第205話 ダイジョーブ?


さっぱりわからない。


センスが無いのだろうか、常識が邪魔をしているのだろうか分からないが、この身体の中だか外だかにあるはずの魔力体とやらを感じることが出来ない。


理屈は分かる。


肉体に作用するには限度がある現象を何度も目にしている。


龍が人になったり、人が竜になったり、女が男になったりを、見て来ている。


変身する際はフワッと光り、それが変身後の姿を形作ると完了している。

つまりアレが魔力体なんだろう。


呪いと呼ばれる技術は、人間にはちょびっとしかない魔力体に干渉することで、本来なら遺伝子等で決まる体の設計図を無理矢理捻じ曲げる事が出来るものだと推測した。


遺伝子を知っている分有利かと思いきや、そんな事はなかったようだ。


これはやはり師匠が必要だなぁ。


僕の技術で咄嗟に使う剣と土魔法と聖魔法、死魔法はきちんと教えてもらったもので、他の属性も使えるし、能力としていたので一度貰っているから、才能がある状態になったはずなのにさっぱり使いこなせない。


0から生み出すのは下手くそなんだなぁ、多分。


魔法使いにドレスとガラスの靴を用意してもらったのに踊れない、みたいなもんだ。


シンデレラは育ちから考えると踊りなど習ったはずがないのに、初めから踊れた。

そういう創造的な部分が欠けているのだ。

努力は出来るけど発想が貧困だ。


社畜の鑑だね!


幸い周りには騎士のエリートたる聖騎士がたくさんいる。

強力な聖魔法でかき消えたってことは性質の中には呪いも入っているという事だと思う。


相反したら消えるなんて事はないはずだ。

近いから干渉できると考えた方が自然だ。


そういえば、大人になったりする時も光って形作ってるなぁ。

もしかしてあの感じを無理矢理捻じ曲げれば出来るのかもしれないけど…。


あれはただ無理矢理成長させているだけだと思っていたからそんなに考えてなかったなぁ。

自分の延長線上だからね。

でも子供が大人になるのに、足りない成分は山ほどある。

アレも呪いのサンプルとして頭に入れておこう。


翌朝、到着したお父さんに呪いのことを聞いてみる事にした。

もしかして、治療に使えないかという方向性でだ。


「ほう、呪いを治療に。

…うむ。

変化させるという事は性質が変わるという事だから、言いたい事はわかるぞ。


生まれつきや体質での不良を改善しようというのだな。


しかし現状では難しい。

ラルフと同じ発想で研究しているものも過去には沢山いた。


ラルフの場合強い聖属性魔法を持っているから大きな問題にはならないだろうが、本来まるっと変化させるのは危険で、本人が動物になって元に戻れなくなった事もある。


『かしこいこねこのルーチェ』という絵本があるだろう?

あれの元だ。


呪いで変化して魔力をあやつれなくなる事もあるだろう。


自分で自分に試すのはやめておいた方がいいな。」


そうかぁ。

1人遊びで成長出来ないものは苦手だ。

才能があっても性質が向いて無さそうだ。


自分で確かめられないなら、変化の辛さとかも分かってあげられないからなぁ。

いきなり他人に試すのは抵抗ある。


「何を言っている。

私にかければいいだろう。

もし不具合が起きたら、お前が治してくれる。


なんの問題もないだろう。」


いや、あるよ。

痛いかどうかすら分からないものをお父さんにやりたくない。


自分がキツいのは平気だけど、家族が辛いのは嫌だ。

そっちの方が苦手なんだ。


「甘えるな。

発展に犠牲は付き物だ。

それを私が担うのは誇りだし、信頼出来る相手がやってくれる。


そうだろう?

万全を期してくれるだろう、お前は。」


そう言われては何も言えない。


でも、発展ニ犠牲ハツキモノってのは口に出さないで欲しかった。

それ、30%くらいしか成功しないタイプのやつだから。

そういうやつなのデース。

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