第224話 バースデー
やぁ、僕は神様!
君も生き返らせちゃおうね!
龍神の被害はかなりのものだったようで、龍神に殺されたリストはハジけた海外旅行のショッピングモールでの買い物レシートより長い。
生き返ってもすぐ死ぬかもしれないけど、気にしないで!僕がまた生き返らせちゃおうね!
「えぇ…それは悪神ですね…。」
「…目がバッキバキだよ、ラルフ。
神様ってみんな変なの?」
「心外です。
私はまともな神様ですが…。」
「地上はぐちゃぐちゃになってるのに、ゆるゆるなんだもん、ヘンテコだよ。
あと僕が知ってるもう一柱の神様は地上を現在進行形でぐちゃぐちゃにしてるから。
…神様の営みに他を巻き込まないでほしいよ。」
それはほんとにそう。
まぁ聞いてよ。
必要なんだ、この作業も。
「ちょっと!
死者がとんでもなく増えたと思ったら流れがおかしくなったんだけど何か知らない!?」
やあ、タナ!
僕は神様!
みんなを生き返らせちゃっているよ!
「…ラルフちゃん?
なにしてるのよ。
っていうか神様になったのね。
ラルフィードがやらかしてずっと近い状態ってのは聞いてたけど。」
あ、聞いてたのね。
うん、これからもよろしくね。
「うん、よろしく。
…いやいやいやいや、それどころじゃないのよ。
人が死ななくなってるの!
地上で!
めちゃくちゃよ、それ!」
そうだよ。
正確には
死んだ先から生き返らせてるんだよ。
一部を除いてね。
「なにそれ!
悪人とかを避けてるの?」
ん?
ううん。
悪人とかわからないし。
それよりもタナ、お願いがあるんだ。
ティナに連絡をとって欲しい。
◆
世界の終わりだ。
空が光ったと思ったら遠くが光った。
とてつもなく大きな雷が鳴ったのかと思ったが、直前のパパの慌てようから違うのがわかる。
いきなり遺跡に連れて行かれた時は驚いたけど、どうやらラルフが守るように計らってくれたようだ。
「ラルフが指示して遺跡に逃げ込んでなかったら全員死んでたな。
良かった、教会の下に遺跡があって…。
しかしこの様子では外は…。」
もう地下のようなところにいるので具体的に外の様子はわからないけど、ズシンズシンと揺れているから、まだあの光が降って来ているのだろう。
その後、恐怖で狂った体感ではかなり経ってから皆んなで外に出た。
地響きも止んだし、ここに食糧等がないので、見計らって出る必要があったのだ。
ここはガナー。
世界有数の大国の中でも主神を祀るガナー大聖堂が聳える風光明媚な都市だ。
それが何も無くなっていた。
辺りを確認しようと死魔法で霊を呼び出そうとすると、今まで見たことが無いほどの数が集まって来た。
星のように浮かぶ霊、霊、霊。
…皆んな死んでしまったのか。
少なくとも何万人が押し寄せてた祭り騒ぎの最中だったそのほとんどが。
私たちは百人にも満たないくらいしか残っていない。
パパ…。
「あぁ。
…ラルフが助けてくれたのだ。
…ラルフはどこだ?
目印かなにか残っていてくれればと思っていたが、この様子ではな…。」
頭が回らない。
何が起こったのか、これからどうしたら良いのかも分からない。
そんな時、ずっと首から下げていたペンダントが光った。
ママの形見らしく婚約の証だったようだが、墓に納められていたのを貰ったのだ。
内緒で。
ママには話したけどね
「なぜそれをティナが…?
いや、それはいい。
神聖な光を感じるぞ、ティナ。」
ママだ。
なんとなくわかる。
長いこと同じ身体を共有していたから。
「ティナ、ティナ、私よ。
聞こえる?」
うん。
聞こえる。
「ラルフちゃんからの伝言よ。
ティナに伝えて欲しいって。」
なに?
無事なの?
ラルフは。
「今一緒にいるわ。
神域にいるから無事と言いたいところだけれど、私もよく分かんないの、ごめんなさいね。
それより伝言!
これからラルフちゃんが龍神に殺された人を生き返すから、喧伝してって。
ん?何?
えーっとね、生き返らせてるだと醜聞が悪いから守っているって言ってって。
なによ!
同じじゃない!」
なんか大丈夫そうだ。
それより生き返らせる!?
意味わかんないけど、多分本当にやるんだろうなぁ。
そういう弟だ。
つまりラルフが人々を死なないようにしてくれているから、それを宣伝してまわればいいのね?
なーんだ、いつもやってることじゃない。
おねーちゃんに任せなさい。
「ん?
えぇ、先にリリーディアを生き返らせるから、移動に使ってって。
リリーディアには話してあるからって。
ピリルルちゃんがお願いしたんだって。」
ふむふむ。
それなら絶対大丈夫。
リリーディアは気まぐれなところがあるけど、ピリルルのお願いだけは破らない。
ブラコンなんだから、本当に。
信じらんないわ、ブラコンとか!
家族にあんな!
私は血が繋がってないからセーフだけど!
でもラルフもまどろっこしいことをするわね。
ママ、ラルフに伝えて。
生き返すタイミングは明け方にしてって。
そして出来れば、足になってくれる龍をもう1人お願い。
死人なら私は何人でも話せる。
生きている人はアンヌに任せた方がいい。
特にアンヌはラルフとセットで布教済なんだから、その方が絶対効率がいい。
「なんじゃ?
ティナちゃん。
ラルフがなにかやっているのか?」
トランブレーおじいちゃん。
んーとね、ラルフがみんなを生き返すから、ラルフを布教してって。
それで、私は霊の子達を、アンヌに生きている人達や生き返った人達をお願いしようとしているの。
「ふむふむ。
ならば土魔法使いは欲しいとこじゃな。
ジェシーと共にワシが出よう。
そうすればアンヌと同じ働きが出来よう。
もう1人、アンヌについて行く土魔法使いが欲しいところだがのう。
しかしなぁ、相当な実力が無ければいけないし、ラルフを知らねばならないがな。
どデカい像なんか建てれば説得もしやすかろうが…
死者もそういうものに集まるからな。」
なるほど。
でも、そんな知り合い居ないからなぁ。
ラルフを知っていて、土魔法のエキスパートなんて。
うちの人達だれも土魔法上手くないし。
「あーティナ、兄よ、性格は問わないのだな?
それは。」
もちろん。
「ならば魔女の村へ向かえ。
リナリーンという魔女がその条件に適している。
…ダメな女だが、ラルフを気に入っていたからな、協力してくれるかもしれない。」
あー!
ラルフを拉致ったおばさんね!
「絶対本人におばさんなんていうなよ。」
言わないわよ。
え?なに?ママ。
行くならイケメンを連れていけって?
…バカね。
そんなギャンブルしなくたって、見知った好物をぶら下げた方が馬は走るわ。
ラルフが後で接待すればいいのだもの。
◆
うわっ。
「どうしたの?」
風邪ひいたかも、なんか首筋がぞわっとした。
「神は風邪をひきませんよ。」
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