第195話 兄弟子


「山を越えて来ただぁ?

じゃあ、あの悪名高い龍教会も通って来たんだな。

絡まれなかったか?

アイツら強いくせに通る奴通る奴喧嘩売って回るんだから、俺らにもなんとかしてくれって来てたよ。」


え?

そうなの?


あそこの長のパーシェローは話が出来る人だから話して見たら良いよ。

多分解決するし、もし鍛えたい兵士とかいるなら協力してくれると思うよ。

兄貴肌だし、トレーニング大好きマンだから。


「あ?

あそこの長ってパーシェローって名前だっけ。

ウィー姉さん、違くなかった?」


「えー?

違ったと思うわよ。

何年も前の情報だけど、違う人。


そう言えば最近は龍教会の苦情減ってるわね。」


あー、多分前の龍教会の山賊じみた上をぶっ飛ばして今はパーシェローが上に立ったんだな。

なら心配ないよ。

無差別な奴では間違いなくないから。

もし、最近龍教会の被害を訴えている奴がいるなら、そっちを疑った方がいいくらい。


「そんなにか。

良い奴なんだなパーシェロー。


な。」


うす。

古い組織らしいけど、そうか。

パーシェローは最近上に立ったのね。


そう言えば4人とも偉いのにこんな所にずっと居るだけなの?

なんもしてないの?


「してるわよ。

私以外。

3人は教皇直属の情報統制官だから、各地の報告はここにまず集まるの。

ほら、教会内部に集めたら面倒なこと起きるでしょう?


だから世界中に散らばってるけど、その人たちが村人。

そんで何ヶ月かに一回交代で帰って来て、この人たちに渡すのよ。


あれ?

そう言えば貴方にも付いていたわよね、何人か。

アンちゃんとか、リンキーちゃんだとか。


…撒いた?」


アンは完全に撒いたけど、リンキーは事故で離れ離れになったよ。

動いてなかったらまだ龍教会に居るんじゃないかな。

もしかしたら今頃スキンヘッドになってるかも。


「あ?あーあそこ全員坊主だもんな。


リンキーもあんな見た目になっちゃったら街に溶け込めねぇだろ。

な?」


「うす。」


あの2人はここの所属なのね。

リンキーとはやってないけど、アンは結構強いと思ったよ。


「…アン姉さんが結構強いっすか…。

そっすか…。

もしかしてアン姉さん、アンタにも殴りかかったんすか?


警護対象なのに。」


え?

うん。

立ち合いしましょうって言われたからやったよ。

肘からの膝をフェイントにした蹴りを教えてもらった。


「なにやってんすか、あの人。

あ、指導?」


いや、最初は立ち合いで、そのあと指導。


「あ?

まじかよ。

シャシャシャ!


んで?

勝ったんだろ?」


まぁ、流石に負けないかな。

なんか型通りだったし、アドリブに弱かったから10回やっても負けないと思うよ。


「やるなぁ!

なぁ?」


「うす。」


あ、そうか。

僕の警護に来るってことは、まぁまぁの実力者なのか。


「なんだお前、自分の実力を見失ってんのか。

急に強くなったクチだな?

あぶねーぞ、そういうのは。


見てやろうか?

師匠はおんなじだろ?」


それは願ってもないことだ。

腰から木剣ジグネチャーモデルGS2を取り出すと軽く振ってみた。


うん。

僕用に作られた物だからしっくり来るね。

こっちなら相手を害す心配は少ない。

リオンは訓練にむいてないのだ。


「あー!

それ、新モデルっすよね!

フラーが青いやつ!

もう出てたんだなぁ…。

いいなぁ都会は。」


いや、発売はまだだよ?

サンプルだよ。

使って見てブラッシュアップしたり、色々詰める前のプロトタイプ。


「うへー!

神の子ともなればコネとかやっぱすげーんすね!

謎の剣士のモデルの新作をポンって貰えるなんて!」


…いや、あれ?

シェイさんだけ分かってない?

同一人物なんだけど。


「あ?

あー、コイツは多分分かってねぇ。

馬鹿だし、2、3戦しか見られなかったからな。


丁度いいや、シェイ、スパーの相手してやれ。

もし良いところ見せたら剣くれるかもしんねーぞ。」


それは良いけど…。


あ、なら、俺が相手した方がいいな。


「あら、かっこいいじゃない。

おっきくなっならそんな感じなのね。」


「お!

魔法なんだろ?

仕組みは知らねーがおもしれーな。

リーチ変わってすぐ対応出来るなら、戦闘にも有効だわな。

な?」


「うす。」


「え?

え?


謎の剣士だぁ!!

団長!

この人っすよ!

意味わからないほど強かったの!


あれ?

ラルフ…。

あ!

神の子があの人だったんすか?


うわぁ!

剣にサイン貰って良いっすか!


あの、あれ?


あ…剣なくなったんだった…。」


ごめんよ!

あぁ、これあげるよ!


これあげるから、なんか訓練用のやつ貸して!


「あー。

立て掛けてあるやつ、どれでも良いから待ってけ。


シェイ!

小躍りしてないでやるぞ。」


「やるっす!

良いとこ見せるっす。」


構えたシェイさんはギュウギュウに力が入っている。

新鮮だなぁ、達人ってゆったり立つから。

…ベジェリン達も割と力入っていたなぁ。


俺はどうだろう。

もっと力抜いた方がいいのかな。


トントンと小さく飛んで、力を抜いて行く。

当たる瞬間だけ力を込めればいいのだ。


おぉ!

剣の重さを感じる。

このくらいで良いのかも。


ピッと振ると、今までよりも鋭く振れた気がする。


「あー…。

悪い、シェイ。

代われ、俺と。


差がありすぎてお互い練習になんねぇ。


ごめんな、ここまでだと思ってなかったわ。

15歳かそこらの子供の中では最大限に力があると想定しての評価だったんだがなぁ…。


いいな?」


うす。

ごめんねシェイさん。

その剣はあげるから、学園都市の会社に感想を送ってね。

聖騎士だから問題無いと思うよ。


じゃあ、団長さんに胸を借りますか。


「おう。

シャシャシャ。

勝っても負けてもジジイに自慢してやろう。」


うん。

絵姿とかも送っちゃおう。

飛んでくるかもね。


「…シャシャシャ。

ジジイなら来るな。

な。」


うす。

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