第209話 グロと告白
なんでも良いって2度と言わない事にした。
今回はサッカーを上手くしてもらった。
え?
この世界にサッカーがあるのかって?
ないよ。
邪魔にならないものにしただけだ。
今回必要な能力はもう、前世の自分が修めてくれている。
変な影響も受けたくないからこれにしただけだ。
説明は大変だったけどね。
要は屈強な男たちがタマを足でいじくりまわして目標物にブチ込み快感を得るスポーツ(アンサイクロペディア調べ)だ。
たとえ世界一の実力があろうともこの世界で役に立つことは無い。
もっと言えば、暴走することもないだろう。
結局神様はきちんと用意していてくれた。
汎用皮膚と毛髪のシートがいつの間にか兵舎のデスクに置いてあったのだ。
大変見た目はグロく、丁度お昼時でランチトレーを運んで来た所だったので、食欲が無くなった。
いや、無理やり食べたけどさ…。
お肉はキツかったなぁ。
自分の体で分かっていた通り、減った分を魔法で再生する事が出来るので、実質無限に使える。
使い方を知らないとただのグロいハンカチだが、僕にとってはとても有用なアイテムだ。
これを貰えなかったら、自分の皮膚と頭皮をひっぺがして使おうかと思っていたが、そうならなくて本当に良かった。
人に見せられない姿になる所だった。
アンブレラ社も関心を寄せるであろう肉シートのお陰で準備が整ったので、遺伝性の病気に対処するべく、教会本山の街ガナーへ行ける。
が、ちょっとお父さんに話しておかないとなぁ。
いざ治療を始めますよって時に息子がこんな悪魔召喚みたいなものを取り出したら卒倒するって。
魔法があると便利なのは、療養期間の短さと、定着も早い事なので、手術自体はそんなに大掛かりにはならないけれど、1人ではなかなか難しい面もあるので手伝って貰わなきゃいけない。
現実的にこんなものを見ても僕を疑わない医者はお父さんだけだ。
神様も気を遣ってハート柄とかにしてくれたら良かったのに。
ダメか。
ハート柄の人が出来ちゃうか。
「何だ、話とは。」
落ち着いて見て欲しいんだけど、これ。
「ぐっ!
悍ましい!
何だこれは…。」
呪いで作られた汎用皮膚と毛髪だよ。
生まれつきそうな人を治せると思う。
「…おぉ、そうか。
いや、食後でよかった。
根源的な拒否感があるな。」
そうなんだけど、必要な物だから。
でもお父さんにしか見せるつもり無いんだよね。
あと、お父さんには伝えておかなくちゃ行けないんだけど、僕、ティナ、お父さんは神様に身体を貰ったから、厳密には純粋な人じゃ無いんだって。
ちょこっと神ボディなんだって。
だから僕らの身体から移植すると、拒否反応は起きないらしい。
誰にも知られちゃいけないけどね。
素材として扱われないとも限らないから。
「…あぁ…。
…?
なんで私とティナもそうなんだ?
お前は神の子だからまだ理解はするが…。」
そういえば有耶無耶にして言ってなかったね。
ティナは何処かで産まれて生き延びていた孤児を僕が見つけて連れて帰った訳じゃないんだ。
「えぇ…。」
胎児のまま幽霊になったティナが石碑を鎮魂する精霊になってたから、神様にお願いして生まれ変わらせて貰ったんだよ。
だから本当の身体っていう物は元々ないの。
だから僕と同じ、神様謹製ボディなんだ。
「えぇ…。
通りでうちの子達はとにかく可愛いと思った。」
いや、それは色眼鏡が過ぎているだけ…ではないか。
作り物だから2人とも均整が取れ過ぎてるからね。
僕に至っては神様モデルだから。
それでも親の欲目で増してるだけだと思うよ。
「…ん?
いや、まあ、理解は出来ないがとりあえず受け入れよう。
可愛い子供達というのは変わらないしな。
私は?
なぜだ?」
…どうすっかな。
若返ったのは僕を育てる運命だ!って思い込んでるから、本当の事を言うのが憚れるな…。
お、お父さんが僕らを育てやすい様に若返らせた時に、つ、作り直されてるんだよ。
「おぉ!
そうか!
やはり神はお前の為に私を遣わせたのだな!
わはは!
嬉しいことだ。」
…嬉しいの?
「もちろんだ。
親になると言うことは、私は元々子供のためだけに生きる様にする事だと思っている。
だから神がどう思っていようがスタンスは変わらないが、それを認めて貰った様な物だからな。
嬉しいし、光栄だ。」
そうか。
凄いな。
…あ。
それについてもう一つ伝えたいんだけど、すごく言いにくい事が…。
「なんだ?」
お父さんは元から神様から認められるくらい神性が高まっていたんだって。
それこそ、死後神に会えるくらい。
「うん?
うん。」
でも僕が可哀想ってだけの、ある意味わがままでティナを生まれさせた訳なんだけど、その、お父さんの神性を使ってしまったんだ。
勝手に良いって言っちゃったんだ。
だから、ティナは本当にお父さんから引き継いだ身体で、調べてもきちんと親子って出ると思う。
半分はエマさんの神性を僕を通して使っている筈だから、正真正銘2人の子供なんだ。
でも、それでお父さんの力を使い切ってしまったから、もう人生懸けても足りないくらい器が空っぽになっちゃって…。
「あぁ、そんなことか。
いや、構わん。
ありがとう、ラルフ。
なんど想像したことか。
自分が代わりに、とな。
もう、本当に何度も何度もだ。
ティナが生きていてくれるなら死んだって良かったのに、育てる機会も貰えた。
これ以上の望みなどないよ。」
…なんとなくそう言うとは思っていたけど、やっぱりお父さんの人生を勝手に前払いさせたのは申し訳なくて、言えなかったんだ。
「前払いか。
そんな安いものじゃないぞ、ティナは。
これからも家族で仲良くしてくれたら、何も望みはしない。
自慢の子供達だ。」
…うぅ、あばば。
危なかった。
涙が出そうだった。
涙が悍まシートに溢れる所だった。
…怪物とか生まれそうで怖かった…。
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