第2話・平等
俺は小学校のときにバレーに出会い中学で男子バレー部に入った。
俺の胸は期待でいっぱいだった。これからどんなすごい選手に出会えるのだろう。自分はどこまで通用するか楽しみな気持ちでいっぱいだった。
だが、その期待は裏切られ、俺はこの病気のせいで部活の仲間達から迫害された。
二人一組の練習では誰も相手にしてくれずに壁を使った。
皆の俺を見る目が怖かった。悪意で溢れかえったその目はトラウマになるには十分すぎるくらいのショックを俺に与えた。
そのことに耐えきれずバレー部を泣く泣く退部した。
そこから俺は地道に一人で練習を重ねた。毎日学校から帰ると河川敷に行きボールと戯れた。
やっぱり、バレーをする時間が大好きだ。いつか仲間と試合に出て・・・なんて浅はかだな。期待はしてはいけないな。そう思うとやりきれない気持ちで胸が覆われた。俺を蔑む部員たちの中の誰よりもバレーに向き合っている自信が俺にはあった。だからこそ、生まれつきのもので線を引かれることに納得がいかなかった。
この気持ちをぶつけようにも声が出ない。実際出すことはできるが聴こえないため自分がなんて発音しているのかがわからない。紙に書いても、何をしても収まることのない負の感情を見過ごしながら俺は受験生になった。
志望校を決めなければいけないときどうしてもバレーを諦められずにいた俺は真っ先にバレーの強豪校がいいと母に申し出た。俺のバレーに対する熱意を知っている母は
「あなたの人生なんだからあなたが決めなさい」と伝えてくれた。そして俺が決めたのは県内でトップクラスの強さを誇る国山高校に決めた。
国山高校は私立の高校で完全寮制だ。その点を両親は懸念していたが、大丈夫だと押し切った。
そこから入学式を経て、無事バレー部に入部した。
そこでの扱いは良くも悪くも平等だった。
実力主義。
耳が聞こえなかろうが、実力がなければ球拾いに回された。指示も指導も何一つ特別扱いなんかされなかった。
逆を言えば実力さえあれば耳が聞こえなくとも試合に出られるし練習にも参加させてもらえる。
俺はずっと1人で自主練習を積み上げてきたんだ。同期の中では頭一つ抜けて基礎が固まっていた。すぐにコーチから声がかかりレギュラーメンバーの先輩達と練習するようになった。
ようやく俺の時代が来たんだ。心のなかでガッツポーズをしながらそう思った。
だが、浮足立っていられたのもつかの間、そこでの練習の過酷さは同期たちとの練習とは比にならないほどのものだった。
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