第201話 犯人はお前だ!
しまった!
お父さんがいない!
クミンガ!
お父さんは?
無事?
「うす、なんか、引っ張られてどこかへ連れて行かれましたっす。」
なんだって?
不味いことになった。
何処に行ったんだ?
「おい、ラルフ、ナイスバトルだったけどよ、ジェマさんのところへ早く行った方がいいぜ。
…いや、もう手遅れかもな。
ちゃんと、お母さんって呼んであげてくれよ。
あぁ見えて寂しがり屋なんだからよ。」
うるさい!
貴様はもう2度と頼らん!
僕が手紙を出して、教皇経由で酒を入って来なくしてやるからな。
決して覆ると思うなよ、神の子全権を使ってやる!
「…ひどい。」
ひどくない!
シェイ!
お父さんしらない?
「…普段あまり使われない、聖魔法の使われ方と、そもそも珍しい死魔法の応酬。
そして、洗練されたシャルル様の聖騎士剣術と、ラルフ様の聖騎士剣術を感じさせながらも野生味溢れる我流剣術。
味わい深い戦いだった。
最後の決め手は聖剣の効力がマイナスに働いたのか?
いや、ラルフ様は確信を持って斬り入ったし、あそこまで年齢を上げる必要など無かったはずだ。
なにかしらの条件が?
しかしそんなことがどうでも良くなる程の基本鍛錬だった。
積み重なる時間に対する、若く感性に任せた剣戟は、芳醇なワインとフレッシュなフルーツの様で、どちらが良いとは一概には言えないな。
勇者ペリンは基本に忠実も忠実で隙を晒さない事に特化していたが、2人はそれとはまた違う趣があった…。」
あ、ダメだ。
俺は分かってるぜ系観戦者になってる。
寝て起きるまで治らないんだこういうのは。
はぁ、家かな?
玄関をくぐると奥からギシギシ音がする。
…あぁ、パピー…。
心臓が跳ねたわ。
トラウマになる可能性もあるが一応そっと覗くと、ウィメイラがベッドで足をブラブラさせていただけだった。
なんだか、ウィメイラの我儘を父性で優しく聞いているだけのようだ。
あー、閉じた所でお爺ちゃんに囲まれて育ったんだっけ。
甘えたいのか、確かに言動を振り返るとおませな女の子って感じだったもんな。
…ならいいか。
ウチのパピーは父性の塊よ。
存分に甘えてください。
「お、ジェマ様は無事だったか?
…あぁ、ウィー姉は生まれがあんなんだからな。
ここ以外じゃ気を張って生きてきたんだ。
タイプの男もな、なんかじじむさいというか、だから逆に婚期が遅れに遅れて居るんだけどよ。
俺らがここに配属されて居るのも、アイツのタイプじゃ無いのがデカいし。」
あぁ、3人とも子供がデカくなっただけだもんね。
「うっ、まぁ、そういうこった。
所でよ、お願いがあるんだけど…。」
なに?
お酒の件ならとりけさないよ。
「…それは自分で何とかするよ。
あの、あれ。
見える?」
嘘だろ…。
もうシャルルさんが起き上がっている!
治療もしていないのに、血塗れのまま元気に剣を振ってる!
「ラルフを連れてかないと、俺が相手しなきゃいけないからさ…ほら、さっきみたいに相手してやってくれよ。
親父、楽しそうだったし。」
そうか。
そうだね。
わかったよ。
「おぉ!婿殿!
良い立ち合いでしたな。
まさか剣の性格を突くとは思いませんでしたよ。
さ、次をやりましょう!」
…それなんだけどさ、ほら、モデリニさんがチラチラ見てるでしょ?
きっと久しぶりに会った父親に揉まれたいんだよ。
僕は今日もうやったけど、あんなにやりたがってる実子を差し置いては、ちょっとやりにくいなぁ。
「そうか!
そうだなぁ、同じ聖騎士団長にもなると中々立ち合う機会もない!
どのくらい強くなったのか、お父さんが見てあげましょう!」
「…は?」
さ、僕は今のうちにお父さんに挨拶をして旅立とう。
教会の本山に行くんだったそうだった。
うっかりうっかり。
お父さん、僕はそろそろ行くよ。
ウィメイラさんも元気でね。
「おお、そうか。
いや、大事にならんでよかった。
ウィちゃん、息子が行くってさ。
ほら、またねって。」
「またね、ラルフちゃん。
いや、義息よ。
ここから東に行ったら、ツヴェリアチェッペリンサンテルクラシマレーンを越えるころにまた道を聞いたらいいよ。
結構迷いやすいから。」
いや、義息ちゃうし。
えっと…ツヴェ…?
「もー!
ツヴェリアチェッペリンサンテルクラシマレーン!」
よく覚えられるね、そんな長い名前。
「あったり前でしょ、私が付けたんだから。」
お前が犯人か!
ホシの年齢、性別、地位と証言が一致したわ。
はい、逮捕。
警部呼んできて。
14時31分確保。
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