旅 治療

第202話 神の薬


えっと…ここがツェ…なんとかっていう所かな?


名前からどんな場所か想像できなかったが、どうやら演習場のような所らしい。

ここまで何にもなかったから、多分ここで合っていると思うのだけれども。


丁度入り口に兵士がいるから聞いて見ようかな。


すいませーん

ここって…ツェ…おふん、えふんレーンですか?


「お?坊主、旅してるのか?

そうだぞ。

ここが…えーと、駐屯地だ。


ガナー大教会を目指しているのか?」


兵士にも名称が定着していないじゃない。


あ、そうです。

ガナー大教会っていうのか。

教皇様に会いにいくんですよ。


「あっはっは!

そうか!

会えるといいな!


ここからは今来た道から逸れて、別の道へ行くと広い道に出るからな。

来い、案内してやるよ。

おっと、一応身分証を見せてくれるか?」


さて、どうするか。

今僕はおそらく旅の教皇ファンだと思われている。


僕の紋章を出せばおそらく迎えが来ちゃう。

厳密にはもうここは教会地区なので、ゴールしていると言っていいから、わざわざここからリスクをかけさせないだろう。


まぁ一択なんだよなぁ。


僕は神職者用の紋章を出すと、納得したようだ。


「坊主、保護者の印とかもあるか?

長旅だったなら一応持たされているだろう?

ほら、おっちゃんも一応兵士だからさ、報告とかいるのよ。」


確かにそうだね。

あるよ!

ちょっと待ってね…。


えーっと、ん?

どれだ?

どれがお父さんのやつなんだ?


6個あるのよ、証明用の紋章。

そのうち3つはジェマ、シャルル、ペリンらしい。

手紙にはその3人しか書かれてなかったが、明らかに意匠が違うので、別の人物だろう。

多分ギリギリに届いたのだろうなぁ…。

説明になかったもの。


剣と龍はベリンさん。

白い花と聖騎士団の紋章と剣はシャルルさんだろう。


…お父さんはなんだ?

間違いなく白い花がついているやつだというのはわかる。


じゃあこの剣と盾のやつはブランドさんとかかな。

もう渡したけど、神職者が銀の花の紋章。


残りは、

A、シンプルに大きく白い花に放射状の模様が入った紋章。

B、白い花に建物のようなものが書いてある紋章。

C、これは確実に違うけど、ひび割れた模様に楔文字みたいなものが入った紋章。


お父さんはあまり華美な物を好まないので、花と魔法を表してAかもしれない。

しかし、学校の長をやっていた事を考えるとBの可能性もある。

Cは、なんだろうな、多分違うけど一応見せるか…。


…全部見せたらいいか。

保護者印みたいな物らしいし、大事にはならないでしょ。


はい、どれがどれだか説明を受けていないので、この3つを見てください。


「ありがとう。

それじゃあ見せてもらうよ。

記録もさせてもらってもいいかな。


どれどれ…

なっ!

尊き神子の導き手!ジェマ!

最大の学園の学園長を代々務めるロブ家!

そして!

龍王紋だ!

うわぁ!


召集だ!

皆!

隊長!


集まってくれ!

神子だ!

神子様が来たぞ!」


…えぇ…。


人を呂布みたいに…。


結局どれがどれだかわからないけど、お父さんとカルさん、そしてピリルルかリリーディアが預けて行ったのであろう龍王家の紋章。

勝手に人を身内にしていやがった。


リンキーさんが逐一報告をいれてるって話だったから合わせ技で僕の正体がバレてしまったらしい。


…なんで龍王関係も知られているのか。


姉か?

ティナの仕業なのか?


ぞろぞろとおっさんが集まってくる。

着くや否やもう祈り始めている人さえいる。


リンキーと姉の盛りに盛ったストーリーが流布されているからこんな事になってしまうのだ。


リンキーを撒いて来て良かった…。


「やっと見つけましたよ、マジで、龍神とドロンしちゃうとかナシでしょ。」


撒けてなかった。

…あれ?

どなた?


リンキーじゃないじゃん。


「いやいや、リンキーっすよ。

ちょっと事情があって髪は短くなったっすけど。」


リンキーはなんかロン毛の髪だったじゃん。

坊主やん。


「あそこに滞在するルールだっつってさ、やられたんすよ。

でも、ラッキーもあって、見失った反省と取られたらしくお咎めナシ!

プラマイゼロっすね。」


あ、そうなの。

いや、あれは僕も不可抗力だったからさ、ごめんね。

あ、これ、毛生え薬。

7〜10センチくらいはすぐ生えるから。

あげちゃう。

このビン一つで10人分くらいはあるかな?

頭に満遍なく塗るだけでいいよ。

薄くね。

強い薬だから。


「えー!

それ知ってますよ。

エリフサーってふざけ倒した名前なのに一本金貨2枚するんでしょ?


いいんすか?」


いいよ。

作ったの僕だし。

もし必要な人が居たら分けてあげてよ。


「俺はちょっとでいいっすもんね!


え?なんすか?

用事?

あ、ちょっと、引っ張らないで、痛い!

権利?

買取?

なんのっすか!

ちょっと!」


あぁ、すまないリンキー。

こんなところで大声で言うんじゃなかった。


おっさんの群れには居たんだろうなぁ。

エリフサーをふざけ倒した名前なんて言わない、紳士達が。


大モテじゃないか、良かったね、リンキー。


合掌。

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