第203話 問診祭


だんじり祭りでももう少し大人しい御輿だろうなぁ…。


わっしょいわっしょいと連れ去られるリンキーを見ながら呑気に考えていると、ユダが発した一言で状況は一変した。


「ラルフ様が作ってるらしいっすよ!

ここにはどう頑張っても10人分しかないんすよ!


あっちに掛け合った方が確実っす!」


わぁ、祭り会場が動いている。

くそっ訓練されていやがるぜ!

偉いっぽい人の陰に隠れようとしたが先回りして包囲された。


正直作ってあげるのは構わないんだけど、実家の資金と外交に役立っているらしいからばら撒くのもなぁ。


あ、そうだ。

エリズさんの時みたいに、傷病者にのみにしよう。

怪我や病気が原因の場合、エリフサーだけでは毛は生えない。

丁度いいから僕がいる時にしかできない治療をしていけばいいじゃない。


隊長さんはどこだ?

まとめ役が必要だ。


…ああ、豪華な兜の人も祭りに参加中か。


幸い今は目がとてもいい。

上から見ながら兜を脱いでもらおう。


おう、うすだいだいいろだ!


んー、でもフサフサの人もいるね。

…親族用に欲しかったのかな。

聞いて見ようかな。


土魔法の柱を何本が気になる人の真下から伸ばして顔を合わせる。


貴方達は必要なさそうだけど…なぜ欲しがったんですか?


「あ、いや、俺は、あの、高い薬だと聞いて…。」


はいギルティ。

転売する気かよ。


はい、しっかり捕まってね。


柱に取っ手を生成し捕まったのを確認したら手首を固定して高速で上下に動かしてやろう。

この世界初の絶叫アトラクションだよ。

楽しんでいってね。


それで、貴方は?

「は、婚前の妹が悩んでおりまして。

皮膚病からの影響なのでしょうが、現状手立てがなく、藁にもすがる思いで。」


それは可哀想だね。

病気が原因なら協力出来るかもしれないなぁ。


ガナーに住んでるの?


「は。」


そっかそっか。

あ、これ持っててね。

土魔法で作った花だけど、後で目印にするから。

本当は全員治してあげたい所なんだけどさ、材料も時間も限られてるから。


「…は。」


そっちの貴方は?


「…将来の為に…。」


うーん。

その時になったら相談してね。

薬って無限に保つものじゃないからさ。


そちらは?


「…娘が一切毛が生えない病気なんです。

髪はもちろん、眉毛やまつ毛も。」


…そっか。

そりゃいるよなぁ。

遺伝子異常の病気で、そもそも毛根が存在しない場合がある。


その場合エリフサーでもどうにもならない。

でも少し前から考えてはいた。


おっさんのハゲじゃなくて、先天性の子供を治せないだろうかと。

前世では専門に研究している人達がいたが、遺伝子が原因な以上難しい。


今世では可能性はある。

人の性質をまるっと変えてしまう方法があるのだから。


…はぁ、一回死ぬしかないな。

次の能力は呪いにしなきゃな。


まぁ、その前に傷病者を治療して回ろう。

今夜寝る前に召されちゃおう。


はい、フサたちの相談は終わりました。


次!


国とか家族とか民衆とか、誰かを守る為の怪我で毛が無くなった方、手を挙げてください。


今ある薬も30人分はあるし、場所さえ確保したら増やせる。

なるべく治してあげたいし、大きな街だから、ここでも小児科を整えたい。


丁度お父さんも近くにいるしね。

その為のお手伝いを頼むにも役に立つかもしれないから、なるべく多く治してあげたいな。


怪我人を優先するけど分かるんだよ、一応。

どういう原因だろうと気にする人は気にするし、気にしない人は気にしない。

別に髪の話だけではないけれど、心を病むくらい悩む人もいるんだ。


僕が取り除けるならそうしたい。


なんでそんなに詳しいのかって?

医者の不養生という言葉がありましてね…。

セーフだったけどね?

アウトかセーフかでいうとね?

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