第230話 元龍王と元龍神

「ふむ。

もう2日くらいですね。


シャシャシャ。

幸せな時間ですが、流石に終わりが見えないと辛い物がありますね。」


「弱音吐くなよ、おっさん。

親父が何とかしてくれるって!」


「我らの攻撃が効いている事を祈るしかないが、あの馬鹿龍神、もともと鈍感なところがあったが、こんな顔に出ないと腹が立ってくるぞ。」


「えー!元々こんな感じなのかよ。

よく付き合ってたな、レイさん。

親父にもちょくちょく絡んできてたらしいけど、年季が違うだろ?」


「あぁ、ちょくちょくやって来ては食いもんをねだられて頭の上に乗って食って帰っていってたな。


雑だからポロポロ落ちてくるんだな、これが。


でもまぁ、俺は尊敬してたからよ。

あぁ見えて面倒見はよかったから…よっ!っと。」


「おーい!

あぶねーぞ!ダラダラ話しながら戦うなよ!

親父もレッドも!」


「パーシェロー!

危なかった!

ありがとな!」


「だっはっは!

マジでヤバかったな!


…アイツも、パーシェローも多分龍神がよく尋ねて来てたはずだぜ。

あのおっさん、出来の悪い龍が大好きだからな。


アイツだけは俺に似ちまって弱い龍だったからな。」


「うっそーん、レイさん弱かったのか?

親父、人選間違えたんじゃねえ、のっと!


やめろよ!

大人気ないぞ!

こっちに攻撃を弾くなよ!」


「悪い悪い。

手が滑った。


龍としては大した事なかったぞ、俺は。

人としてはそりゃあ天下無双でレッド、お前みたいな鼻垂れや、シャルルの爺さんみたいなイカレポンチなんて山ほど相手にして来たがな。


それでもやっぱ嫁さんのために龍になったはいいが、その中では弱者も弱者よ?

生まれて初めてそうなったカルチャーショックでよ、大分落ち込んでたんだが…。

その時期に龍神が毎日の様にやって来やがってよ。

飯食って酒飲んで、軽く手合わせしてボコボコにされてな。


そんなのが一年位続いたくらいだったかな。

お前が龍の王だって、神が決めたから文句は言わせないって言って帰っていってよ。


それから俺は龍王と名乗る様になって、狂った龍の討伐を生業にしたわけだ。


まぁ、今となればわかるよ、おっさんが気にかけてくれたのも、弱い上に生意気な初心者龍の俺が他の龍に殺されないまま強く育てたのも、全部あのおっさんのお陰だってなぁ。」


「ふぅん。

優しい人だったんだな。


俺にとっての親父、ラルフ様みたいなもんか。」


「そんな感じだ。

ガキが出来てからもちょくちょく来てたなぁ。


そういう意味でも俺にとって龍の親父みたいなもんさ。

引導は俺が渡してやんなきゃな。

浮かばれないだろ。

せっかく狂った龍を倒す役目を貰ったのに、アイツは俺に討伐されたかったんだろ。」


「おー。

わかるぜその心意気。


道を開けてやるから一発おもっくそ殴ってこいよ、レイさん。

悶々と長期戦やらされてっからイライラしてんだ。

シャルルさんもペリンさんも協力してくれよ。」


「いいぞ。」


「いいでしょう。

確かにそろそろデカいの一発見たいと思ってました。」


「俺も手伝うよ、親父。」


「私も補助してやる。

気持ちはわかるしな。」


「サンキュー、パーシェロー、サシュマジュク。


うし、気合い入れ直すか!

馬鹿親父め。

…目を覚ましてくんねぇかな、これでさ。」


「ダメだよ、パパはもう引退したんだから、そんな事背負わなくていいんだよ。


今の龍王は、僕だ。」


「ピリルル。」


でも手伝ってね。

今の僕は生身の人間で、今まで得た力も何もかも皆に渡しちゃった後の出涸らしだから。


いやぁ、驚いたね。

神を転生させるのにあんなに力を使うと思わなかったよ。

少しは力がある状態で蘇れるかと思ったら、しょぼいのなんのって。


でもまぁ、リオンのお陰で剣の一振りに限っては誰より強いよ。


1億近い武器を取り込んだんだから。


お父さん、シャルルさん、ペリンさん、レイさん、レッド、パーシェロー、ピリルル。


頼むよ、力を貸してくれ。

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