第234話 転転生 最後の能力

「ラルフ、行くのですね。

…能力は何にしますか?」


…あれ、いいんだ。

もう能力は貰えないかと思っていたよ。


「何を言っているんですか。

貴方が神化したのはこちらに来てから2回目の時。

能力を渡すのは可能ですよ。

ここに来てくれさえしたら。


…次はないかもしれませんね。

神を人に転生させるのですら前代未聞なんですから、その結果ラルフがどういう存在になるのかは分かりません。」


そうだね。

最後になるかもしれないと思うよ。

ラルフィード様の生き返す仕組みと、僕の転生は厳密に言えば仕組みが違う。


ラルフィード様は、偶然ここに来た僕に神気で身体と能力を与えて、現世へテレポートのような形で送っていた。


だからリスポーン位置も自由自在だった訳だね。


僕は生まれ変わり、現世に落とすような形になる。

これは神になった時に分かったから体感でしかないんだけど、ラルフィード様は同じ存在を使い回し、僕が生き返らせる場合は新規な存在として生まれ変わるのに近い。


先に送り出した皆も厳密に言えば前とは違う存在で、僕の神気を使ってカスタマイズして送り出したので、本人達は変化を感じないだろうけど、僕から、神の目線でみるとはっきり別の生き物だ。


傍目には大きな違いはないんだけどね。

今回は偶然役立つ。


「じゃあこの場で転生してください。

神に能力なんて与えられませんし、神を現世に送れませんので。」


はいはい。


…自分にやるのってドキドキするね。

神だから失敗しませんの気持ちでポンポン生き返していたけれど、自分でやる場合ってどの時点まで神でどこから人になるのか分からないから、なんか変な失敗しそうで怖い。


それでも神気を込めると、これまでと同じ感覚で生まれ変わっていく。

あぁ、でもなんか、万能感が薄れて行くのは感じるなぁ。

人があの感覚持ってたら、現世で無茶をしてすぐ死にそうだけども。


光の帯に丸い玉が付いた神気。

なかなか綺麗で気に入っていたんだけど、これもこれで見納めだね。


光が徐々に落ち着き、見た目は殆ど変わらないが別人の、普通の人間がその場に生まれた。


「おぉー。

やっぱり仕組みが違いそうですねぇ。

私から見たら完全に別人なので、違和感が凄いですよ。」


人になった僕にはもうわからないが、皆を生き返らせた時は僕もそうだったからわかるよ。


「さて、それでは。


なんでも一つだけ、あなたが望む能力を与えましょう。

その他は普通の人間と変わることはありませんが、望んだ力が与えられるのです。

有意義な人生を楽しんでくださいね。」


ははっ。

それテンプレートなの?

初めて会った時と一字一句同じじゃないか。

やり直しだから、同じ能力は選べないという縛りも消えた今、選び放題だ。


その時は悩んで悩んで、瞬間移動を貰って…15秒で死んだんだった。


エモさを重視して瞬間移動を貰いたいところだけど、またすぐ死ぬのがオチだ。

その次に貰ったヤツを願おうじゃないか。


「分かりました。

貴方の能力は、高速移動です。


頑張ってくださいね、ラルフ。

さようなら。

もう会う事は無いかもしれないので…。」


いやいや、寿命で死んだ後にでも遊びに来るよ、と言いたいところだけど…。

どうせすぐ来ることになるよ。


前回高速移動を貰った17秒よりは時間がかかるけどね。

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