第13話 英雄

《sideトール》


 僕らは辛くも黒霧のレヴァナントを追い払うことができた。

  

 勇者ザイールがいなくても、なんとかやっていけるかもしれない。

 そんな後押しをしてくれるように王様から今回の報酬を渡したいと呼び出しを受けた。


 王城の謁見の間に立つ僕は、緊張と誇りを胸に秘めていた。

 黒霧レヴァナントを追い払った功績が認められ、王様からの褒め言葉を受けるために、ここに立っているのだ。


「トール、よくやった。黒霧レヴァナントを追い払ったことは、王国の民にとって大きな安心をもたらした」


 王様は微笑みながら僕に言葉をかけてくれる。

 その優しさと感謝の気持ちが伝わってきて、僕も嬉しくなる。


「ありがとうございます、王様。皆の力を借りて、なんとか追い払うことができました」


 僕は頭を下げて答えた。謁見の間には他の仲間たちもいて、それぞれが誇らしげな表情をしている。


 アネットが僕の肩を軽く叩いて声をかけてきた。


「トール、本当に凄いやつなのです! 補助魔法だけでなく、最終的に黒霧のレヴァセントを追い払ったのはトールの不思議な光でした。それがなければ、私たちはきっと負けていました」

「ほう、不思議な光とな?」

「はい! きっと、トールは英雄になる素質を持っています」


 アネットの言葉に、僕は照れくさくなりながらも感謝の気持ちを込めて微笑んだ。


「ありがとう、アネット。でも、皆の力があったからこそ、なんとか追い払えたんだよ」


 僕が謙遜すると、いつもは冷たいマジュが微笑みながら言葉を添えた。


「そうね。トール、あなたの魔法は本当に頼りになるわ。私ももっと強くならなくちゃね」


 冷静て強さに自信を持つマジュの言葉に、僕は少し自信を持てるようになった。


「うん、ありがとう。僕ももっと頑張るよ」

「トールさん、あなたは本当に素晴らしいリーダーです。私たちの力を引き出してくれて、感謝しています」


 ジュナの言葉に、僕は胸が熱くなった。


「ありがとう、ジュナ。皆がいてくれるから、僕も頑張れるんだ」

「良きパーティーであるな」


 王様にも認めてもらつた僕らは互いを称えて微笑みあった。


 その時、兵士が謁見の間に駆け込んできた。


「王様、緊急報告があります!」


 近衛騎士が声を上げる。王様の表情が一変し、全員の視線がその騎士に集まった。


「何事だ?」


 王様は厳しい声で尋ねる。


「黒霧レヴァナントが討伐されました! 討伐したのは勇者ザイール様です!」

「なっ?!」


 その言葉に王様が驚いた声を上げて、謁見の間は一瞬静まり返った。

 信じられないという表情を浮かべる仲間たちの中で、僕は複雑な感情に包まれた。


「ザイールが…討伐した? バカな!」


 アネットが驚きと怒りを混ぜた声で呟く。


「ザイールにそんな力があるはずありません!」


 マジュも目を見開いて驚いている。


「信じられない…あんな男が!?」


 ジュナが驚きながらも疑念を抱いている様子だ。


「ザイールが…やっぱり凄いな」


 僕は心の中で呟いた。彼の実力を再び聞くことができて、やはり彼は特別な存在なのだと感じた。


「なんでここでザイールが!」

「ふふ、ザイール様、さすがです」


 王様も驚きを隠せない様子で、口元を押さえる。

 その時、王女セリーヌが前に出てきた。彼女の美しい顔には、うっとりとした表情が浮かんでいる。


「ザイール様が討伐したのですね…素晴らしい…」


 彼女の瞳には、ザイールに対する敬意と憧れが込められていた。

 僕はその表情を見て王女様の気持ちに同意する。

 心の中でザイールの存在の大きさを改めて実感した。


「くっ、ザイールが討伐したということは、あのレヴァナントは完全に滅ぼされたということだ。トールをお主が弱らせたからであろう。よくやった」

「えっ? いえ、僕は」

「いいや、これはお主の功績じゃ」


 王様が冷静さを取り戻し、僕に再び言葉をかけてくれる。

 しかも、口調は少し強引で、ザイールの功績を認めないという感じだった。


「そうよ、ザイール。お前の攻撃があったからだ」

「そうね。ザイールが一人で倒せるはずがないもの」

「そうです。ザイールではなく、トールの功績にするべきです」


 三人が王様の言葉に同意して、僕は王女様を見た。

 だけど、彼女は目を閉じて反論することはないようだ。


「良いな、トールよ。今後もお主には期待しておるぞ。勇者ザイールを超えてくれ」

「わかりました! 王様。ザイールの力を目の当たりにして、僕たちももっと強くならなければならないと感じました」


 僕はそう答え、彼に対する尊敬の念を新たにした。


 謁見の間には、ザイールの討伐報告がもたらした驚きと感嘆の声が広がっていた。

 僕たちは彼の力に再び感心しながら、自分たちもさらに努力を重ねていくことを誓った。


 しかし、あの瞬間、僕の拳に不思議な力が宿ったことを思い出す。


「なんだったんだ、あれは…」


 僕は心の中で自問する。


 あの力があれば僕も強くなれるかもしれない。


 しかし、その力が再び現れることを期待しつつ、僕は新たな戦いに向けての決意を固めた。


 だけど、僕はまた彼に頼ってしまった。

 レヴァナントを倒すことができなかったことが悔やまれる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あとがき


 どうも作者のイコです。


 ここまでが序章として考えた話です。


 う〜ん、あまり読まれない! 厳しいですね(^◇^;)

 嬉しいコメントレビューをもらえたことが、とても嬉しかったです!


 10万文字は頑張って書きます!

 

 どうぞお付き合いいただければ幸いです!

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