第15話 絆?
《sideザイール》
やっちまった。
いや、異世界にやってきて羊の獣人っぽいツノとフワフワの毛並みに、グラマラスの美女が夜這いをかけてきたら、手を出さない男っている?!
絶対いねぇーよな!?
俺には無理だ。
あの日、奴隷商店で出会った日に、まさかこんな状況に陥るとは思っていなかった。あの閉鎖された瞳は自由を求めているように感じた。
ルナが魔族であることを知っていたが、俺はその事実を気にしなかった。
彼女の体を回復させ、共に旅をする中で、彼女が少しずつ心を開いてくれるだけでよかった。
少しずつ体を回復させて、心も回復させて、無口な態度が柔らかくなって、慣れてきたところで奴隷から解放して、自由にしてもよかった。
何よりも無口で、付き従ってくれるルナの静かな存在が心地よく感じるようになっていた。
だが、彼女が成長し、グラマラスな美女に変わるとは予想もしていなかった。
「あれは反則だろ」
「うんん」
朝日が差し込む部屋の中で、気持ちよさそうに寝息を立てるルナ。
夜にルナが俺のベッドに潜り込んできたとき、その体の変化に驚きを隠せなかった。彼女の成長した体が俺に触れるたびに、理性が吹き飛びそうになった。
もうどこまでも沈み込んでいくんじゃないかと思えるほどの爆乳に、幸せとしか感じられないフワフワな髪質。ムチムチ太ももとか最高かよ!
「ザイール様……」
ルナの瞳が開いて甘えるような感情が、俺の心を揺さぶる。
彼女が俺に対して抱いている気持ちが伝わり、俺もまた彼女を強く求めてしまった。
俺は彼女を抱きしめ、理性を失ってしまった。
「起きたのか?」
「はい」
返事をしたルナはそのまま俺の腰へ抱きついてきた。
大きな胸が足に当たって柔らかい!
夜は、彼女の純粋な気持ちを汚してしまったのではないかという思いが胸を締め付けていたが、どうやら杞憂だったようだ。
ハァー、ザイールが女好きだと言っていたが、俺だって女性が好きだ。
最上級の女性が、俺を求めてくれて、断る気にはなれない。
俺は彼女を大切にすることを心に誓った。
「ルナ、これからは絶対にお前を大切にする。俺が守るからな」
彼女の頬にそっとキスをし、その決意を新たにした。
「嬉しいです! 私は一生、ご主人様の側にいます」
「いいのか?」
「はい! ザイール様こそが、最強です!」
旅は続くが、これまでとは違った雰囲気になるだろうな。
俺の脳内は、桃色パニックだ。
今後のルナとの付き合い方は、もう遠慮できなくなる。
「ご主人様」
「んんん」
考え事をしているとキスをされた。
ああ、ダメだな。もう惹かれ合う、心を通わせてしまう。
俺は盛大に寝坊した。
「随分と遅かったですね」
昼過ぎに食堂に降りていくと、レイナにそう言って声をかけられた。
「待たせて悪いな」
「いえ、それは良いのですが……ふむ、そういうことですか」
「えっ?」
「私はサキュバスですよ。匂いでわかります」
「うっ!」
「別に隠すことではありません。魔族が強者に惚れるのは自然なことです。ですが、それを受け入れるのかは、男性次第でしょ?」
レイナには全てがお見通しすぎて凄く恥ずかしい。
だが、魔族である彼女の方が、ルナのことはよくわかっているだろう。
ルナは俺の後で腕を組んでいる。
「そんなことよりも、ザイール様、今日はどこに行くんですか?」
「今日は少しのんびりしようか。美味しいものでも食べに行こう」
俺たちは市場で食べ物を探し、路地裏の小さなカフェで休む。
ルナが嬉しそうに笑う姿を見るたびに、俺の心も明るくなった。
そんな中、レイナが俺たちを見てうんざりした顔をする。
「ザイール様、ルナとすごく仲が良さそうね」
「あ〜、まぁ初めての彼女ってそういうもんだろ?」
「ほう、勇者は色情魔だと噂を聞いておりましたが、どうやらガセネタだったようでうすね」
ザイールは他の女性に手を出したのかもしれないが、俺は魅力の魔眼も使ってないし、誰にも手を出してないぞ!
彼女の言葉には、微かな棘が感じられた。
だが、俺は気にしない。
「まあな、ルナは大切な存在だからな」
レイナの表情が一瞬曇ったが、すぐに笑顔を作り直した。
「そうですか。それなら私も参加させてもらいたいですね」
「えっ?」
レイナの発言に、俺はモテ期が到来したようだ。
マジか! 俺って魅力を魔眼を使っても、最底辺の扱いを受け続ける。
喜ぶ俺の横で、ルナが立ち上がった。
「うん? ルナ?」
「表に出ろ」
「えっ?」
「いいでしょう! 魔王軍幹部サキュバスのリリスに挑むとは馬鹿だと思い知らせてやる」
いやいや、こんなところで、自分の素性をバラしてんじゃねぇよ。
てか、ルナが成長して、好戦的になってる!
「ご主人様、待ってて」
「ザイール様、勝ってあなたを手に入れます!」
いやいや、どうして俺を取り合って争いになってるんだよ?!
ちょっと嬉しい!
てか、そんなことで争うなよ。
「ちょ」
「ご主人様、これは女の戦い」
「そうです! 黙って見守ってください!」
「はい!」
二人から凄まれて、俺は黙って見守ることにした。
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