五 真実

 ダリウス・デス・ダイナスの脳裏に、髪の長い古代の女戦士・神場が現われた。

『デロス帝国となる以前、デロス星系惑星ダイナス(後のデロス帝国の母星)は、ラプトの皇帝、ダイナス一世が統治する平穏なダイナス王国でした。

 ダイナス王国は、グリーゼ国家連邦共和国と親交が厚く、技術援助を受けて国力が高まり、軍事力も高まったのです。

 しかし、惑星ダイナスのディノスはラプトより凶暴で、資源と市場を求めて惑星ダイナスからデロス星系の他惑星に侵略し、第一次宙域戦争を引き起しました。


 第一次宙域戦争の結果、惑星ダイナスのディノスはデロス星系内の惑星を植民地にして自治区として支配し、温厚なラプトの皇帝ダイナス一世と対立しました。

 ラプトより凶暴なディノスはデロス星系からラプトの皇帝ダイナス一世を退け、ディノスの皇帝ホイヘウスが君臨し、かつての植民地惑星を完全支配してデロス帝国となりました。皇帝ホイヘウスはデロス帝国の領土を拡大するため、リブラン王国があるリブライト星系に軍事侵攻を始めました。第二次宙域戦争の勃発でした。


 リブライト星系の散開惑星リブラン、リブラン2、リブラン3、リブラン小惑星帯は、古代からリブラン王国の惑星です。

 リブライト星系に侵略して第二次宙域戦争を引き起したデロス帝国はグリーゼ国家連邦共和国の介入で、リブライト星系侵略を断念し、第二次宙域戦争が終結したように見せかけ、リブラン王国への不可侵条約を一方的に破棄してリブラン小惑星帯にステルス戦艦を侵攻して占拠しました。


 その後、デロス帝国軍は、リブラン小惑星帯の小惑星を、リブラン王国の散開惑星リブラン、リブラン2、リブラン3に落下させるメテオライト攻撃を行ない、自然災害の復興援助と称してリブラン王国に侵攻し、次なるメテオライトの落下に備えると称してそのまま駐留し、リブラン王国を支配したのです。

 メテオライト攻撃と軍事侵攻は今も続いています。デロス帝国軍が駐留しているリブラン王国の散開惑星リブラン、リブラン2、リブラン3、リブラン小惑星帯は、実質的にデロス帝国の支配下にあります。


 リブラン王国のラプトも、一割にも満たない少数派のディノスも、ラプトとヒューマが共存する、グリーゼ国家連邦共和国への帰属を望んでいますが、デロス帝国の支配下ではグリーゼ国家連邦共和国への帰属は不可能です。

 いずれデロス帝国は、グリーゼ国家連邦共和国の領土のモンターナ星系惑星グリーゼ13に侵攻し、さらにグリーズ星系のグリーゼ国家連邦共和国の母星主惑星グリーゼ、グリーゼ2、グリーゼ3、グリーゼ4に侵攻するでしょう。


 皇帝ホイヘウスは、惑星ダイナスがデロス帝国に昇り詰めた要因は、グリーゼ国家連邦共和国からの技術援助にあるのを忘れ、

『デロス帝国があるデロス星系と、リブラン王国があるリブライト星系、グリーゼ国家連邦共和国があるグリーズ星系とモンターナ星系、これら全宙域を一つのデロス帝国にする』

 と豪語し、グリーゼ国家連邦共和国に恩を仇で返す気です。


 貴方・ダリウス・デス・ダイナスは、ダイナス一世の末裔です。

 皇帝を倒し、かつて平穏なダイナス王国を復興させするのです』

 髪の長い古代の女戦士・神場が微笑みながら消えた。


 同時に、惑星ガイアの神殿の、巨大電脳意識・神場のディスプレイに、新たなダリウス・デス・ダイナスの思考と記憶の4D探査映像が現われた。巨大電脳意識・神場が、デロス帝国の首都オータホル近郊にある刑務所に、ダリウス・デス・ダイナスを、時空間転送して、再収監したのである。 

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