第194話 一味


「隣に並ぶと似てないけど、別々に見たら似てんな、おい、そう思わねぇ?

シャシャシャ。」


「うす。」


パチン


「あ?

似てるか似てないか聞いてんだよ。

どっちだ?」


「うす。」


パチン


「あ?

なぁ、水とか出してやれよ。

子供だからジュースの方がいいか?


おい、火。

言う前につけろって言ってんだろ馬鹿が。」


パチン


…聖騎士団の治安終わってない?

会話の合間に頭挟まってんだけど。

なにあれ、チェスクロックみたいな感じ?


手番が終わったら叩くルール?


「終わってんのは団長だけっす。

自分は普通っす。

うす。」


いや、貴方も大概よ。

堀深いし。

デカいし。

中ボス感あるし。

小指ないし。


うす。


「あ、これすか。

これ、剣で落ちました。


うす。」


あ、よかった!

ケジメかと思った!


モデリニさん、椅子に足を120度くらいの角度開いて座る社会不適合者だから、失敗したら指くらい落とすのかと思った。


「あ?

部下に怪我なんてさせるかよ。

コイツ元々相当ワルでよ。

別のチームと抗争があってそん時の怪我で指がねーんだよ。


相手はぶっ飛ばしたんだろ?

まぁ、俺んとこ来る前だけどよ。

なぁ。」


「うす。」


パチン


…いや、じゃあ治安悪いって。


ウィメイラさんはこんな所にいて大丈夫なの?

怖い目にあってない?


「こわーい。」


あぁ、大丈夫な人だ。

可愛らしい感じだけど、太ももに蝶の刺青とか入ってるタイプだ。


「あ?

見抜かれてますよウィー姉さん。

俺もなぁ。

普段はシュッとしてパリッとしてっからちゃんとして見られるのになぁ。

なぁ?

クミンガ。」


「うす。

俺もちゃんとして見られるっす。

うす。」


あはは、怖そうだから何も言われないだけでしょ。

クミンガさんね。

よろしくね。


あれ?

上から降って来た人は?

クミンガさんは火球飛ばして来た人だよね。

んで、モデリニさんは奥から出て来てビビってすぐ降参した人。

ウィメイラさんは童顔で可愛らしい明らかに隠しきれない元ヤン感がある人。


「あ?

あー、アイツは手首折れてたから治療しに行ったよ。

お前やべーな。

受けた後剣で巻き取って手首折った上に剣を消したろ。


鬼かよ。

アイツのお気に入りの剣だったのによー。

わざわざ闘技大会で気鋭の謎の剣士モデルだって言って買って来たんだから。


あ。


…ビビってねぇからな?

敵じゃねぇって分かっただけだ。

同門なんだから。

な、クミンガ。」


「うす。」


「シェイちゃーん!

ラルフちゃんが読んでるわよー!」


奥からトボトボと腕を吊った人が出て来た。

そうそう、この人が上から来た人だ。


「ちわす。

強いっすね。

…はぁ。


完璧なタイミングだったんだけどなぁ…。

剣も無くなっちゃうし、手首も折れちゃったし。

…はぁ。


だから相手見てからで良いんじゃないっすかって言ったのに…。


はぁ。」


辛気臭い!

なんだこの人!


「そう言ってやんなって、なぁ?

落ち込んでんだよ。

ほら、勝手な判断で突っ込んで手首と一緒に心も折れちゃったって訳だ。

シャシャシャ。

なぁ?」


「うす。」


え?

モデリニさんが行けって言った感じだったけど。


「シェイちゃんは勝手に行ったわよ。

あにきー、俺が痛い目見せてやりますよーって。」


えぇ…。

小物すぎる。


「めっちゃ悔しくて…。

いや、でもあそこで行かなかったら団長ブチギレるじゃないっすか。」


「あ?

キレねぇって。


なあ?」


「…。」


あ、クミンガさんがうすって言わないって事は、キレるんだきっと。


なんだこの変な男3人プラス女1人の集まりは?

なんの一味だ?

女裏切りそうだな!


「私たちは聖地を守ってるの。

ここはラルフィード様の生誕した所なんですから。

神の子なら知っておきなさいな。」


そうなのか。

んー、でも普通の村にしか見えないよ。

派手な教会とかある訳じゃないし。


「まぁねぇ。

元から普通の村だったし、ラルフィード様が生まれて特別になった場所だから。


でも利用しようとした人達は昔結構居たらしいのよ。

こんな何もない村を領有しようとして戦争になったりして。

だから教会で隠して保護することにしたの。


争いの種だからね。」


そうかぁ。

そんなこともあるかぁ。


人気者だなぁユル神様。


「ま、泊まっていけよ。

本山目指してんだろ?

徒歩で。

こっからまだ3日か4日掛かるぞ。


ゆっくり何日か休んでったらいいさ。

歓迎するよ。


なぁ?」


「うす。」

「そうっすよ。」


あざっす。

あざまっす。

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