悪いひとたち
@gfdlove
第1話
1
幼馴染がクズに慰み者にされていた。
それを知ったのは、高校の卒業式の日。
空は蒼く澄んでいて、とても日差しが暖かい日だった。
幼馴染とは家が隣同士だった。
小さい頃からずっと一緒だった。
高校で離れ離れになってしまったけど、朝は家の前で待ち合わせて、いつも一緒に駅まで行っていた。
…俺の大して面白くもない話にも、ケラケラと向日葵のような笑顔で笑ってくれる彼女が好きだった。
卒業式が終わったあと、幼馴染に伝えたい事があるんだって、家の近くの幼い頃よく一緒に遊んだ公園で会ってくれないかって約束をした。
「うん…分かったよ」
幼馴染の暗い声が気になった。
******
ここ半年くらい幼馴染の顔に陰りがあったのには気が付いていた。
それとなく聞いてみたけど、いつも笑ってはぐらかされていた。
「大丈夫だよ。たっちゃんは心配しないでね」
なんでもっと強く確かめなかったんだろう。
******
卒業式が終わって…
「あとで皆んな駅前のカラオケに集合なー」
「ちゃんと着替えて来いよー」
「タツヤも来るんだろー、一緒に帰ろーぜ!」
友達が誘ってくれたけど、
「悪いっ!今日は大事な約束があるんだ。」
「あー、例の幼馴染か?分かった。頑張れよ」
「振られたらお疲れ様会来いよ 。みんなで盛大に慰めてやるからさー」
「あぁ、ありがとな。でも今日で終わりって訳じゃないんだ。また遊ぼうぜ!」
楽しい高校生活だったな。
そう思いながら、急いで帰って制服のまま約束した公園に胸をドキドキさせながら向かった。
公園に着いた。約束の時間まであと30分以上ある。
ベンチに座って、青すぎる空を眺めながら思い出すのは幼馴染との楽しかった日々。
******
俺はどうすれば良かったんだろうか?
全てがもう今さらなのに・・・
あの時こうしていれば…
あの日に戻れれば…
そんな事ばかりが頭の中でずっと繰り返す。
******
約束の時間になっても幼馴染は来なかった。
最初は学校の友達がなかなか帰してくれないのかなって・・・
待ち合わせの時間から一時間が過ぎて、幼馴染の携帯に電話をかけた。
プルルルル・・・プルルルル…
二回掛けたけれど、電話に出てくれなかった。
三時間が過ぎて、携帯は繋がらなくなった。
「お客様の掛けた電話番号は現在電波の・・」
空を見上げると、
さっきまでの青空が嘘みたいに・・
真っ赤な太陽と夜空の紺色が入り混じって・・あまりにも綺麗過ぎて、
泣きそうなくらい胸が苦しかった…
1人、家に向かって歩いた…
今頃アイツらは楽しくやってるのかなぁ・・
******
吐きそうだった。
悪意に
憎しみで
どうしようもなさに
ケラケラと
幼馴染の太陽みたいな笑い声とは違う
クソ共の
悍ましい笑い声が聞こえた気がした・・・
******
家に着いたけど、中には入らずに入り口の前でずっと座って幼馴染の事を待っていた。
幼馴染は母子家庭だから、幼馴染の家の中は暗いままだった・・・
1時間以上そうしていたら、遠くから幼馴染の姿が見えた。
声を掛けようと、急いで立ち上がった。
「あっ・・」
幼馴染の声が聞こえた。
やっと会えた幼馴染は、
あの柔らかくてふわふわした栗毛色の髪は・・
ボサボサで・・
朝一緒に学校に行った時に着ていた・・
幼馴染のお母さんが今日の為に丁寧にアイロンを掛けて、ピシッとしていた制服は・・・
ぐしゃぐしゃに乱れていて・・・
どこまでも愚鈍で愚かな俺にも・・・
幼馴染の身に良くない事が起きたのであろう事は分かった…
******
人はどこまで残酷になれるのだろうか?
人の痛みが分からないのだろうか?
