第3話 ソリテールとの出会い

アゼルとエレナが共に旅を始めてから数日が経った。彼らは廃墟と化した町や村を訪れ、そこで見つけた人々を助けながら旅を続けていた。ある夜、二人は森の中にキャンプを張り、焚き火の周りで休息を取っていた。


深い森の中、焚き火の周りでアゼルとエレナは静かに話をしていた。周囲は静寂に包まれ、遠くからフクロウの鳴き声が聞こえる。夜空には無数の星が瞬き、月が淡い光を放っている。


エレナは微笑みながら、今日救った人々のことを語った。


「今日助けた家族、彼らの笑顔を見たら、全ての疲れが吹き飛んだわ。」


アゼルは彼女の言葉に頷きながら、焚き火を見つめた。


「君のような人間に出会ったのは初めてだ。人を助けるためにここまで献身的になれるなんて。」


その時、アゼルは突然周囲の気配が変わったことに気付いた。冷たい風が吹き抜け、森の静寂が不気味に感じられた。彼はすぐに立ち上がり、辺りを見回した。


「誰かがいる。」


エレナも緊張して立ち上がった。


「何が起こったの?」


その瞬間、暗闇の中から一人の女性が現れた。彼女の姿は美しくも冷たく、紫の瞳が冷酷な光を放っていた。長い黒髪が風に揺れ、背中には大きな黒い翼が広がっている。


「久しぶりね、アゼル。」


アゼルは彼女の姿を見て、すぐにその正体を悟った。


「ソリテール…」


ソリテールは冷笑を浮かべながらアゼルに近づいた。


「ここで何をしているの?魔王がいなくなって、あなたもただの漂流者になったのね。」


アゼルはソリテールの言葉に動じることなく、冷静に答えた。


「君こそ、こんなところで何をしている?」


ソリテールは一瞬黙り込んだが、すぐに冷たい笑みを浮かべた。


「ただ、人間を観察しているだけよ。実験の対象としてね。」


その言葉にエレナは恐怖を感じ、アゼルの背後に隠れた。


アゼルはエレナを守るために、ソリテールと対峙する決意を固めた。


「エレナを巻き込むな。彼女は関係ない。」


ソリテールはその言葉に興味を示し、エレナに目を向けた。


「この人間があなたにとって特別なのかしら?面白いわ。」


その瞬間、ソリテールの手から闇の魔力が放たれ、アゼルに襲いかかった。アゼルは即座に防御の魔法を展開し、ソリテールの攻撃を受け止めた。


「エレナ、下がっていろ!」


エレナはアゼルの指示に従い、木陰に隠れた。アゼルとソリテールの激しい戦いが始まった。闇と炎の魔法がぶつかり合い、森の静寂を破壊した。


戦いが続く中、アゼルはソリテールの攻撃を避けながら、彼女に問いかけた。


「なぜこんなことをする?君は何を求めている?」


ソリテールは冷たい笑みを浮かべながら答えた。


「私はただ、自分の存在意義を探しているだけ。人間を観察し、実験することで見つけるのよ。」


アゼルはその言葉に痛みを感じた。自分と同じように、ソリテールもまた自分の存在意義を探しているのだと悟った。


最後の一撃でアゼルはソリテールを打ち倒し、彼女は地面に崩れ落ちた。しかし、アゼルは彼女を殺すことなく、手を差し伸べた。


「共に来い、ソリテール。君もまた、自分の道を見つけることができるはずだ。」


ソリテールはアゼルの手を見つめ、一瞬ためらったが、やがてその手を取った。


「…分かった。あなたについていく。」


アゼルとエレナ、そして新たに加わったソリテール。彼らは新たな目的を胸に、再び旅を続けることになった。未知の未来に向かって、一歩ずつ進んでいくのであった。

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