第36話
次の日、カネダ商会初営業日だ。
どのくらいお客さんが来るかは分からないが、マーカス様が宣伝を手伝ってくれてるんだし、心配することはないだろう。多分。
基本どこの店も朝10時から夕方5時までが営業時間なので俺もそれに倣って同じ営業時間にする。
そして朝10時、開店の時間になった。
店の前には…なんと!誰もいない。
まぁ仕方ない、露店のときも人から人への噂や口コミで成り立ってたし、まだまだこれからだ。
「誰もいないですねぇ」
「まぁこんなもんさ、宣伝もそんなにしてないしね」
「知り合い何人かに声かけたんで、そのうち来ると思うんですけど」
「そうなの?ありがたい」
その言葉通り、しばらくすると従業員たちの知り合いが来店してくれた。
だが、どの人もそんなに高額の買い物はせずに帰っていく。
でもここから人伝に広まってくれればいいかな。
そうしてお昼を過ぎたあたり、今度はメイドさんの姿が増えてきた。
これはマーカス様効果かな?
メイドさんたちは色々と買っていってくれた。
従業員たちも商品の説明をちゃんとしてくれている。
うんうん、いい感じだな。
そのまま今日の営業は終了。
「貴族の方の買い物が多かったですね」
「マーカス様が色々と宣伝してくれたみたい」
「?マーカス様とは?」
「この国の王様だよ」
すると従業員たちが驚く。
「お、オーナー王様とお知り合いなんですか!?」
「知り合いというか、店を出してほしいって頼まれたからこの店やってるって感じかな」
「えぇ…私とんでもないお店に雇われちゃった…?」
「まぁ貴族様を相手にすることはないから安心しなよ」
そう、貴族が利用すると言っても基本はその貴族に雇われているメイドや執事が買い物に来る。
なのでご本人登場!なんてことは普通無いのだ。
そう、普通なら無いはずなのだ。
それは店が軌道に乗り始めた頃に起こった。
従業員たちも仕事に慣れたので、そろそろ冒険の旅に出ようかな、と思っていたとき。
「オーナー、ワンダという貴族の方がオーナーに話があると来ているのですが」
「貴族様が?直接?」
「はい」
なんだろう、とりあえず行ってみる。
1階に降り、外を見ると豪華な馬車が停まっていた。
そして明らかに私は貴族である、みたいな格好をした人が1人。
あれ?なんかあの貴族見たことある気が…。
「貴様がこの店のオーナーか」
「はい、ワンダ様、でよろしいですか?」
「うむ、ん?貴様どこかで見たような…」
俺もどこかで見たような…。
「「あ!」」
「貴様!我が領地から逃げ出した商人!」
「ヌーベルの街の領主!」
そう、いつだか商品を見せたらタダで寄越せと言い、代金を払えと言ったら無理やり外に出された、あの時の領主ではないか。
「貴様、こんなところで店を構えていたのか、ちょうどいい、この店の権利を全て私に寄越せ、商品も、商品の仕入れ先も全て教えろ」
言うと思った、絶対こいつならこういうことすると思った。
「無理です、お断りします」
「そうか、では…今なんと?」
「お断りします」
「き、貴様!私を誰だと思っている!シーフィル男爵家当主、ワンダ・シーフィルだぞ!」
「どこの誰だろうと権利を渡すことはありませんから」
「ぐぬぬ!貴様!覚えておけ!」
そう言い捨て馬車に乗り込み去っていった。
出来れば二度と来ないでほしい。
「お、オーナー、大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫、なにかしてきたらこっちにも手はあるから」
さて、向こうはどんな手で来るかな。
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