第225話 リナリーンとリナリーン
さぁ夜明けだ!
生き返しちゃおうね〜!
ん?なんだいそこの君、うんうん。
霊での生活に不満がないだって?
いけないなぁ!
そんなことじゃ、来世に期待出来ないぞぅ?
頑張って生きて。
来世は幸せにしてあげるから。
◆
「師匠からのお願いですか?
なんですか水臭いですね、直接言ってくれりゃいいのですのに
まぁ忙しそうなのは分かりますます。
やっべぇ魔力の塊がぽんぽこ降ってますからねぇ。
ん?
なんですか?手紙?
あぁ、師匠のお姉さんね、あの魔女の村に居てもなんの違和感のない目をしたあの子。
…!
ひざまくら…?
すぐ出発するよ!
エアリス!
ペリン!
世界のへいわ…そう!
世界の平和の為に、師匠の像を立てに行くから手伝いな!
んー…近くから始めても良いんだけど、そうさね、ショタコンババアにも手伝わせるか。
始祖の魔女だし、性癖的にも師匠の像を作るのは上手いだろ?
初めは王国からだね。
ルーとラーも連れていこうか。
あの子らも土魔法使いだからね。」
「リナリーン、無理なら無理でお姫様っぽく喋ろうとしない方がいいよ。
せめて村の中だけでもって思ってるのかもしれないけど、村人全員魔女リナリーンを知っているんだから。
最近毎日龍になっているけど、皆んなで行くのは久しぶりだね。
剣闘大会以来かも。」
エアリスが龍形態となり、ペリン、リナリーン、ルー、ラーの4人を乗せて空を飛んで王国へ向かっていると、道沿いに動く生き物が見える。
避難民かと思ったがどうやら違うようで、醜悪な怪物じみた見た目をしていた。
龍神が意図しているかいないかは分からないが、高密度の魔力をばら撒いた結果、人の姿を模して少し小さくしたような化け物が生まれてしまっていた。
駆除していった方が良さそうだと、エアリスの上から魔法を発動させて攻撃するが、余り効果的では無いようだ。
魔力を動力としているようで、同じ魔力を使う魔法では攻撃のダメージに魔力を得た回復が差し引きされてしまっている。
「なら俺が斬ってみよう。
倒し方を理解出来れば、向かっている国に伝えられるからな。」
空飛ぶ龍から飛び降りながら怪物を斬り飛ばしたペリン。
どうやら剣での攻撃は普通に通るし、然程強くも硬くも無いようだった。
やや低空飛行に切り替えたエアリスに飛び乗ったペリンの感想は、弱いが厄介だった。
「あら、強くはなさそうですけど。」
「あぁ、エアリス、その通りだ。
確かにそうだが、こんな辺境にもそこそこの数がいた。
剣はまとめて斬れたとしても数匹が良いところだろう?
魔法のように沢山を一気にという訳にはいかないからな。
そしてラルフのように魔法も剣も使うなんてものはそう多くない。
リナリーン、お前も肉弾戦は苦手だろう?
痛い!脇腹を殴るな!
いや、普通の人と比べるなよ?
俺やシャルルと比べての話だ。
ラルフからの依頼を片すのには、剣士も要るなこれは。
まぁこれから行くのは剣闘士の卵や鶏の巣だ。
毎日のように俺らも行っているが、あそこは大丈夫だろう。
我が子らもあそこなら安心だ。」
◆
王国は謎の魔物が現れてはいたが、概ね無事と言ってよかった。
龍神の発生位置は東北東、王国は北西部に位置しているので距離もかなりある。
そうは言っても気まぐれに光の玉が飛んでくる可能性があるので、絶対に安全とは言えないのだけれど。
貴族街と商業街の端、元戦地となった場所に建てられたサシュマジュクの屋敷から更に奥を整えられて建てられた学校。
そこには、ラルフが剣闘士としての褒賞で連れてきた子供達が学んでいる。
サシュマジュクの考えでは連れてき始めの方、自分の学校に通わせようとした。
建物を家として使わせて、基本的な勉強をそちらで学んでもらおうと。
しかしながら、彼らの血は濃いようで、よくありがちな転校生への「歓迎」を返り討ちにしていった。
実際指導に秀でているブランドやルーベンス、シャルルの目から見てもかなり剣の才能があるらしく、午前中の基礎的な勉強の後は選択制にする事にした。
魔法や商業的な知識、剣術の専門家が何故だか隣の屋敷住んでいるし、寮母のリナは始祖の魔女と言われているし、用務員のランド、寮長のキャオは一流の剣闘士だった。
なんだかんだ結局、基礎を横並びで覚える時期が終わると、各々勝手に師匠を見つけて学びだしていて、スポンサーのティナとラルフが潤沢過ぎる資金を置いていったことも加味すると、新設とは思えない水準で教育が行われていた。
その中でもレッド、アメ、そして名前のない子を纏めていた何人かの生徒は、サシュマジュクから見てもかなりのペースで知識を吸収していて、南の学術都市でも問題なくやっていけるのでは?と思えるほどだった。
村のキャピついた凶悪な魔女の中で子供が育つ事を危惧したリナリーンも感心するほどで、自分たちの仕事があるから村を離れる訳には行かないが、朝晩の送り迎えで子供を通わせていた。
龍のエアリスの送り迎えは王国でいつの間にか受け入れられていて、その裏にはティナがラルフのせいにしたのもあるし、過去にラルフが龍を駆る姿を大勢に見られていたのもある。
「あら、久しぶりね。
どうしたの、とは聞かないわ。
例の魔力ね。
何があったかわかる?」
寮母のリナは流石に気がついていて、キャオとランドは既に街で何体も魔物を斬り倒していた。
現れて数日しか経っていないが、イカれた剣闘士はレッド達を連れて魔物を探して練り歩くのが日課になっている。
そんなに強くない斬っても問題ない人の形をした教材とみなしたようだ。
普段の訓練も対人向けの高強度なものが多く、それもそのはずで、寮母のリナを除く全員の意識は、将来親のラルフを助ける為のものだった。
実子を救ってもらったキャオ、ランド。
国一つに喧嘩を売り、自分達を助けてくれたと感じている子供達。
彼らが自分たちに課した存在意義は、将来自分たちの様なものを助ける為に無茶をするであろう親、ラルフの為に全てを賭す。
自分たちだけでも、ラルフに汚れ仕事をさせなくとも、国を相手取れるように鍛える。
そんな激ヤバ思想軍団に育った彼らを見たら、ラルフは、せっかく助けた子供達が過激派武闘派ラルフ原理主義者のヤクザの集まりになっていたと嘆くかもしれないが、もう遅い。
話を聞いた彼らは、いつ用意したのか揃いの白い服に着替えて、リナリーンとは別のルートへ旅だった。
ラルフの布教を目的とするならば、自分達がやらねば誰がやるのか。
ティナから商業を。
シャルルとルーベンスから剣術を。
サシュマジュクとシーから魔術を。
そんな集団が移動を始めた。
止める人は居ない。
だって神になっちゃったし。
説得力増しちゃってるし。
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