第2話 新たな仲間

荒れ果てた村を彷徨い歩くアゼルの足取りは重かった。魔王の死後、何を目指して歩いているのか、自らの道筋を見失った彼は、ただ過去の記憶に囚われながら歩いていた。夕暮れ時、ふと目に入ったのは、一人の若い女性が薬草を摘んでいる姿だった。


アゼルは彼女の背後に近づき、警戒心を抱きながらも声をかけた。


「ここで何をしている?」


女性は驚いたように振り返り、その顔に一瞬の恐怖が走ったが、すぐに冷静さを取り戻した。彼女の名はエレナ。戦争の影響で荒れ果てたこの村で、薬草師として人々を癒していた。


「薬草を摘んでいるの。戦争で傷ついた人たちを癒すために。」


その言葉にアゼルは興味を持ったが、警戒心は解けなかった。彼は冷たい視線を向けながら問いかけた。


「人間が魔族を恐れずにここで何をしている?君のような人間がこんな場所で何のために?」


エレナはアゼルの視線を真っ直ぐに受け止め、毅然とした態度で答えた。


「恐れていたら誰も救えない。私は人を助けたいだけ。」


その純粋な意志に、アゼルは心を動かされた。しかし、表情には出さず、冷たく返した。


「そんなことをして何の意味がある?」


夕暮れが迫る中、エレナはアゼルに自分の家で休むよう提案した。


「ここは危険よ。もしよかったら私の家で休んでいって。あなたも旅人でしょ?」


一瞬ためらったが、アゼルは彼女の提案を受け入れることにした。彼の内心には、エレナが何かしらの役に立つかもしれないという期待もあった。


エレナの家に到着すると、アゼルはその小さな家の中に入った。壁には薬草が吊るされ、棚には様々な薬瓶が並んでいる。エレナは手際よく薬草を仕分け、アゼルにお茶を淹れてくれた。


「ここで何があったのかは知らないけれど、あなたも疲れているでしょう。少しでも休んで。」


アゼルはお茶を受け取りながら、エレナの親切に戸惑いを覚えた。彼の中で、彼女がただの人間でないように感じ始めていた。


夜が更け、エレナが寝静まった後、アゼルは一人で外に出た。夜空を見上げながら、彼はこれからの旅の行方を考えた。エレナとの出会いが彼の心に何かを残したことは確かだった。


「彼女は何者だ?ただの人間ではない何かがある。彼女と共に行けば、私の新たな道が見つかるのだろうか。」


彼はエレナに対して感じた不思議な感情を整理しながら、決意を固めた。彼女と共に旅を続けることで、自らの使命を見つけることができるかもしれない。彼の心には、新たな希望が灯り始めていた。


翌朝、アゼルはエレナに旅の同行を提案した。彼女は驚きつつも、その提案を受け入れた。


「一緒に行こう。君と共に、新たな道を見つけたい。」


エレナは微笑んで頷いた。


「分かったわ。私もあなたと共に、新しい未来を探すわ。」


こうして、アゼルとエレナの新たな旅が始まった。彼らは未知の未来に向かって、一歩ずつ進んでいくのであった。

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