三 ある日突然

 気がつくと、ダリウス・デス・ダイナスは首から腰までと右腕をギブスで固められて病室のベッドにいた。下半身にギブスはなかった。

「気づきましたね。気分はどうですか?」

「ここは・・・、俺はどうした?」

 看護師がベッドの近くに寄り、

「女が十五階のビルの屋上から転落し、下の歩道を歩いてた貴方に激突したのです。

 一昨日、一〇〇〇時過ぎのことです。

 ビルの横の歩道を歩いていたあなたは、首と腰骨と肩と鎖骨を折り、右頭蓋骨骨折して右脳を損傷し、入院しました。幸運というか、下半身が麻痺しても勃起はします。

 ですが、医師の説明で、脚部付随で入院が長びくと分かり、付き添うと話していた恋人は去ってゆきました」

『看護師はそういうが、恋人なんかいただろうか?』

 ダリウスは思いだせなかった。


 しばらくすると見覚えある男が現われた。

『デロス帝国軍警察省長官デスロン・デル・ディノスだ。なぜ、長官がここに居る?』

 そう思うダリウスにデスロン長官は穏やかにダリウスを見つめた。

「気分はどうかね?」

「気づいたばかりで記憶がはっきりしない。それに、骨折箇所が多い割に痛みはない」

「損傷部位をサイボーグ化した。一ヶ月もあれば君の運動機能快復する」

「ところで、リブラン王国の侵攻計画は進んでるか?」

 ダリウスの口調の変化に、デスロン長官の態度が変わった。


「リブラン王国(散開惑星リブラン、リブラン2、リブラン3、リブラン小惑星帯)は住民は九割がラプトです。少数派のディノスと一部のラプトは、住民投票でデロス帝国への帰属を切望しています。グリーゼ国家連邦共和国軍がそれを阻止しようと画策してます」

「帝国軍は、リブラン王国に駐留している共和国軍を攻撃してるのか?」

 ダリウスは記憶を話したが、ダイナス一世の記憶は話さなかった。

「デロス帝国軍は戦艦からのドローン攻撃が主体です。共和国軍の敵艦を壊滅してます。

 帝国軍の戦艦は破壊されてません。兵士に死傷者はいません」

「共和国軍の被害はいかほどだ?」

「一艦隊が壊滅しました」


「グリーゼ国家連邦共和国のリサ・アンダーソン共和国議会議長を分析したか?」

「あれは、正式な指示だったんですか?」

「最近の議長と過去の議長を比べれば、どちらが若いか、判断できるはずだ」

「では、生成AIが3D映像を使って共和国軍を指揮にしてるのですか?」

「それを知るため、演説の3D映像分析しろと指示したのだ」

 そう話しながら、ダリウスは自身の話した事が信じられなかった。

『いったい、俺は何を考えてるんだ。俺はデロス帝国軍警察省警察機構局特捜部部長、兼、特捜部指揮官として警察機構局特捜部に在籍したまま、地質学省極秘調査開発局に出向して反乱を起こした。そして殺人犯に仕立てられて抹殺されかけて・・・』

 一瞬そう思ったが、その記憶はすぐさま消えた・・・。

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