第16話

「それで、ダイチ、その商品を購入出来る、というのはどこまで出来るんだい?」


「どこまで…ほぼ全てと言って差し支えないかな、と」


「ほう!では髪や身体を洗う石鹸なんかも…」


「ありますよ、多分」


俺はラ・ヴェールを開きボディソープ、シャンプー、コンディショナー、トリートメントを探す。


どれでもいいが、出来るだけお高いものを…これでいいか。


購入すると目の前に箱が落ちてくる。


「うぉっ!?なんだこれは!」


「これが俺のギフトです。その中にボディソープ、シャンプー、トリートメント、コンディショナーが入ってます」


「と、とり…なんだって?」


「…奥様を呼んだ方が早いのでは?」


「いや!ダメだ!これはサプライズプレゼントにするんだ!」


さいですか。


「まずはボディソープ、身体を洗うものですね、次にシャンプー、髪の汚れを取るもの、次にトリートメントで髪の内部に美容成分を届け、最後にコンディショナーで髪の外側をコーティングするんです」


「…なるほど?つまりだ、ボディソープは身体に、髪はシャンプー、トリートメント、コンディショナーの順番で使えばいい、ということだな!」


「まぁそうですね」


「全部でいくらだ?」


「各2980円なので11920円ですね」


「えん…?」


「あぁすみません、こっちの世界の通貨の単位です。11920ダルですね」


「なんと、安いな」


「そうですか?こっちの石鹸はどのくらいするんですか?」


「ひとつ大体8000ダルはする」


ひえぇ!たっか!


「だが、だからと言って安く売れとは言わん、そうだな、4つで8万ダル出そう」


4つで8万…ひとつ2万!?


「まだ効果も分からないのにそれは高すぎでは…」


「なに、効果が無かったら返金させてもらうさ、それにどうせこの後手に入れるとなったらもっと高くなるだろうからな、ひとつ2万でも安いほうさ」


「そう…ですか?それならありがたく受け取っておきます」


今俺はバイクを買うお金が欲しいのだ、こんなところで「いやいや、でも」と言う気持ちは一切無い!


「それなら追加で詰め替え用のものも渡しておきますね」


先ほどのシャンプーの詰め替えを4つ買い渡す。


「なるほど、詰め替えが出来るのか!これはすごいな、シャンプーのほうもすごいと思ったが、このボトルもなかなか…」


アレスさんがボトルをジッと見つめる。


「…あの」


「あぁすまない、まだお金を渡していなかったね」


アレスさんがパンパンと手を叩くとセドさんが箱を持ってきた。


箱を机に置くとアレスさんが箱を開ける。


中には硬貨がたくさん入っていた。


「まず食器などの代金だな、半金貨が2枚と銀貨9枚、そして追加で頼んだシャンプー類、銀貨8枚、そして更に追加でもらったシャンプーの詰め替え、これも銀貨8枚、合計で45万ダルだな、受け取ってくれ」


「では、ありがたく」


俺はもらったお金を収納に入れた。


「それではこれで取引終了だ、またなにか縁があったら来てくれ」


「はい、と言ってももうしばらくしたら別の街へ行くと思いますが」


「なに?それは本当か?」


「えぇ、売れる商品はもう無さそうですし」


「そうか、では街を去る前にまたここに来てくれ」


「分かりました、それでは」


「あぁ」


そうして俺は領主邸を後にした。




次の日からも屋台で商品を売る。


しかし、人が来ない。


うーん、そういえばハンガーを売り忘れていたな。


今更だが出しておこう。


ラ・ヴェールからハンガー30本組(1980円)を50個購入し並べる。


値段は…1本200ダルくらいかな。


すると前に来たお客さんが来た。


「あら、新しい商品?」


「えぇ、服の洗濯物をこうやって袖を通して干すものになります」


「いいわね、5本ちょうだい」


「はい、1000ダルです、ありがとうございました」


その後は10本ほどしか売れなかったが、次の日から瞬く間に売れていった。


やはり口コミ、噂は最強か。

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