ひとみの輝き

ヤマシタ アキヒロ

第1話

  ひとみの輝き



  一 


汚いものを見るたびに

私の目は輝きを失う


嘘やまやかしを知るたびに

この目は白く濁っていく


世の中の欺瞞 いつわり 不公平

人間のずるさ 醜さ たよりなさ


また自分自身の 無知 

強欲 ねたみ 不寛容……


見よ あの少女の美しい目を

水底みなぞこふかく

砂地に差す光のように澄んでいる


私もかつて あのような

純なひとみを持っていた


それがいつからか

少しずつ 少しずつ

私の目は濁ってきた



  二


ある日 私は

美しい目の老人に出会った


老人は私以上に

汚いものを見てきたはずである


ふかい眼窩に

澄んだ光をたたえる

そのひとみは

いつかの少女に似ていた


あの光はどこからくるのだろう


老人のまなざしは

この狂った社会の中で

どんな貴さを見つめているのだろう


私は自らを省みた


もしも私の目に

一点の光が残っているとしたら


私のひとみは何を見るのだろう


あらゆる喧騒をかきわけ

すべての猥雑をこえて


私の疲れたひとみは

いったい何を見つめるのだろう


               (了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひとみの輝き ヤマシタ アキヒロ @09063499480

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