俺は何故、守れなかった?
何故、何故、ナゼ、ナゼ、ナゼ、ナゼ?
******
「たっちゃん、ごめんね…」
彼女の一声は、俺への謝罪だった。
何で彼女が謝る必要がある?
「お部屋に行って、話を聞いてくれるかな?」
俺は…口から何も言葉を出せなくて、ただ首を縦に振った。
彼女の部屋に一緒に入った。
「たっちゃんは、そこに座ってくれる?」
ローテーブルを挟んで、幼馴染と向き合って話を聞いた。
秋の文化祭の打ち上げでレイプされた事
その時に写真を撮られて、脅されていた事
今日、学校最後だからと…そのクソとクソの連れ二人の3人に犯された事
「ごめんね…
たっちゃんには知られたくなかったんだ。
もう付き合う事は出来なくてもね・・
ーーたっちゃんにはね、
ーーーー昔のまんまのワタシでね・・・
ーーーーーー幼馴染で居たかったの・・・
」
俺達はただ無言でひたすら泣いた。
ずっと幼馴染を抱きしめ続けながら泣いた。
一晩中、ずっと・・ずっと・・、泣き続けた。
夜が明けるまで…
******
クソ共を地獄に落としてやりたかった。
何度でも、殺して、殺して、殺して、殺し尽くしてやりかった。
こんな世界はクソだと思った。
何遍も何遍もこの世界を呪って
でも俺は、このクソみたいな世界を受け入れて
幼馴染の側に居ることを選んだ。
******
夜が明けて、部屋に光が差し込み始めた頃
幼馴染は泣き疲れたのか、ウトウトし始めて。
俺は彼女に伝えた。
「なぁ、結婚しよう。俺が一生守るから。」
「ふぇっ⁈たっ、たっちゃん?」
「今日家に帰って、親に伝える。結婚届を出しに行こう。」
「だっ、だってワタシ・・、んっ⁈」
初めて女の子にキスをした。
全力で抱き締めながら。
ずっと一緒に居て欲しいと願いを込めて。
******
親達には、俺から幼馴染の身に起きた事の全てを話した。
そして俺は幼馴染と結婚すると伝えた。
今日婚姻届を出しに行くつもりだと。
そのあと二人で警察に被害届を出しに行く事も
お互いの親達は、驚き、悲しみ、憤り、そしてやっぱり泣いた。
あとから俺の妹も部屋から起きて来て、妹には結婚することだけを伝えた。
「お兄ちゃん、良かったね!おめでとう!!
で、なんでみんな泣いてるの?嬉し泣き?」
「…あぁ、そうだな」
「うん、そうなの。」
「そっかぁ。二人共幸せになってね!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
この作品について、色々思われる事もあるかと思います。
コメントはどんなご意見でも歓迎致します。
読んだ後にやるせない気持ちになって、その感情をどこかにぶつけたくなる気持ちは非常に分かるのです。
特にこういった題材は、あるかと思います。
下記にこの作品を書きました経緯と思いを簡単に書かせて頂きますので、読んで頂けますと幸いです。
レイプを題材にした話を書く事に、正直わたしは抵抗があります。
安易に扱って良い題材ではないと思うからです。惨過ぎる犯罪だと思います。
悪意ある第三者の手によって、あるべきはずの明るい未来を蹂躙される。
書き手の技量不足だと思われるかも知れませんが、あるはずだった未来より幸せになる事が出来ないのです。(絶対だとは思いません。)
私はただただ被害者が救われて、この犯罪に対する憎しみをぶつける物語が書きたかっただけです。
なので何の捻りもありません。
被害者の独白もありません。この場合において独白はただ被害者をいたぶるだけだと思うのです。
現実世界からこのクソみたいな犯罪が無くなることを切に願います。
この卑劣な犯罪の被害者の方々には、一刻も早く救いがありますよう、願っております。
またもし被害に遭われる事がありましたら、出来ることなら泣き寝入りをせず、周りの人を頼る事をして頂きたいと思います。
必ず助けてくれる方がいると思うのです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます