第214話 ガール
結局なんでこんな大盛り上がりしているのかわからなかったが、教会内に一歩入ると全て分かった。
考えてみたらヒントは沢山あった。
ここまでするとは思わなかっただけだ。
何故お父さんとシャルルさんがこの街に来ていたのか。
何故準備で死にそうな程に忙しい人が居るのか、そしてその人たちが僕が到着するだけで暇が出来るのか。
何故待たせちゃいけないなんて事になるのか。
何故叔父がべしょべしょに泣いているのか。
親族がいて、準備が忙しくて、人を待たせちゃいけなくて、よく知らない親族がべしょべしょに泣いている。
ご存知ですね。
そうですね。
結婚式ですね。
…誰の?
あ、僕の?
対戦機会を逃さない様に先回りしてるんだと思ってたよシャルルさん。
よく考えたら一緒にお父さんもいるの、意味わからなかったものね。
それならそうと言って欲しかったなぁ、こんな到着して、囲んだ群衆に手を振ったらすぐに教会の祭事場に連れて来られるなんて思わないじゃん。
いいの?おたくのお偉いさん、もうベロンベロンに酔ってるけど。
まさかこんな、孫娘のプロポーズやらなんやらのキラキライベントを無視して先に進めるなんて想像してなかったよ。
あぁ、かわいそうにアンヌ。
夜景の見えるレストランで、結婚しようって言われたかっただろうに。
よくわからないまま控え室に通され、よくわからないまま白い服に着替えさせられていると、恐らくよくわからないまま連れて来られた花嫁がやって来た。
ベールで顔が隠れているが、悲しんでいないといいなぁ。
着付けを手伝ってくれているメイドさんに、結婚って何歳から出来るようになるのと聞くと、年齢制限などはないようだ。
貴族制だからなのか、政治の問題なのかはわからないが、大丈夫か?それ。
大人になって嫌になってもどうしようもないのかと思うが、成人後に本人の意思のみで離縁出来る制度もあるらしい。
いや、使ったら大変な事になるでしょ、その制度。
「意外と大丈夫なんですよ。
と言うよりも、流石に本人の意思をまるっと無視して結婚なんてそうそうありません。
それにほら、男がダメな資質を持っていても躾ければいいですから、ね?」
教会に居るメイドさんなだけあって、おっとり優しそうな人だなって、そう思っていたのが間違いだった。
暗殺者かなんかの目をしてた。
そういえば、この世界は姉さん女房が多い気はしていた。
あと、尻に敷かれすぎてる人も多い。
文化的にそれが当たり前になってて、夫奴隷化メソッドが確立されているのかもしれない。
失礼、夫を教育するカリキュラムと言い直します。
アンヌは部屋の隅で座っている。
なんだかややこしい服なので、あまり動くのも憚れそうだ。
これからまた、意味のわからないまま大勢の前に引っ張り出されるんでしょ?
公開結婚式なんてやってらんない。
せめてもと思い、メイドさんに頼んで飲み物を貰い差し出すと、ありがとうと受け取ってくれた。
…ん?
あの、ベール上げてもらっても構いませんか?
…ん?
あの、どなたですか?
え?
ジェシー?
あ、よろしくお願いします。
…え?
え?
ええ?
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