第6話
「迷宮tubeをご覧のみなさまごきげんよう。
ダンジョンクェイクが起こった帝都ダンジョンに咲く一輪の花、暗闇に差し込む一筋の光。
そう私は!!!!
探索者学校に通う3年生プリティーキュートで可憐な完璧で究極の美少女みのみのだよっ!」
ピースサインの間から見える眼は
先程までの激闘など無かった事のように
キラキラと希望や夢に満ちていた。
(ん〜視聴者数300人超えたところで改めて挨拶してみたけど、イマイチ挨拶にインパクト欠けるよな〜こうなんか私しか勝たんしかみたいなの欲しいな)
〈みのみのみの〉
〈整備されてないダンジョン暗いしこわっ〉
〈ギルドから派遣された探索者達が20層まで制圧したみたいだよ〜〉
〈みのみのみのみの〉
〈みのみのみのうっせぇなみの〉
〈みのみのの魅力に取り憑かれたやつだ。みのみのしか喋れなくなるらしみのみの〉
〈初期症状始まっててくさ〉
平和なコメント欄に心を和ませ、新層を進んでいく。
ヘルハウンドに遭遇してからそれなりに時間は経っていて探索も進んでいたが、あれから何も起こってはいなかった。
「たっからばこ〜♪たっからばこ〜♪ありったけのたからばっこ〜♪ウハウハいっぱいたっからばこ〜♪そして私もインフルエンサ〜♪」
欲望MAXの歌を口ずさみながら軽快なスキップで進むみのり。
そんな時にT字路の別れ道を右に曲がると目に飛び込んできたのは ぽつん と道の真ん中に置かれた宝箱だった。
「んん〜怪しいですな〜」
眼を細めながらぼそっと呟く。
コメント欄は罠だ罠だと騒いでいるが自分もそう思う。
ただ罠感知魔法をおざなりにしていたみのりは事前に確かめるすべがなかった。
道を戻り、別れ道を逆に行くかそのまま行くか
普通の探索者なら悩むところだが。
この探索者は普通ではなかった。
桜坂みのりはズレていた。
「鬼がでるか、蛇がでるか。
あんまり罠魔法適性無かったし、将来仲間になる子に頼ろうと思って後回しにしてたけど、帰ったら罠感知改めて誰かに教わろうっと」
そう言いながらまるで散歩するかのように軽やかに近づき。
「おったから、おったから、金塊ザクザク♪
美少女の運舐めるなっつーの。
鍵を魔法で壊して間に手を突っ込み
グッと無理やり宝箱を開けたのだった。
目が口が舌が歯がそこにはあった。
とっさに飛び退くみのり。
みのりがいた空間に赤く長い舌の攻撃が空を切る。
宝箱の中身に予想がついていたみのりは簡単に避けてみせた。まぁ金塊を期待してなかったと言えば嘘になるが。
〈ですよね〜〉
〈みのみのみの〉
〈C級のパンドラか〉
〈みのみのなら余裕だべ〉
〈罠感知も解錠魔法も使わずに拳で解決するJKこわすぎだろwwww〉
〈みのみのみのみのみの〉
「アハハ。これまた失敗。
失敗は成功の糧っていってね。
美少女に試練はつきものなのさ。
軽口を叩きながら
放たれた矢のように
パンドラと距離を詰めるみのり
サッと腰から取り出すのはB級硬度の短剣。
上下左右からくる舌の攻撃を踊り子のように華麗にかわしていく。
流れるように接近したみのりは宝箱の中に短剣を突き立てた。
「これでおしまい。
次は金塊ザクザクの宝箱に生まれ変わってよね」
端から砂のように崩壊していくパンドラが
少し笑った気がした。
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