第197話 聖女も聖女
その日の遅くまでモデリニさんは帰って来なかった。
嬉しいな!
あんなに喜んでくれるなんて。
ちなみにシェイはつけた瞬間、クミンガは5分くらいで根を上げたので外した。
もう!
辛いのがいいのに!
ね!
「…。」
うすって言えよ!
「アンタのとこ、おかしいわよ。
モデリニだって暇さえあれば筋トレとか剣振ったりとかしてるんだから。」
普通だって。
「普通じゃないっす。
でもだから強いんだなって、納得したっす。」
「うす。」
えぇー。
ルーベンスさんも仕事しながら付き合ってくれたし、ブランドさんも毎日のように来てだけどなぁ。
「アンタ達の師匠って剣が強くないと愛してくれないの?」
いや、そんなわけ…。
あれ?
自信がないわ。
でも努力を見せれば興奮するタイプの変態だと思うけどなぁ。
才能がどうこうより。
「おー。
帰ったぞ。
最高だな、ラルフ。
付けっぱなしにして欲しいけど、自分の意思で外せないと困るからなぁ…。」
あ、じゃあ解除用パスワードみたいなの設定しておくよ。
「最高!
それで?
ジジイの性癖の話か?
あーどうかな。
そういえば周りで自分からサボってる奴見た事なかったわ。
聖騎士団入って愕然としたもん。
隙があればサボりたい奴だらけで。」
そうなんだ。
確かに僕もやってる練習の内容を言うと引かれがちだもんなぁ。
それってシャルルさんの教え方が上手いって事なのかな。
無理はしてるけど、無理矢理ではないじゃない?
「そうかもな。
親父意外と優しい所あるし。
3日間山に剣一本で放り出された後、アイス買ってくれたもん。」
あ、僕も決闘して気絶させられた後栗まんじゅう貰った!
優しいよね。
「バックが合ってないわよ、それ。
努力のボッタクリよ。」
えー、そんなふうに思った事なかった。
アンヌはどうなんだろう。
妹弟子だから鍛えられてると思うんだけど。
「そういや、アンヌと婚約者してるんだっけな。
よく許されたな。
ジジイもブランド兄貴もアンヌのこと溺愛してんのに。
ジジイはアンヌにはどうかなぁ。
女磨きをさせて最高の伴侶をって言ってた気がするわ。
実際どうだった?
アンヌは。」
あ、すごくいい娘で人気もあるみたい。
実際僕との婚約話が出た時に果たし状が来たレベルには。
人の話にはきちんと相槌を打つような、優しい娘だよ。
あ、でもナチュラルに距離が近いかも。
必ず横に座るし。
「他には?」
え、急になんすか、姉さん。
他?
なんだろ。
食べ物は何でも美味しいっていうし、なんかあげたら嬉しいって言うし、もしかしたら喜んでくれるかもってことを喜んでくれるから、またなんかしてあげたくなるような感じ。
「ちょっとこっち来なさい、ラルフちゃん。
隣、ほら。」
なんなんだよ…。
はい。
隣。
「何でそんなに冷静なのよ。
思春期でしょ。
歳上のお姉さんにはドギマギしなさいよ。」
え?
何このシスターめんどくさい。
しないよ。
「それで?
どんな感じに接してるのさ。」
まずそんな雑に足組んでは座らないね。
膝と膝をくっつけて、僕の膝に寄せる感じで…そんな感じ。
そんでリアクションはニコニコ大袈裟にして、たまに膝に手を置いてくるんだよね。
「…おい!
いっつもそんな感じなのか?」
うん。
こんな感じ。
こんなにツンツンしてないけどね。
ニコニコしてるよ、いつも。
「シェイ、どうよ、これ。」
「アンヌちゃん何歳でしたっけ。」
15とか16とかその辺。
「可愛いんすか?」
だから可愛いって。
果たし状来るレベルに。
「姐さんみたいな年増がやると如何わしい店感が出ちまいますが、もしこれを俺がラルフ位の歳にやられてたら…参っちまうでしょうね。」
「殺すぞ。」
「なぁ、そうだよな。
しかも意識してやってるんじゃなくって、ジジイの事だから俺らの剣術みたいに、無意識下で適切に動けるように訓練してんだろ?
