第233話 シュート

頼むよピリルル。

上手く抜けてね。


「ピリルルさん、龍神の剣ってどの程度通用するもんなんすかね。

親父が振ったり、レイさんが使ったらもっと威力が高いもんなんすかね。」


「どうかな。

戦い慣れているから当てられる回数は増えるかもしれないけれど、刺さらないものは刺さらないからね。


それにレッド、君もラルフに貰った能力をまだ万全に使いこなせてはいないだろうけれど、それでも世界有数の実力を持つことにはなっているんだ。


そんなに自分を卑下する事はないよ。


年がら年中戦い続けているパパと、数年間で龍と何回も何回も戦うラルフがおかしいんだから。


聞いたことある?


僕も含めたら龍が4、人なんて数えてないらしいし、神獣とも戦ってるからね。


真似しちゃダメだよ。」


「おぉ…。

イカれてんなぁ、改めて聞くと。」


「そうでしょ。

ここにいる人達だけでも、君とパパとサシュマジュクさん意外とは戦っているからね。


パパに聞いたんだけど、そうそうペリンさんとかシャルルさんより強い人間なんていないってさ。


引きもなかなかだよね。」


「この場合、運がいいのか悪いのかどっちなんすかね。」


「さぁねぇ。

でも、お陰で集まってくれているんだから凄いことだよ。


彼らがいないと届きすらしなかったでしょ。

龍神に。」


「そうすねぇ。

よし!

俺も気張ってピリルルさんを届けるぜ!」


「頼むよ。

繊細な作業を要求されているからさ。

なるべく魔力を残しておきたいから。」


よしよし。

ピリルル達も奥の方で戦い始めたな。


僕らも準備を始めようか。


「ふむ。

壮観だな、これは。


我が走るレーンが用意されている。

凄い奴らだ。


では行くぞラルフ。

神獣ヤイシャが必ず届けてやろう。」


走り出すヤイシャに必死で捕まる。

生身だって、身体は普通の人間並みだって言ってんのに、ギャンギャンに加速して行く。


景色は流れ、ギリギリ見えないこともないが、風で目を開けていられない。

信じてしがみつくことしか出来ない。


リオンを変化させてヤイシャに絡ませて無ければ、普通に振り落とされて死んでたね。


みんなが開けてくれた道をただただ真っ直ぐ突っ込んで行く。


「そろそろ私の出番かしら。」

「そうね。」


浮いた状態で待機していたエアリスの上から、リナリーンが土魔法で登り坂を作る。


ヤイシャは跳ねるように上がって行き、頂上で思いっきり飛んでから、宙返りの容量で僕を跳ね上げた。


リオンを盾に射出された先は龍神の真上だ。

神の子から神になって、人間砲弾に成り下がったぜ!


はははは。

こえー!

真っ暗な夜空で落ちて行くのは想像以上に怖い!


さて、ここからリオンを突き立てられれば勝ち、防がれたら負け。

毎回格上相手だとそんな戦いばっかりだったなぁ。


シャルルさんの時は魔力切れで負け。

リナリーンの時は性癖に刺さって勝ち。

エアリスの時は弱体化を望んでたエアリスを愛魔法で弱くして、勝ち。

リリーディアの時は、無魔法で精神攻撃して勝ち。

次は…ヤイシャか。

魔法を打ち消す遺跡にぶち込んだけど、僕も死んだから、相打ちで引き分け。

ペリンさんはリオンが覚醒して勝ち。

いや、あれはどうだろう。

死んでるしな…。

あれ?先に一度僕が死んで生き返った場合を引き分けにしちゃうと、エアリス、リリーディア、ヤイシャ、ペリンさんは勝ててないね。

そんで次は縛り戦でピリルルに負けた。

んでんで、パーシェローに勝ち。

最後にシャルル戦その2は剣の性癖を利用しての勝ち。


整理すると、3勝2敗4分け?

格上相手だから妥当かもね。

闘技大会では優勝する程勝ってるし、明らかな格下に負けた事はないから、戦績はそれほど悪くないけれど、本気の戦いだとこんなもんか。


ギリギリ勝ち越してるなら、自分を信じてみようか。

その頃の力は1ミリも残っちゃいないけども。


自由落下をしながらタイミングを待つ。

夜空の暗闇の中から、視線を感じる。


当然こんな目立つやつは見ちゃうよねぇ、龍神さん。

出来れば見つからないまま突き立てられたら良かったんだけれども、そう上手くは行かないやね。


…頼むよピリルル。

ちゃんと下に到着していてくれよ。

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