第238話 エピローグ

…!


この感覚は知っているぞ。


働き始めた時に初めてやった時は焦ったなぁ…。


完全に寝過ごしたね。

空気が違うもの。


どのくらい経ったんだろうか。


神様が60年寝るって決めて寝たんだから、60年キッチリで目が覚めると思うじゃない。

寝過ごすかね。


どのくらい経ったかマジで分からない。

えーっと…。

あ、良かった!


ラルフィードさんの気配はある!

居なくなってたらどうしようかと思ったよ。


完全に迷子になるところだった。

神の役割とかなーんにもしらないし。


迷子の神様が好き勝手力を振るうとか終わりの始まりだよ。


「やあ、お久しぶりです。

起きましたか。」


おはようございますぅ、寝過ごしましたですぅ。


「そういえばそうですね。

忘れてましたよ。

あれから…えーと、120年くらいですかね。」


あらら…倍寝ちゃってるじゃない。


「なんで人の時には早起きだったのに、神になったら寝坊助になるのよ。」


ね、普通逆だと思うんだけど、ラルフィードさんも現世に残ってる逸話は完全無欠な感じなのに、神様としてはやっちまってるところが結構あるから、神なんてそんなもんなのかもよ。


「確かにそうね。

仕事柄沢山読んだけれど…確かに本人だと思う時もあれば、イメージとのギャップで風邪を引きそうになる時もあったわね。」


ね。


…え?

アンヌ?


「そうよ。」


なんで!?

神域だよね、ここ!


「うーん、私も神様になったからかな。」


「信仰が集まりすぎたのはアンヌも同じですよ、ラルフ。」


「そうよ、すごい活躍だったんだから、アンヌ。」


…ティナはなんとなくわかるや。

死霊のアイドルだから。


「あらそう?

結局ママの跡を継ぐ形になっちゃうわね。」


そうなの?

死の神様?


「ママは安らぎって言ってたけど、そうね。

死と商売の神様。」


なんて組み合わせだ…!

悪どい商売をしそうだ。

人を不幸にする組み合わせじゃないか。


アンヌは?


「…言いたく無い。」


えぇ?

神様なんだから恥ずかしがることないじゃない。


ちょっと、ティナもラルフィードさんもなにニヤニヤしてるのさ。


「アンヌは愛の神様よ。

私が先に死んでたら、ピリルルへの愛故に私が愛の神様だったと思うんだけど。」


リリーディア!

あ、そっか。

龍神さんも遊びに来てたね、そう言えば。

龍神は自由に出入り出来るのか。


それにしても愛の神様か。

自分の口では言いにくいったらないね。


「そう。

ほら、アンヌ。

愛の女神らしく、きちんとしなさい。

恥ずかしい事じゃ無いから。


恥ずかしいのは最初だけだから。


私みたいにオープンにしたら、逆に誰も何も思わないから。」


「イヤ!

…あとでこっそり伝えるから、ね。」


なるほど!…恥ずかしい!


結局お父さん達は神までは行かなかったかぁ。

やっぱり相当なんだね、神になるほどの信仰って。


「そうですねぇ。

アンヌはラルフと一緒で龍戦役で集めたのが大きかったですし、ティナは死ぬまで死霊の慰撫を続けましたから。」


すごいね、2人とも。

ティナが死と商売の神様ってのは分かるけど、なんでアンヌは愛の神様なの?


「この娘、死ぬまで結婚も恋愛もしなかったから。

周りがラルフに操を立てているんだって勝手に盛り立てて、それで。」


「少しはあったけど…忙しくてそれどころじゃなかったのよ。


それなのに教会がどんどんカップルだらけになるし、恋愛相談もされるし、知らないっての!


恋人は恋人らしい事をする前に死んじゃったんだから!」


…ごめんなさい。



さぁ、バリバリ働くにもそんな訳にも行かないねぇ。


輪廻の流れを作ったら後はオートメーションだからねぇ。


…おやおや。

こっちの世界に紛れ込んでるこの魂は地球産じゃないか。


どうしようかな。

おいでませ異世界とか、なんか用意した方が良いだろうか。


スベるな…きっと。


厳かに行くべきか。


どうしようかな。


神様くらいのテンションが良いのかもなぁ結局。


いや、あれはアレで緩すぎて最初めちゃくちゃ不安だった。


死因は…?

なるほどねぇ、事故ね。


とりあえず掬い上げないと、紛れ込んじゃったまま生まれ変わったら魔力もないし大変そうだ。


ふわっと光を指先に集めて魂を掬いあげると、人の形に変わっていく。


彼はキョロキョロとここの場所も、何が起こったかも分からない様だ。


初めて来た時、僕もこんな感じだったんだろうか。


「ここは…?

…貴方は…?」


私は神様。


なんでも一つだけ、あなたが望む能力を与えましょう。

その他は普通の人間と変わることはありませんが、望んだ力が与えられるのです。

有意義な人生を楽しんでくださいね。


なんてね。

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