第52話

宿は20日で取ってあったのだが、それを過ぎても王城から連絡が来ないので更に20日取ることに。


そして宿を取ってから10日、つまり王都に来て1ヶ月後、ようやく王城から連絡が来た。


王城に向かい部屋へと通されるとそこにはロベルト・リーベルがいた。


「き、貴様あのときの!」


「どうも」


そしてもう1人、こちらは初めて見る人だな。


「落ち着けロベルト、初めまして、私がガドゥル王国国王、ガゼル・エル・ガドゥルだ」


「ガゼル様、でいいですか?」


「あぁ、そう呼んでくれ、君のことはマーカスの手紙で読んだよ、なんでも不思議な商品を売っているんだってね」


「はい、この国でもその商品を売れたらとも思ったのですが…」


「マーカスからの手紙ではその商品のおかげで民たちも喜び、兵士、特に女性兵士の士気が上がり、それに次いで男性兵士の士気も上がったとある。それほどの商品を売ってくれる、国にとって大事な存在をあろうことか邪魔をするものがいた、と」


「ぐっ…」


「えぇ、とても大変でした、近隣の街では商売が出来なかったので王都に来ましたが、商売は信用が大事です。ですがその邪魔をしてきた辺境伯…ゴホン、貴族のおかげでこの国での信用はガタ落ちです。これではもうルベルに帰るしかなく、どうしようかと思いましたが、マーカス様と親睦の深いガドゥル王家の皆さんにこの商品が届けられないのは誠に口惜しく、相談させてもらいました」


「ぐ、うぅぅぅ!!!」


「だ、そうだが、リーベル辺境伯よ、そのダイチの商売を邪魔した貴族のことを知ってはいないか?」


「わ、私は…」


「周辺の街の領主にそのような無理強いを出来るなど、よほど位の高い、それこそ辺境伯か公爵ほどの地位の者でないとそんなことできないと思うのだが、どうだね?」


「わ、私…私で、す…」


「今なんと?」


「私が、そこの商人の、邪魔を、しました…」


「なんと!貴殿であったか!ダイチよ、すまない、どうやら犯人は見つかったようだ」


「そうですね、良かったです」


「して、ダイチはこのガドゥルで商売が自由に出来るとなったらどうする?」


「そうですね、やはり1度信用が落ちてしまった以上この国での商売は少し考えさせてもらいたいですね」


「そんな!ルベルの国力が上がったのは貴殿のおかげと聞いている、どうかこの国でも商売をしてくれないだろうか」


「うーん…」


しばらく沈黙が続く。


「………かった…」


「え?」


「すまなかった…」


「すまなかった?」


「くっ…!申し訳ございませんでした!全て私が悪かった!だから!どうかこの国でも商売をしてほしい!」


「いいですよ」


「どうか、どうか…え?」


「だから、いいですよ、俺は謝罪が欲しかっただけですから」


「ほ、本当にいいのか?こんな、こんな私を許してくれるのか?」


「謝罪をするってことは反省したってことでしょう?ガゼル様はどうですか?」


「うむ、私としてはダイチがこの国で商売をしてくれるならそれに越したことはない。リーベル辺境伯への処罰はまた別だがな」


「だそうです、流石に爵位を剥奪するとかはないですよね?」


「あぁ、謝罪も何も無くただ権力を振りかざすだけなら子爵に下げることも考えていたが、反省するならよし」


ということで、今回の一件はこんなところで終わった。


リーベル辺境伯への処罰は1ヶ月、王都で無償のボランティアをすることに決まったらしい。


心を入れ替えて、民のために働いてくれるといいな。

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