第15話

次の日のお昼頃、俺はいつもの場所にいた。


すると向こうの方から馬車がやってきた。


もしかして俺あれに乗るのか?


馬車が俺の前で止まり、馬車の扉が開いた。


「お待たせしました商人様、中へどうぞ」


と執事さんに言われた。


俺は馬車に乗り込み領主邸へと向かうことになった。


「執事さん…でいいですか?」


「私のことはセドリック、セドとでもお呼びください」


「じゃあセドさんですね、俺はダイチって言います、俺礼儀とか分からないんですけど、大丈夫ですか?」


「領主様はお優しい方なので、あまりにも失礼な態度でなければ怒ることはありませんよ」


「そうですか」


よかったぁ、俺はそこだけが心配だったよ。


そのままセドさんと世間話をしながら領主邸に向かう。


ちなみに収納のことについてだが、この世界には収納袋と呼ばれる収納の下位互換の様な魔道具がある。


俺はそれを利用して収納の存在を隠すために少し大きめのバッグを買った。


今回はそれに商品を入れている、という設定で話を進める予定だ。


セドさんと話をしていたら領主邸に着いたようだ。


「ダイチ様、お足元にお気を付けてお降りください」


馬車を降りると見えたのはめちゃくちゃでかい屋敷だった。


これが領主邸か、すごいな。


「それではダイチ様、私の後についてきてください」


そう言われセドさんの後をついていく。


屋敷の大きな扉が開く。


エントランスひっろ、なんだこれ、上にはシャンデリアのようなものまである。


「ダイチ様、こちらです」


中の広さに驚いて止まっていた。セドさんの後をついていく。


通されたのは2階の部屋、ここで待っているようにと言われた。


しばらくすると扉がコンコンと鳴った。


扉が開き入ってきたのは40代くらいの茶髪イケおじだった。


俺は立ち上がり挨拶をする。


「初めまして、ダイチと言います」


「初めまして、私がこのラライエの街の領主、アレス・ゼンフィールドだ」


まさかの領主さんでした。


「ダイチは最近商人を始めたそうだね」


「はい、村から出てきて初めての街でしたが、商人に寛容でとても良かったです」


「ふむ、村から出て初めて、か。それで、商品はあるのかい?」


「はい、こちらのバッグに入っています」


「それじゃあ早速だが出してもらえるか?」


「はい」


俺はバッグに手を入れ、さもバッグから出しているかのように収納から商品を取り出していく。


「食器とスプーン、フォークのセットが100、コップが50、洗濯バサミが200、これで全部です」


「ふむ、ダイチくん、少しいいかね?」


「はい?」


「君、収納スキル持ち、だね?」


え!?なんで分かったんだ?上手く隠していたつもりなのに。


「はっはっは!そんな驚くことじゃないよ、魔道具の収納鞄と収納スキルは魔力の流れが違うからね、魔力の流れを見る冒険者なんかにはその手は通用しないよ」


「そう、だったんですね、ありがとうございます」


「まぁ収納スキルなんて隠したくなるのは仕方ないさ、それに君にはまだ秘密がありそうだし」


ギクッ、ラ・ヴェールのこともほとんどバレていそうか?


「ダイチはポーカーフェイスが出来ないようだね、言ってしまうと、昨日露店の終わり際に大量の商品を注文、次の日には準備出来ているなんておかしいと思わないかい?」


「た、確かに言われてみればそうですね…」


「私も根掘り葉掘り聞くつもりはないさ、この商品さえ買えればね、さて、これ全部でいくらだい?」


「全部で29万ダルです」


「ふむ、なかなか安い値段でやっているね、製造コストも運送コストもかかっていないような、利益の無さそうな値段で…」


ギクギクッ!やばい!ラ・ヴェールがバレるか!?


「ふふっ、すまない、根掘り葉掘り聞くつもりは無いと言った手前気になって仕方ないのさ、それで?どんなギフトなんだい?」


うん、バレてーら、どうしよう、言うか?


「あの、内密にしてもらえますか?」


「それはもちろんだ、と言っても王に命令されたらその限りではないが」


「それはもう仕方ないです。俺のギフトは商品を購入出来るというギフトです」


「なるほど、しかしこの食器、とても出来が良く、柄もついている。その値段で利益が出る、ということはこの食器はそれ以上に安いという事だ。この食器はどこで作られ、売られているんだい?」


ぐっ、アレスさんめちゃくちゃ核心ついてくるなぁ。


まぁここまできて隠し通すのも無理があるか。


「実は、俺この世界の人間ではないんです」


「ほぉ?渡り人か」


「!この世界に他に異世界から来たって人がいるんですか?!」


「あぁ、と言っても文献に残っている程度だがな、確かに異世界から来た人間がいた。その者は渡り人と呼ばれ異世界の様々な知識を与えたと言われている。魔道具はそのひとつだとも言われているな」


俺の他にも異世界から来た人がいたのか。


「して、状況から察するにダイチのギフトは異世界の商品を購入出来る、ということであってるかな?」


「えぇ…すごいですねアレスさん、そこまで分かってしまうなんて」


「伊達に領主を務めていないさ、はっはっは!」


頭のキレるイケおじ、かっこええな。

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