくる。二槍が料理を作っているのだろうか。ふと玄関の脇に目をやると、そこには写真立てやら家族写真、なにかの賞状などが飾られてあった。どこにも二槍仲美は存在しなかった。父と母、そして娘の透花の三人が笑顔で映っている。
初心は無意識に唇を噛みしめ、靴を脱いで勝手に上がる。リビングに入ると、フライパンに卵らしきものを敷いている二槍の背中が見えた。
「二槍さん……」
初心がためらいがちに声をかけると、二槍は肩を跳ねさせ、こちらを振り向いた。
「……ぇ?」
かすれた声がフライパンのじゅう、という音に混じって初心の耳に届く。いきなり背後に現れた不審者に慄く表情から、初心だと分かって少しほっとした表情に変わる。だが、それも少しの間だけだった。
「どうしたの、初心くん。まだ、帰ってなかったの?」
帰っていなかったどころか、全部聞いてしまったよ、という言葉を飲み込んで、初心はゆっくり静かにうなずいた。その初心の目線や雰囲気、なぜ勝手に家の中に入ってきたのかという疑問からか、二槍は感づいたようだった。二槍は天井のほうを見上げ、ゆるく瞬きしながら深呼吸をした。初心に言った。
「初心くん、見たの?」
短い質問だった。二槍の視線は目を伏せている初心のまぶたに刺さってくる。ちらと二槍を見上げると、その目は怒っていた。
初心は重い口を開く。「見たし、聞いたよ」
もう一度、二槍は大きく息を吐く。「そう」冷たい声音で告げた後、ガスコンロのスイッチをひねって火を消してから初心に近づいた。床を見ている初心の両肩を掴み、至近距離で目を合わせて言った。
「忘れて。今日見たことは忘れて。いいね」
ね、と肩を揺さぶられていきなり言われるが、初心はうんとは頷けなかった。
「忘れてって言われても……無理だよ」
「忘れて。じゃないと、もう私、初心くんと付き合えない。友達でもいられない」
「そんなっ」
「わかった?」
初心の肩にかかる力が強くなって、迫力の増す二槍だったが、初心は納得できなかった。記憶を消して、明日からも今まで通り接することなんて、できない。それに、忘れてしまったら、二槍が家で傷ついている状況を変えることだってできなくなる。
黙ったままでいると、二槍は初心を百八十度回転させ、背中を押して歩きだした。玄関の前まで来て、初心の背中を突き放すように押した。
「今日のこと、忘れられないんだったら、もう私と関わらないで」
初心は振り返り、
「いや、そんなことできないよ!」
「いいから、靴履いて」
眉間にしわが寄り、かなりイライラしている様子だった。初心はとりあえず言われた通りに靴を履いた。履いてから、ちゃんと落ち着いて話すつもりだった。けれど、
「はい、じゃあね」
「えっ」
背中を押され、ドアを開かれ、強制的に外に出されてしまった。気づいた時には、もう遅い。鍵がガチャリと閉められた音がした。
「二槍さん、二槍さん!」
ドンドンと扉を叩いて呼ぶが、返事はこない。
「開けて、二槍さん! ちゃんと話しようよ!」
必死に食らいつく。もはや近所迷惑など気にしていられない。「二槍さん、二槍さん!」
バン、と初心が叩く音よりも強く激しい音が扉の内から返ってきた。心臓が軽く跳ねた。扉の内側から、二槍の、喉が裂けるほどの大きな怒鳴り声が体に響いてきた。
「いいから帰れよ!」
一瞬、息が止まった。
誰の声か分からなかった。脳が二槍の発した声だということを否定していた。
初心は向こう側にいる二槍の様子を透視するように扉を見つめた。二槍さん、と喉から声が出そうになるが、それを飲み込む。
彼女は今、必死に隠してきた秘密を唐突に知られ、パニックになっている。そして、追い詰められてもいる。余裕がない。きちんとした話ができる状態ではない——。
そんな冷静な考えが初心の頭で働いたわけではない。ただ直感で、今は帰った方がいいな、そう思った初心は、
「わかった」
小さな声でそう言い、玄関から離れた。
車道に出てから、道路に落ちているものに気づいた。白いもの、だった。
近づいて見てみると、それは、中身がつぶれてぐちゃぐちゃになったケーキの箱だった。きっと激怒して出て行った二槍の母親が踏みつけて行ったのだろう、となんとなく思った。
せっかく一緒に買った誕生日ケーキだった。それに、二槍が家の前を汚した、とまた怒られるのも嫌だった。だから初心はつぶれたケーキと箱を持って帰ることにした。
とぼとぼと呆然としながら家に向かって歩く。衝撃的な出来事、とりわけ、二槍が髪を引っ張られたり、当たり前のように蹴られている光景が思い起こされる。
胃の辺りがむかむかする。奥歯を食いしばり、こめかみが膨れる。鼻息も荒くなり、眉間にしわが寄る。
むかついてくる。手に持ったケーキの箱を見る。おしゃれだと思った、家族で食卓を囲んで幸せ満開のイラストが、ケーキの残骸と砂で汚くなっていた。
楽しい、好きだ、可愛い、ずっと一緒にいたい、付き合いたい、好きになってもらいたい。そんな思いが、潰されてぺしゃんこになった。
イラついてくる。なにに? あの家庭に? 秘密を隠していた二槍に? 違う。
自分に、だ。
二槍のことを、今まで何も知ろうとしてこなかった。本当に好きなら、もっと二槍のことを見て、知ろうとしたはずだ。——ニャインを交換したとき、買い物に行ったとき、表札を見たとき、インターホンを押したとき、家族のことを聞いたとき、コンビニ店員の声に怯えたとき、透花と似てないよと言われたとき……。虐待に気づくヒントは、今までたくさんあったのに。全部、見過ごしてきた。
べたついた手で持っているケーキの箱に視線をやる。箱の側面に白と茶色のスポンジがこびりついている。中に入っていた美味しそうなイチゴのショートケーキとチョコバナナケーキは、砂利のついたクリームになっている。
おしゃれな外箱と綺麗なケーキは、タイヤに轢かれただけでぐちゃぐちゃになってしまう。なにも知ろうとしない初心と秘密を守ろうとする二槍の関係も、些細なことで壊れるものだったのだ。そのことに、壊れてから気づいた。
「好きになってもらうために、助ける? 好きになってもらうために笑わせる?」
今まで自分がやってきたことが、根本的なところから間違っていたのだと理解する。苦しんでいる二槍を知らずに、そんなことを考えていた自分にむかつく。バカバカしくて、変に笑えてくる。涙なんて、流せるはずもない。
「本当にバカだ、僕は」
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