第27話

「ダイチはまだ王都にいるのか?」


「そうですね、宿があと8日ほど残っているんで、それまではいますね」


「そうか…ときにダイチよ、そのギフトの力を使って店を開かないか?」


「店、ですか?」


「あぁ、今までの露店と違ってちゃんとした店を構えるんだ」


「いやー、今はそんなこと考えてないですね」


「もし店を開くと言うなら王家が後ろ盾をしてやるぞ?」


「うーん、それでも俺はのんびり暮らしていたいんで」


「店のことは雇ったものに任せてダイチはのんびり出来ると思うが、それでもか?」


「なんでそんなに押せ押せなんですか?」


「…ダイチに王家専属の商人になってもらいたくてな」


ぶっちゃけたなマーカス様。


「マーカス様も知っている通り、俺は異世界の人間ですし、この商品は異世界のものです。たった1人のために使うギフトの力ではないと俺は思っています、それが例え王様であったとしてもです」


「…そうか、つまりダイチはギフトの力、異世界の商品を広めたい、というわけか」


「まぁ広めると言っても全てではないですけど」


「そのダイチの意思を尊重するとしたら、店をやってくれるか?」


「そうですね、まぁ店をやること自体に否はありませんよ、ただ俺は自由に動きたいです、他の国に行ったりもしてみたいですし」


「…そうか、分かった。ダイチは自由に動いてくれていい、王家専属の話も無かったことにしよう、店を構えて異世界の商品を売る、私はダイチの売るものを民たちに広げる手伝いをしよう、これでどうだ?」


「分かりました、そういう話なら受けます。ただ、俺が自由に動くとなったら商品の仕入れはどうするんですか?」


「宝物庫に中が繋がった収納袋があったはずだ、それを使おう」


「中が繋がった?」


「うむ、例えば1と2の収納袋があるとしよう、1の袋にパンを入れると2の袋にもパンが入っている、ということだ」


「あぁなるほど、だから中が繋がった、なんですね」


「うむ、それを使えば店の仕入れの心配はないだろう」


「あと心配なのは従業員が来るかどうかですね」


「そこは…やってみないことには分からないな」


「まぁやると決まったからには全力ですよ」


「そうだな、そう言ってもらえると助かる。店の土地や開業資金はこちらで出そう」


「いや、マーカス様を信用していない訳ではないですが、もしなにかあったときにここは王家の土地だーとか、開業資金全部返せーなんて言われたらまずいと思うんで、自分でローン組んでやりますよ」


「いやしかし…」


「マーカス様には売る商品や値段決め、宣伝をやってもらいたいんです」


「…そうか、分かった」


「あ、でも貴族と揉め事になりそうだったり、なったときは助けてもらえるとありがたいです」


「それはもちろんだ」


「では取引成立ということで」


「あぁ」


お互いに握手をする。


その後、もしなにか必要な事があったらと王家のメダルを貸してもらった。


返すのは商売が上手くいった後ででいいらしい。


さぁ、のんびりしたい、なんて言ったのに忙しくなりそうだ。


まずは店を開く場所取りだよな、商業ギルドに行くか。


マーカス様と別れその足で商業ギルドへ。


商業ギルドの中はいつも通り、忙しそうだ。


俺の番になり受付嬢に話す。


「開業をしたいんだが」


「土地はお持ちですか?」


「いや、どこか空いてるところがあったらそこを買うか借りるかしてやりたい」


「分かりました、今担当のものを呼びますね」


そう言い別の人に何か言うとその人が上の階へと行った。


王都のギルドの受付嬢は受付から離れられないんだな。


しばらく待っていると上から1人、女性が降りてきた。


「あなたがダイチさんですか?」


「はい、そうです」


「では部屋で詳しい話を聞きましょう」


そうして2階の部屋へと案内された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る