第37話
あのワンダとかいう貴族が来てから数日、特に何事もなく過ぎていった。
あれが諦めることは無いと思うから、なにかしらやってくるとは思うんだけど…。
そんなことを思っていたらやって来ましたガラの悪そうな人たちが。
店の前で「この店の商品には危険物が含まれている」だの「粗悪品だから買うな」だの言っている。
なんだか見た事のある光景だな…。
しかし、うちの商品の良さを知っている人たちは「なんだこいつら…」みたいな目を向けながらうちの店に入ってくる。
どうやら効果はそこまで無いみたいですよ。
それが分かったのかガラの悪い人たちはしばらくすると去っていった。
ここに店を構えて、営業し始めてもう5ヶ月近いからな、常連さんがそんな言葉に耳を貸すはずがないだろう。
次はどんな手でくるかな?ちょっとワクワクしている。
ある日、マリアさんが慌てて店へと来た。
どうしたんだろう?
「ダイチさん、大変です!この土地を返せという貴族がやってきて」
うわ、さすがにこれは対応しきれないぞ。
ここは大人しくマーカス様に相談しますか。
ということでやって来ました王城。
アポ無しだけど大丈夫かな?と思っていたら訓練中の騎士の一団に出会った。
そこにはダンガンさんがいた。
「お?ダイチじゃねぇか、どうしたんだ?」
「実はちょっと困ったことになりまして、マーカス様に相談があるんですけど」
「困ったこと?どんなことだ?」
俺はワンダという貴族に店を乗っ取られそうになっていることを伝えた。
「そりゃ大変だな、俺の方から王に言っておくから安心しな」
「すみません、よろしくお願いします」
それから数日後、お客さんであるメイドさんの間でこんな噂が流れた。
とある領主の貴族がこの国では禁止されている奴隷売買や税金の横領、更には平民の女を無理やり手篭めにするなど、様々な犯罪をして爵位剥奪、奴隷落ち、強制労働の刑に処されたと。
その噂が流れると同時にワンダからの嫌がらせが治まった。
きっとマーカス様がやってくれたんだろう。なんかお礼しに行かなきゃな。
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ある日、私は王であるマーカス様に呼ばれた。
なんの話だ、まったく、私は今あの金の成る木である店を手に入れるのに忙しいというのに。
部屋に入るとそこには数人の騎士と王であるマーカス様がいた。
「遅くなり申し訳ありません」
私は席に座る。
「よく来たな、ワンダよ、さて、話というのは余が贔屓にしている商会にそなたが手を出していることなんだが」
「…は?」
贔屓にしている商会…?私が手を出している…?
ま、まさか、あのカネダ商会が!?
「さ、さて、なんのことかさっぱり分かりませんな」
「そうか、まぁよい、今第3騎士団をそなたの家に向かわせている、なんの証拠も出なかったのなら謝ろう、しかし、証拠が出たときは…分かっているな?」
「お、王よ!それはあまりにも横暴ではありませんか!?」
「そなたがやっていることは横暴ではないと?」
「ぐっ!」
私は今すぐにでもこの部屋から、いや、この王都から逃げたくなった。
しかし、部屋の扉はすでに騎士によって固められ出られなかった。
「まぁ落ち着けワンダよ、証拠が何もなければそなたの潔白は証明されるのだ、それともなにか?探されるとまずいことでもあるのか?」
「ぐ、ぐぅぅぅぅ!!!」
しばらくすると部屋の中に騎士が1人入ってきた。
「王よ、こちらを…」
「そ、それは!」
それは違法な奴隷売買の契約書だった。
お、終わった…。
「なるほどな、まさかこんなことをしていたとは、奴隷売買はこの国では違法だと知らなかったのか?」
「!は、はい!知りませんでした!」
「そんなわけがあるか!貴様!ふざけおって、貴様のやっていることは犯罪だ、軽い刑で済まされると思うなよ」
「ひ、ひぃぃぃ!」
その後、私は爵位を剥奪され、奴隷として強制労働の刑に処された。
たとえ手が無くなろうと、足が無くなろうと
この鉱山から逃げることは出来ない…。
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