第231話 道を開けろ
さぁ、行こうか。
僕はね、リオンが僕にしか懐かないから握って居るだけの人だよ。
ほんと、リオンの持ち手に巻いてある皮の持ち手と同じ様なもんさ。
当てるには他の人の力が要る。
先ずはペリンが先頭に魔物の群れに突っ込んでいく。
その脇をシャルルとサシュマジュクが付き、魔法と剣で切り開いていく。
数の多い魔物の群れの中に突っ込むと、シャルルとサシュマジュクは聖魔法をペリンに集めた。
前にラルフを焼いたのと同じ白い炎は、ペリンの剣に集まり、放たれると、龍神までの道が開かれる。
「行け行け!
早く突っ込まないと、すぐ塞がるぞ!」
ペリンが剣で指し示す方へと急ぐ。
そのまま3人は残り、魔物で道が塞がる邪魔をして少しでも遅らせるべく、その場で戦い始めた。
「シャシャシャシャ!
剣はいいですねぇ!
平和な時代にこんなに斬るものが出来るなんて、剣士冥利に尽きますよ!」
「ははは。
剣馬鹿が。
魔法が至高に決まって居るだろう。
効率が悪いのだ!
チマチマチマチマと!
見てみろ!俺の魔法を!
一帯を吹き飛ばせばそれだけラルフの道が広がるのだぞ!」
「はぁ、魔法馬鹿はこれだから。
見なさい。
強い個体が残って居るでしょうが。
雑魚などいくら追いついても婿殿達の邪魔にはならない。
強者を倒しなさい、強者を。
そういう機微が足りないのが魔法使いのダメなとこですねぇ。」
「なんだと!
お前を先に魔法のチリにしてやろうか!」
「こんな近い距離で負けるわけがないでしょう?
サビにしてやりますよ!」
「いや…お前ら…はぁ。
まぁ、いいか。
手は動いているしな。
頑張れよボン。
お前の親父と爺さんのフォロー、安くないぞ。
もうホント、大変なんだ。
シャルル!
サシュマジュク!
もう一度デカいの打つぞ!
固まれ馬鹿共!」
「ぬ!?」
「は!?
仕切りたがりが!」
なんだかんだ仲がいいおじさん達だよ。
生き返らせた時に年齢を28歳に合わせてあげたから、これからも仲良く喧嘩してね。
シャルルさんを若返らせるのは相当迷ったんだけど、奥さんもう亡くなっているらしいから別に構わないらしい。
ブランドさんが大変なだけだ。
若返った知的なバーサーカーなんて想像したくないね。
ペリンは子供もできたらしいし、また少し若返った所でなんの問題も…。
あるか、リナリーンが姉さん女房になっちゃった。
それは大変そうだ。
でも元々尻に敷かれに行ってたし、逆に丁度いいか。
お父さん。
1人だけ未婚の独身だ、と思っている事だろう。
僕は神になり、元人間の神をも転生させられることに気がついた。
つまりはそういうことだ。
自分に使う分の神気を使っちゃった結果、僕が生身のノーマル村人になっちゃったんだけどね。
…来なくてよかったのに。
まぁ、はしゃぐ気持ちも分かるよ。
せっかく生き返ったんだから楽しんでね。
上空高い所を飛ぶ白い龍、リリーディアの背に立つ2人の女性。
「ラルフが生き返ってからの短い間にも何人も死んじゃってるんだから、お手伝いは豊富ね。」
「あんまりコキ使わないでよ?
可哀想でしょう。
でも…そうね。
イヤイヤって訳じゃなさそうだし、お手伝いしてもらいましょう。」
ティナは死魔法を練り上げると、黒色の雲の様な怨念が渦巻いていく。
「そういえば、ママはタナでいいの?」
「いいえ、それは神としての名前。
普通の人間に戻してもらったんだから、元々の名前で生きて行くわよ。」
エマも死魔法を練り上げて行くと、上空の怨念が色濃くなって行く。
ティナが集めた死霊をエマが強化しているのだ。
「リリーディア、そろそろ私達も突っ込んで行きましょうか。
なるべく精密に操作したいし、貴女もピリルルとラルフを手伝いたいでしょ?」
パチパチと身体が光り始めるリリーディア。
「死霊に電気は効かないみたいだから、纏わせていいわよ。
貴女が電気になっちゃったら私達死んじゃうからやめてね。」
上空の死霊がリリーディアの前にドリルの様な形に集まって行く。
「3000人分くらいかしら。」
「そうね。」
「じゃあ行きますね。
頭の前に維持してくれたら、ラルフ達の道を開ける様に突っ込むからね。」
流れ星の様な光がラルフ達の前に落ちる。
破裂した様な音を立てて、地面を抉っていく。
かなりの範囲の魔物がそれに巻き込まれて消えたようだ。
「やっほー。
手伝いに来たわよ。」
もう、危ないんだから来なくてよかったのに。
エマさん、せっかく生き返ったのにまた死んじゃうよ?
「はいはい。
息子と旦那が頑張ってるのに手伝わないなんてことはないわ。
ね、ティナ。」
「そうよ。
ここは任せて行っていいわよ。
リリーディアもあっち行ったら?
ここはママと2人で大丈夫そうだわ。
沢山人が死んだからねぇ、沢山お手伝いがいるから。」
「サシュマジュク先生もちょっとずつこっちに向かってるみたいだし、驚かせちゃいましょ。」
「喜んでくれたらいいね、ママ。」
「どうしましょう、忘れられてたら。
不安になって来たわ!」
なんて緊張感のない…。
じゃあリリーディア、行こうか。
手伝ってよ。
僕はヨワヨワになっちゃったからさー。
「良いですわよ。
ピリルル、カッコいいわピリルル。
龍王が似合うわね。
パーシェロー兄さんなんて気品もないから全然似合わないと思ってたから、ピリルルが王になってよかったわね。
これなら皆ついて来てくれるわね。
パーシェロー兄さんだとそうも行かないけど、可愛くて、賢くて、可愛いピリルルなら相応しいわ!」
「…俺そんなに嫌われる様なことしたっけ。」
「…あぁ、リリーディアは俺にもあんなもんだ。
ピリルルとその他で世界が構成されてんだよ。
俺もそんなに尊敬されてない。」
「お、親父。
頑張ろうな。」
「…あぁ。」
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