第35話 暗黒龍
《side トール》
僕は今までで一番のピンチを迎えていた。
目の前で、魔王がその姿を変え始めた。
彼の体を覆う闇のオーラが濃密になり、まるで肉体が内側から膨張していくかのように、その輪郭が不気味に歪んでいく。
肌は黒く変色し、骨が軋む音が響き渡る中、巨大な翼が背中から生え、鋭利な爪が地面に深々と食い込んだ。目の前の存在は、かつての魔王とは全く異なる、凶悪で圧倒的な力を放つ者へと変貌していた。
「英雄トールよ、我が名を忘れるな…! 我こそが暗黒龍バカリス! かつての魔王にして、今やこの姿で世界に絶望をもたらす者だ!」
バカリス――その名を口にした瞬間、彼の体から放たれる闇のオーラがさらに強烈なものとなり、大気が一気に重苦しく変化した。
地面は震え、周囲の風景が歪んで見える。目の前の存在が、自らを超越した力を手に入れたことを、僕は嫌でも実感させられた。
僕はその圧倒的な威圧感に一瞬息を呑んだが、すぐに拳を構え直した。
目の前にいる彼は全てを捨てて、暗黒龍となることで、最後の力を振り絞り、僕を倒そうとしているのだ。
「暗黒龍バカリス…たとえお前がどんな力を持っていようとも、僕はこの世界を守るために戦う!」
僕の言葉に反応するかのように、バカリスが大きく翼を広げた。
その翼は空を覆い隠すほど巨大で、影が地面にまで及ぶ。その影の中で、闇がさらに濃密になり、まるで重力に引き込まれるかのように周囲の空間が歪み始めた。
「僕も仲間たちのおかげで力を使えるようになったんだ」
3人とキスをするたびに、僕の股間は光輝く。
そんな僕たちにバカリスは喉の奥から咆哮を上げ、その口から黒い炎を吐き出した。炎は地面を焼き尽くし、その熱気が一気に僕の周りを包む。
僕はとっさに拳を振りかざし、その黒い炎を弾き返したが、衝撃で体が後退する。
「ぐっ…!」
強烈な力に押されながらも、僕は必死に踏ん張った。
このままでは押し切られてしまう。だが、バカリスの攻撃はまだ終わらなかった。
巨大な爪が、空を切り裂いて僕に向かって振り下ろされる。
僕は素早く身をかわし、反撃の機会を窺ったが、彼の動きは予想以上に素早かった。次々と繰り出される攻撃に、僕は圧倒されていった。
「こんなものか、英雄トールよ! お前の力は所詮、この程度のものだ!」
バカリスの嘲笑が響き渡る。その言葉に、僕の心に焦りが生まれた。彼の力は確かに強大だ。だが、それ以上に覚悟と意志がこの戦いを支えている。
「違う…僕は負けない!」
僕は心の中で叫び、全身に力を込めた。これまでの戦いで得た全ての力を、今ここで解放する。僕は拳を高く掲げ、股間に光を集めた。
「これで終わりにする…!」
股間に集まった光が眩いばかりに輝き、周囲の闇を切り裂く。
バカリスはそれを見て再び炎を吐き出そうとしたが、その瞬間、僕の股間から放たれた光の放流が彼の体を貫いた。
「ぐわぁぁぁぁ!」
バカリスの咆哮が響き渡り、その巨大な体が崩れ落ちる。彼の闇の力が一瞬にして霧散し、その姿は再び魔王だった頃の姿へと戻っていった。
「まさか…この私が…」
バカリスは最後に一言つぶやき、完全に力を失ってその場に崩れ落ちた。僕は息を整えながら、彼の最後を見届けた。
しかし、そこで終わりではなかった。
バカリスの体が地面に崩れ落ちると、その周囲の空間が再び歪み始めた。まるで闇が凝縮されるように、彼の体から黒い霧が立ち上がり、それが集まっていく。
「まだ終わらせるものか…! 我は…魔王バカリス…世界に…絶望を…!」
その瞬間、バカリスの体が再び膨張し、今度はさらに巨大な姿へと変貌を遂げた。
暗黒龍からさらに進化した姿、それはまさに"真なる暗黒龍"と呼ぶにふさわしい、恐るべき存在だった。
彼の目が血のように赤く染まり、体全体が黒い炎で包まれる。まるで地獄の業火そのものが具現化したかのような、圧倒的な存在感だった。
「なぜ、まだ…!」
僕は再び拳を構えたが、その目の前に広がる闇の力に圧倒されそうになる。バカリスの力は限界を超えている。これが、魔王としての最後の抵抗なのか――。
「今度こそ、お前を…葬る…!」
バカリスが再び口を開き、今度は闇そのものを吐き出した。
黒い闇が周囲を飲み込み、空間そのものがねじれていく。それはまるで、世界が崩壊していくかのような感覚だった。
だが、僕はその闇に飲み込まれることを拒んだ。全身に防具をパージして、全裸で光を放つ!!!
「僕は…負けない! みんなを…僕が守るんだ!」
その瞬間、全身が再び輝きを放ち、光が闇を切り裂いた。
バカリスの攻撃が僕の周囲で霧散し、彼の体が再び崩れ落ちていく。
「ぐぅぅ…!」
今度こそ、バカリスは完全に力を失った。
彼の体が地面に崩れ落ち、闇が霧散していく。その瞬間、周囲の空間が元に戻り、闇の力が完全に消え去った。
僕は深く息をつき、拳を下ろした。
目の前には、かつての魔王だった者の姿が、ただの朽ち果てた肉体となって横たわっていた。彼の全てを懸けて挑んできたこの戦いが、ついに終わったのだ。
「バカリス…」
僕はその名をつぶやきながら、彼の最後を見届けた。かつての魔王は、今やただの朽ちた肉体となり、闇の力と共に消え去った。
「これで…終わりか…」
僕は全裸を隠すためにマントを羽織り、ゆっくりと歩き出した。
戦いは終わり、闇は消え去ったが、心の中に残る何かが消えない。
バカリスが最後まで捨てなかったその意志と覚悟が、僕の心に重くのしかかっていた。
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