第4話

 なんだか外が騒がしい。


人が寝てる時にうるさいな…。


ん…?寝てる?


意識が急速に戻り瞼を開く。一体いつの間に眠っていたのだろうか。

視界に広がるのは一面の白。どこかの壁かなにかだろうか。

身体を起こそうと目の前の壁らしき物に手を伸ばすと、感じる暖かさと柔らかさ。そして。


「…もふもふしてる」


次の瞬間手に何かが当たり、広がる痛み。


「いってぇ!」


勢いのまま立ち上がる。

痛みは目の前で威嚇している白猫に噛まれたせいみたいだ。

手には綺麗な歯形が付いている。


改めて周りを見回すと見覚えのない物ばかり。

だんだんと意識がはっきりしてきた。と、同時に気を失う前の記憶が、瑛晴の脳内を瞬時に駆け巡る。


「そうだ俺、あそこで変なものを見て…それから……」


それからどうなったんだったろうか。

しかし考えていても仕方がない。

とりあえずここから移動しようと部屋にある唯一の扉を開ける。


「お!目が覚めたんだねー。おはよーう」


扉の先には簡素なソファとテーブル。と、そこに腰掛けこちらを見ながらひらひら手を振る漢が一人。


「あ!その声!お前さっきの!」


「顔じゃなくて声で判断するんだウケる」


男は全くウケてなさそうな声色でテーブルに広がるポテチを貪る。


「さっきは顔見えなかったんだよ!急に気ぃ失ったしな」


向かいのソファに腰掛けながら改めて目の前の男を見る。

三十代くらいだろうか。雑に伸びた前髪は目元まで伸びに伸び目が隠れてしまっている。


「えぇー。君、あんな目にあってよくそんな冷静でいられるねぇ。普通はびびって一目散に出ていくでしょー


「俺だってさっさと家帰って夢だったんだと思いてえよ」


実際何故か身体の傷はきれいに治っている。しかし着ている制服が擦り切れボロボロになっているのが、先程の出来事が夢ではない何よりの証拠だ。

恐怖よりも今は聞かなければいけないことがある。


「さっきの人は…どうなったんだ」


「あー死んだよ」


様当たり前かの様に男はポテチを貪る手を止めずに言い放つ。


正直わかっていたことだった。瑛晴が見た時には既に身体の半分は失われていたのだから。


「君ねぇ。邪魂に素手で殴りかかるとか普通しないでしょー」


だいたい僕が行かなかったら君も死んでたよ、とあっけらかんと話す男。


「なら教えろよ!あれは何なんだ!じゃこんってのはさっきのやつのことか!お前も一体何者なんだ!」


瑛晴の拳がテーブルに叩きつけられる。


「んお!急に感情的になるじゃーん。ちゃんと教えるからステイステイ」


肩と両手を上げながら降参ポーズをする男はそれでもケラケラ笑っている。


「そうだねぇ、どこから話そうか。簡潔に言うとー…」





「僕たちは陰陽師だ」

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