第1話

 桜並木の終着点である県立高校へ向かう。


真新しい制服に身を包み、キラキラ輝く笑顔で歩く同級生達を尻目に1人項垂れる。


「憂鬱だ…」


小さなため息と共に溢れる独り言。

今日からまた学校という閉鎖的社会での生活が始まる、と思うと自然と二回目のため息が漏れた。

 降幡光輝は遅い足取りで校門を通り、新たな教室へと向かう。


昔から人付き合いが苦手なんだよな。


苦手を通り越してもはや嫌いかもしれない。小さい時から人より身体が大きかったせいか、勝手に周りから怖がられるわ喧嘩を売られるわで、誰かと仲良くなんて出来なかった。


 教室につくとすでにグループが出来ているようで何組かが楽しそうに話している。それを尻目に出席番号順に振り分けられた席は降幡は座る。

とりあえず変に絡まれる事はなさそうだ。各々会話が続けられている。


 一息ついてこっそりスマホでも弄ろうかと鞄に手をかけた時。


「なあお前どこ中?ガタイいいなぁ!」


頭の上から陽気な声が降ってきた。

思わず顔を上げると見知らぬ男子。黒縁メガネがよく似合う彼は降幡の返事を待っている。


「第二北中学……」


「マジ!?二北(にほく)からの奴全然うちいなくね?よく来たなぁ」


そうかそうかと頷いているがこちらとしてはだからなんだと思ってしまう。


「おい神木ー!お前と同中のやつでさー」


他になにか言うべきか考えていると、後方から楽しそうな声が飛んできた。


「応!なになにー?あ、ごめん。またなぁ」


降幡が言葉を発するまもなく神木と呼ばれた男子は後方グループへ行ってしまった。


高校ってすごいな。あんな陽キャもいるのか。


久しぶりに同年代に話しかけられて驚いたが、ちゃんと返事はできていただろうか。

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魔法使いの生き残り 中条芎 @nakajo_0408

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