第6話 傘を持とう
ウェルギリウスは考えていた。
(バレちゃったかな?僕の正体)
彼は今主の居ない、ウィンストンがオフィスと思いこんでいる彼の散らかった、否、ランボーのおかげで片付いてしまった彼の部屋にいた。
(僕の正体がドラキュラだってことに。)
彼は今真の姿になっていた。そう、彼の正体はドラキュラとサキュバスのハーフだった。彼は血の代わりにウィンストンの精液を貰うことで生きていた!彼の生きる条件は、愛する人の精液か血を定期的に手に入れるか、愛する人の心臓を食べることだった!
(僕の正体が知られたら嫌われちゃうな……。僕を買って解放してくれたのはいいけど……いつかバレちゃうのかな?)
「ちぇっ!あいつもとうとう嫁を貰いやがったのか!くたばりやがれ!ブルガーコフの言う通り、ドストエフスキーは不滅だが人間はMortal(滅する運命にある)じゃねえか!あいつだって泥か肋なんだ、榴弾砲のひとつでももって吹き飛ばしてくれ!500ドル払うぜ!」
大伴家持がやかましく吠えた。
「えっ!?僕女の子じゃないです!?てかぬいぐるみ!?ぬいぐるみが喋るの!?」
ウェルギリウスは酷く怯えた、突然の大声で驚いたせいか腰を抜かして倒れてしまっていた。
「おい!ふざけるなよ!お前はトイストーリーを見なかったのか?おもちゃだって話そうとすれば人間と話せるし人権だって獲得できるしストライキだって起こせるんだ。俺の名前は安倍晴明だ、格好を見たら分かるだろ!?陰陽師だ!平安は良かったよ、俺が人間でいられたからな。もう誰も神道を信じようとしねえし狐をファックしたいとも思わねえんだ。何が2次元キャラだよ、狐をリアルにセックスしたいと思わねえ日本人は日本人じゃねえ、ボードリヤールの言う通りだ、歴史は終わったんだよ!それにな、あのバカげた戦争のせいで神社の連中まで腑抜けになった。俺はいつでも寺を殲滅して仏教徒の馬鹿共を6フィート地下へ埋めてやることだってできるんだぜ?武装なんて許しちゃおけねえ!プーチンのバカはそれを知らなかったんだ!俺は何時でも怪物を呼べるぜ。」
大伴家持は本当のところ、ウィンストンがしばらく居ないせいで寂しかった。そのためいつも以上に多弁になり、いない間にテレビで見た知識と考えたことを披露していた。
ウェルギリウスはしばらくぽかんとすると大笑いを始めた。
「なーんだ!僕と同じ変な人はもういたんだ!そっか!あの人も普通の人って感じしないもんね!安倍晴明さん!よろしくね!」ウェルギリウスは手を差し伸べた。
「そのしっぽと角はクールだ、俺は手が動かせないが口は動かせる。これで何人もの女を泣かせてきたんだ。お前これからあいつに逢いに行くのか?俺も連れてけよ!どこか分からねえだろ!どうせここにはまだ戻って来ねえよ」安倍晴明?大伴家持?とにかくぬいぐるみはそう話した。
「え!?ここで着替えて合流する予定で……確かに合流場所は言わなかったけど……。わかった!行こう!あの人のことは信用出来ないもんね!ところで僕の着替えってどれのこと?ここの住所だけ書いたメモだけ残してくれてて……」
「これのことだ」
そういい大伴家持が僅かに動かした指先の向こうにはガムテープで封をされたダンボール箱があり、ウェルギリウスがそれを開封するとそこには巫女服が入っていた。
「ええ!?!?」
ウェルギリウスは困ったが、5分後それを着て大伴家持を腰に縛り付けて出かけることにした。大伴家持は1句を詠んだ。
「みさぶらひみ傘と申せ宮城野の木の下露は雨にまされり」
傘の代わりにマジックマッシュルームを大伴家持はポケットにつめて出かけることにした。
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