第232話 家族内格差

ゴーゴーゴー!

もう3分の2は進んだくらいかな。


「なぁ、親父、龍に変化してやるから俺を乗れよ。

俺らで突っ込むぞ。」


「あ?

息子になんて乗れるかよ、恥ずかしい!

俺が龍になるから、お前が乗れ。


パパの肩車は久しぶりだろ?パーシェロー。」


「いや、真面目に言ってんだよ。

アンタ、竜形態で出来ることなんて体当たりと噛みつきくらいだろ。

弱くなるんだよ、龍になると。」


「なんだと!

龍王に向かって!」


「あんた龍としての鍛錬してねぇじゃねぇか。


人化しては剣を振って、龍に戻っては寝てみたいな生活だったろ。」


「剣は毎日振らなきゃ気持ち悪いんだよ。」


「いや、だから言ってんだよ。」


レイが龍化したパーシェローに飛び乗ると、加速して魔物の群れに突っ込んでいく。

パーシェローは龍のまま魔法を使い、弱い魔物を纏めて潰しながら強い魔物へ突っ込むと、それをレイが斬る。


「ほら、効率がいいだろ。」


「代わってみろ。

俺だってやれるから。」


「張り合うなって馬鹿親父。

こっちの方が良いって。

大体アンタが突っ込んだ後どうすんだよ。


魔法で強い魔物を倒すのか?

意味わからねぇって、効率悪いし。」


「効率効率言うな!

お前も父になれば分かる!


息子の背中に乗るのは恥ずかしいのだ!」


やいやい口喧嘩している親子のすぐ横を、光が奔る。


その光は強い弱い関係なく、通った道の魔物を消し飛ばしていく。


「五月蝿いし、見苦しいわ。

パパ、兄様。

どちらにせよ恥ずかしい喧嘩を見せているのなら同じです。


とっとと道を作って差し上げてください。


ピリルルの為に。


ピリルルが世界を救う為に。


可愛いピリルルが活躍出来るようにするのが、下々の役目です。

さぁ早く行きなさい。」


「はい…。」


「リリーディア、俺らの事下々って言った?」


「五月蝿いですね、兄様はいちいちいちいち。

下々でしょう?

ピリルルが龍王になったんだから、気品も可愛げもないおじさん龍は露払いをしたらいいのです。


パパはもう龍王じゃないんだから、龍王様の手足となることを喜びに思いなさい。」


「あっ、はい!」


「…えぇ…妹が超怖ぇ…。

親父は親だろ?

ガツンと叱れよ。」


「…無理だ。

無理なのだ。


帰って無視とかされたら、お父さんハゲちゃう。」


「大丈夫だよ、ラルフが毛生え薬開発してくれたから。」


「…くぅ…出来ない!

出来ないのだ!


可愛いリリーディアを叱ることなど!

それによくみろ、あの凛とした横顔。

若い頃の母さんに似て美しいじゃないか!」


「…そうかい。

はぁ…。

終わったらなるべく実家に顔出すようにするかな…。

親父の愚痴でも聞いてやろう。」


「パパ、兄さん、お姉ちゃん、ここは頼んだよ。

僕はそのまま抜けるから、時間と隙間を作って。」


「あぁ、御意、龍王様。」


「おぉ、行け、息子よ。」


「きゃー!

凛々しいわピリルル!

嬉しい!ピリルルの指示で働ける喜び!

いつもの17倍はがんばれてしまうわね、そうでしょ?

パパ、兄様。

ね?

そうでしょう?


お姉ちゃんに任せて!

ほら、下々の人達、行きますよ。


ピリルルに触れようとする魔物を狩りなさい。

私が切り開くから、身体を張って維持しなさい。」


「分かったよ、リリーディア。」


「ったく。

ラジャー。」

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