…ジジイよく言ってたもんなぁ、お前の武器を鍛えろって。
可愛らしいアンヌの武器を勝手に磨いたわけだ。」
…心当たりあるわ。
丁度僕が妖怪爺さんに追われている頃から、アンヌがしゃなりとなって来たんだよね。
もし、モデリニさんの推測があたってるなら、これは対人兵器だわ。
「おい、私を放っておくな。
シェイ、お前私を年増って言ったか?」
でもアンヌに浮いた噂とか立った事ないし、今は聖女って言われてるくらい潔白だよ。
「そりゃあすげーな。
そのくらいの歳だとモテモテになれば勘違いしてこんなんになりそうなのに。」
馬鹿、指差すなって。
「テメーらさっきから黙って聞いてりゃ人をおちょくりやがって。」
「うす。
でも一緒。
姐さんも聖女だから。」
え?
「え?
あ、そうだった。
…ぷくく。
ウィー姉も聖女だったわ。」
聖女ってもしかしてやさぐれてもなれるの?
こんなに酒の香りが朝からしてても?
「なれるというより、ウィー姉は生まれつき聖女さ。
でもな、小さい頃からこんなに肌がガサガサで酒焼けした声だった訳じゃねぇんだ。
な?」
「うす。」
「わざとやってんだな?
わかりました、後で清算させてやるから。
聖女の秘技使うから。」
生まれつきって、聖女って称号じゃないの?
「そうだ。
功績のある神職の、女性につけられる事が殆どだな。
アンヌはそれから外れてるが、ラルフのせいでインパクトがありすぎて、勝手に呼ばれ始めた後に認められたから、正規ルートとは違うけどな。」
あー、なんか修行とかさせられてたよ。
生まれつき功績って事はないだろうから、フィメイラさんも特殊な例?
「アンヌと一緒だ。
周りに有名人がいるから、先に称号与えて守ろうとしたんだよ。」
あ、教皇さんの娘さんとか?
「違うわよ!
私はラルフィードの子孫なの。
だから、小さい頃は教会内から殆ど出られなくて、周りにおじいちゃんばっかりだったわ。」
あ、神様の子孫。
なるほどね。
僕に似てる訳だ。
「それで目に入れても痛くない程可愛がられまくって、わがままなまま世に放たれた末路がこれだ。
まぁ、聖女として働いてる時はすごい人気なんだけどな。」
そうなんだ。
それはそれで大変そうだね。
「そうなのよ、それで婚期も逃しちゃってんの!
仕方ないのよ。
いい感じになった人も居たんだけど、おじいちゃん達が圧を掛けすぎて耐えられる人なんて教会にいる訳ないんだから。」
あらら。
孫娘ラブが沢山いたら凄そうだ…。
ウィメイラさんはどんな人がタイプなのさ。
「えー、寡黙でぇ、でも身内に甘くてぇ、子供好きでぇ。
見た目は、背が高くて文官タイプの細い人が好きかな。
あとはねぇ、白髪が好き。
ほら、おじいちゃんばっかりの中で育ったから落ち着くのよ。
ちょっと歳上がいいかな?
35歳くらいの。
それでちゃんと自分をもってて、自分は泥を被れるけど、周りに我慢を強いらない人がいいわね。」
…具体的過ぎる…。
なになに、好きな人がいるの?
「えー?
えへへ。」
教えてよー。
ねー。
「仕方ないわねー。
遠くから研修に来た時に会ったっきりなんだけどぉ、ジェマさんって方がね、すっごい好みだったの。
なんか訳アリらしいから、私とかパパとか教皇様が対応してたんだけど、渋いのよ!
魔法も上手だし、なんか神様の奇跡を受けたんですって!
知ってる?
ラルフちゃん。
北の方から来たんでしょ?」
…しりますん。
「どっちよ。」
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