第207話 おぞましいですね


さ、おぞましい実験になるね。


僕は一体なんなのか。

まず父母がいない。

前世の身体を元に作られてはいないので、現状謎ボディだ。


始めは似せてあったけど、今はもう別人。

神様に似ているけど、自分くらいしかモデルがいなかったと言うだけの理由だ。


そして、僕は神様に幾度となく改造されている。


能力と呼ばれるソレは、始めはサービスだったが、現在は神様のミスで死んだら生き返るという現象になった僕を人間に固定する為に必要な処置だ。


それを怠ると神になるか精霊になるか、神様にも分からないらしい。

やっちゃったって言ってたね。


本当にね。


その能力は中身が変わることもあれば、いきなりムキムキマッチョマンに変わることもある、かなり影響が強い物だ。


なのに僕は僕のまま。


変化させやすく作られているのだろうか、神様がどんな力を使って変化させているか分からなかったが、呪いを考えるとこれなのではないかと思った。


神様は運命神と呼ばれ、歴史上唯一呪いを自在に操るスーパー魔法使いだったらしい。


それで僕を呪いの影響を受けやすいボディにする事で、辻褄を合わせたのだろう。


龍は95%が魔力体だが呪い様に強制的に変化させるのに抵抗できる。

逆に言えばほぼ魔力体だから、自分の身体を操る術に長けているということだ。


人は25%くらいが魔力体で、変化はし難いが抵抗は龍の4分の1ほどしかない。

しかし、肉体という記憶装置の割合が多く成長が出来る。


僕は間違いなくそのどちらでもない。


根拠もある。

本来一気に若返ったり、歳を取るレベルの聖魔法、死魔法は歴史に残るレベルの才能か、能力のドーピングが必要だ。


数歳ずつなら無理矢理力押しでいけるが、普通はそんなこと出来ない。


神様のガバポイント2つ目だ。

今になればガバいと分かる。


僕とお父さんだけ、異常に変化しやすい。


考えれば、お父さんも神様にもらったボディだ。


僕に巻き込まれて召されて、ノリでその年齢のまま戻されたのだから。


その前の治療として聖魔法をぶち込んだ時は、徐々に若返っていたがその後はティナの死魔法でポンポンお爺さんに戻っていた。


これをやれるのは僕とお父さんだけだ。


ティナは死魔法の歴史に残る天才だが、それにしてもである。


こりゃもう神様のガバさを疑った方が経験上早い。


と言う考察なんだけど、どう?

あってる?


「…え?

言いましたよね。


サシュマジュクが個人で受けていた神気を使って体を作るって…あれ?

言ってませんでしたっけ。

ご褒美って。


ちなみにティナもですよ。


あぁ!

そうだ!

ティナを形作る時にサシュマジュクの神気を使い切って、彼は神性を失ったんでしたね。

あっはっは。」


あ?

何笑ってんのさ。

ご褒美とは言っていたけど…そう言う事だったのか。


つまり僕ら3人の体の材料って、神気って事?


「そうですよ。

肉体が40、魔法体が40、神気が20くらいの割合てすかね。」


そうか、やっぱ変な身体だったんだなぁ。


ところで、例えば僕の体の一部を人に植え込んだらどうなるの?


皮膚とか髪の毛とか。


「さあ、厳密に言えば人ではないのでねぇ。

人の働きをする代用品ですので。


普通に働くんじゃないですか?

え?

拒絶反応?

なんですそれは。

…はぁ、なるほどね。

自分のもの以外は異物として認知されるのですか。

気にした事なかったですが、今まで大丈夫だったので、平気では?


神気ってほっといたら人としての肉体に飲み込まれちゃいますし。

ほら、呪われたからって自家中毒で死んだりしませんもん。」


え?呪いも神気なの?


「そこからですか?


自然発生した場所も聞きましたよね。

初代リナリーンは溜まりで幼龍を殺しすぎたと。

溜まりって、神気溜まりですよ?

うっすら光っているからそう呼ばれたのでしょうがね。

神気って呼ばれていますが、生命のスープみたいなものなのでね。

環境に影響を受けやすいんですよ。

はぁ。」


なんでこいつこんなことも知らないのって空気出しているんだ…?


「さ、次の能力は何にしますか?」


えー、もうなんでも良いよ。

でも、欲しいものがあるんだけど。


「何です?」


移植用の毛の塊と皮膚の塊


「おぞましいですね…。」


人から剥ぐよりは良いでしょ。

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