第208話 こんなんなっちゃった


何でも良いと言ったら、能力がデコピンになりました。

そんなバカな話ある?


気を遣ってよ、少しさ。


あ、何にも浮かばないんだな、これがおすすめだからこれにしておこう。

とかさ、あるじゃない。


お土産なんでも良いよって言われてもタペストリーなんて買わないでしょ。

あの神様は買うタイプって事だね。


…地味に拳術以来の物理攻撃かもしれない。

単発のアクションだけの能力なんて初めてだろう。


…試さないと危ないよな。

なんせ神様の能力は発動条件すらガバいときがあるから、うっかりおでこに指を持ってきた時点で大爆発が起きる可能性もゼロじゃない。



とりあえず素振りで振ってみるが、別に何も起きない。


おでこに指をトントンあてても何も起きない。

…大丈夫なやつか?


大丈夫か、ともう一度トン、とした瞬間に目の前が真っ白になった。




「ラルフはそっち派ですか。

私は人差し指と薬指で土台を作って、中指でパチンとするタイプでしたね。」


はぁ、つまりなに?

中指を親指に引っ掛けて弾く動きでは発動しなかったけど、最後の一回はうっすら人差し指と薬指がおでこについていて、その状態で中指が触れたから僕は死んだわけ?


「そうです。」


おまっ…神様さぁ、じゃあ握手とかする時に中指が遅く相手に触ったら条件を満たす?


「そうです。」


頂きますって手を合わせて、中指が遅れたら、左手吹っ飛ぶ?


「えぇ、もちろんです。」


何してくれてんだよ。

中指なんてよく動くんだから全然日常で最後につく事なんていくらでもあるよ。


「たしかに、危ないですね。

良かった、何か起こる前に召されて…。」


脳みそぶちまけたけど、死なないやつで良かった…じゃないんだよ。

えぇ、これから掃除するの?


「いえいえ、私が回収しておきますよ。」


確かに死体があったらダメなら時は回収してくれていたよ?

今までもさ。


けど、そろそろ神様は自分が雑だって事をわかって欲しい。


「そんなバカな、私はアフターケアも完璧な運命の神様ですよ!」


いやさ、今まであんまり言ってこなかったけど、肉片とかは残っちゃってるのよ。


あとでベーコンみたいな状態で何度も見かけているの!


周りはいいよ!

知らないからさ、なんだか分からないだろうから。


僕は自分の肉片だ…って毎回なってんのよ。

朝起きて見つけた時なんて最悪だよ。


嫌な気持ちになるって。


それとなに?

能力なんでも良いよって言ってデコピンにされる事なんてある?


びっくりしたよ。

人間だった事あるでしょ?


お土産買ってきてねって言われて何を選んでたのさ。

教えてみ?

ん?

ん?


「いや、そりゃあ何でも良いわけですから、その地方特有の木彫りとか…。」


いらねー!

タペストリーよりいらねー!


値段もまぁまぁする分タチ悪い!

笑わそうと思って買ってたの?


「そりゃあ笑顔にはしたかったですよ。」


笑わせたいと笑顔にしたいは結果は同じでも全然意味が違うんだよ!


「そうですか?

結構喜んでくれましたけどね。


多分本山に行ったら残ってるんじゃないかなぁ。」


あ、神様だった…。

僕はもうフランクに接しすぎて麻痺してるけど、神様から貰った木彫りはもう聖遺物だ。


でもでも、人間時代は?


「きゃーって言われて大喜びしてくれましたよ?」


あぁ!

顔と人柄が!

良いから!


誰だ甘やかしたの!

叱れ!

こんなんなっちゃたぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る