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文と蛍はアルバイト先で知り合いになった。
文は大学生で蛍は高校生だった。二人が働いていたのはイタリアンレストランで、そのとき文はもうそのレストランで三年働いていたので、(大学生になってすぐにそのレストランで働き始めた)蛍が新人で入ってきたときに、仕事を教えていたのが文だった。
蛍は文の通っている大学を第一志望にしていると言った。(なので休憩時間が一緒のときには、レストランの仕事だけではなくて高校の勉強もたまに教えたりしていた)
文は蛍を初めて見たとき本当にびっくりした。こんなに綺麗な子が本当にいるんだ、と思った。それくらい蛍は綺麗だった。(それは文の思い違いではなくて、実際に蛍は子供のころからずっとたくさんの人から恋の告白をされていたようだった)
「勉強とアルバイトの両方をするのは大変じゃない?」文は言う。
「まあ、少しだけ。でも部活はしていないので、なんとかなります」と休憩室でペンをくるくると指先で動かしながら蛍はにっこりと笑って言った。
そのときの蛍の笑顔を、僕はたぶん一生忘れられないのだろうと文は思った。
文は蛍に(今までたくさんの人たちがそうしてきたように)一目ぼれの恋をした。でも、その恋はきっと蛍には伝えることのできない文の心の中だけで泡のように消えてしまう恋なのだと思った。
蛍は偶然、たまたま(友達が働いていたから)イタリアンレストランでアルバイトをしようと思っただけで、そのイタリアンレストランにたまたま文が働いていただけだった。蛍はどこかにいこうと思えば、すぐでもどこにでもいける。それだけの若さと才能と行動力が蛍にはあった。(一緒に仕事をしているから、それが文にはよくわかった)
目を離したら、いつか、ふとどこかに消えてしまうような、文にとって蛍はそんないつもは別の世界で暮らしている人魚姫みたいな存在だった。
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